<国立歴史民俗博物館>
「茅空」を見た際にまず目が行ったのが、
両足をつなぐようにして設えられた「穴」の部分でした。
何でもその穴は、土偶を焼くときの熱で粘土が
割れないようにするための「空気穴」だそうで、
薄づくりの土製品を壊さずに焼き上げるその技術力は、
現代と比べてもかなり高度なものだと聞きます。
また、特別な儀式においては、
「茅空」の空洞部分に何らかの液体を入れ、
その穴から液体を注いでいたという話もあり、
もしそれが本当なら「茅空」の用途は、
他の土偶以上に広範囲に広がっていた可能性も大です。
恐らく、縄文後半のこの時期に入ると、
土偶に課せられた役目は、
想像以上に複合的になってきたのでしょう。
縄文前半のいわゆる「精霊」を
象ったシンプルな土偶から、
シャーマンを始めとする「半人間」を
模したような土偶へと進化する中で、
ときには「神」となりときには
「人の身代わり」となりながら、
自らの立場を変化させてきたのが
縄文の土偶たちだったかもしれません。