たびたび神社

ライターあかりの神社ブログ

陰陽道の聖地

2015-10-31 13:21:29 | 奈良・京都の神社

<上賀茂神社 かみがもじんじゃ>

 

陰陽道・陰陽師という言葉聞いて、

多くの人が思い浮かべるのは、

かの有名な安倍晴明でしょう。

数年前に、映画や小説の主人公として脚光を浴び、

陰陽師ブームを巻き起こしたのは記憶に新しいところ。

陰陽師のパワーにあやかるため、

晴明ゆかりの神社を訪れる人は後を絶たず、

中には自らを陰陽師と称し、

怪しげな術?を施す人もいます。

 

実は上賀茂神社というところは、

陰陽道と関わりの深い場所でして、

平安時代に朝廷で活躍した「陰陽師」の一族が、

こちらの上賀茂神社の神を氏神とし、

祭祀を執り行っていた賀茂氏なのです。

後に晴明の師匠となった賀茂忠行や、

古くは奈良時代の学者・吉備真備、

修験道の開祖である役小角なども、

賀茂一族の出身だといわれています。


陰陽思想の影響

2015-10-30 13:18:42 | 奈良・京都の神社

<上賀茂神社 かみがもじんじゃ>

 

上賀茂神社の二の鳥居をくぐると目に入るのが、

美しい円錐形に整えられたふたつの「立砂(たてずな)」です。

 

立砂は上賀茂神社のご神体である

神山を模して作られたもので、

神社が創建される以前は、

この立砂を依り代として祭事を行っていたそう。

鬼門や裏鬼門に砂をまき清める習慣や、

お清めなどに使う盛り塩の元にもなりました。

 

ちなみに、ふたつの立砂のてっぺんには、

各々2本と3本の松葉が差し込まれており、

2本の松葉は(陰・女性)を、

3本の松葉は(陽・男性)を あらわしているのだとか。

このような祭祀方法は、

上賀茂神社の祭祀を取り仕切った

賀茂一族独自のものと云われております。

 

上賀茂神社という神社は、

陰陽思想の影響を色濃く受け、

今なお実践中の場所なのですね。


不自然な配置

2015-10-29 13:16:17 | 奈良・京都の神社

<上賀茂神社 かみがもじんじゃ>

 

上賀茂神社を訪れてまず感じるのは、

二の鳥居から突如折れ曲がる参道と、

境内にある建物の配置の不自然さです。

本殿に向かう参道の両脇には、

まるで参拝者を拒むかのように、

様々な建造物が行く手を阻み、

参拝者は右に左にと迂回しながら、

楼門をくぐらなければなりません。

 

さらに、本殿前にたどりついても、

通常参拝客が手を合わせるのは、

神様がおられる本殿から外れた場所。

いくら背後の神山を拝む形とはいえ、

これだけ脇を固められてしまうと、

さすがに違和感を覚えるものです。

ちなみに上賀茂神社を象徴する立砂も、

神山の正面ではなく、鬼門の方角にある、

摂社片岡社のほうを向いて設置されています。


水と矢と術

2015-10-28 13:12:51 | 奈良・京都の神社

<上賀茂神社 かみがもじんじゃ>

 

上賀茂神社のご祭神である賀茂別雷大神は、

母・玉依姫命(たまよりひめのみこと)が、

境内を流れる御手洗川に流れてきた白羽の矢を手に取り、

床に置いたところ懐妊したとされる神様です。

 玉依姫命の父親は、

賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)という神様で、

賀茂氏の始祖にあたるといわれています。


この話を聞いて思い出すのは、

奈良の大神神社に伝わるいくつかの伝承です。

同じ玉依の名を持つ大物主の妻

活玉依毘売(いくたまよりびめ)はやはり一晩で懐妊し、

また、勢夜陀多良比売(せやだたらひめ)は、

同じ「矢」の仲介により神と結ばれました。

 

古い神社に残る言い伝えには、

「水」「矢」そして「蛇」が頻繁に登場しますが、

逆にいえばこのような伝承を持つ神社ほど、

深い歴史と多くの謎を秘めた場所でもあります。

上賀茂神社には、他の神社にはない「術」が、

あちこちに仕掛けられているようです。


雷の神

2015-10-27 13:07:34 | 奈良・京都の神社

<上賀茂神社 かみがもじんじゃ>

 

上賀茂神社(賀茂別雷神社)は、

下鴨神社(賀茂御祖神社)と共に、

賀茂氏(かもうじ)の氏神を祀る神社であり、

5月に行われる葵祭(賀茂祭)で知られています。

 

上賀茂神社に祀られているのは、

賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)という、

その名の通り雷(神鳴り)を司る神様。

「別雷」には若い雷という意味もあるそうです。

 

神事に使われる御幣(ごへい)の形からもわかるように、

古来より日本人は、雷を「神の意思」としてとらえてきました。

豪雨に伴う稲光や噴煙の中で光る稲妻を目にした瞬間、

人は無意識に神の力と自然への畏怖を抱くのです。


奉納

2015-10-26 13:04:15 | 奈良・京都の神社

<上賀茂神社 かみがもじんじゃ>

 

賀茂社(上賀茂神社・下鴨神社)の式年遷宮は、

21年に1度行われています。

21年に1度という中途半端な期間に関しては、

諸説あるようですが、聞いたところによれば、

20年に1度遷宮が行われれる伊勢神宮に配慮して、

21年にしたのだとか…。

 

ただ、春日大社などと同様、社殿のほとんどが

国宝や重要文化財に指定されているため、

お社自体を建て替えるのではなく、

屋根の檜皮葺(ひわだぶき)の葺き替えや、

建具・金具の補修、漆喰壁の塗り替えなど、

痛んだところの修繕が主なようです。

 

4年くらい前に上賀茂神社を訪れた折、

屋根の葺き替えに使う檜皮を奉納したのですが、

新しくなった上賀茂神社のお社のどこかに、

あのときの檜皮が使われているのかと想像すると、

とても不思議な気持ちになります。

日本にとって大切な神社が守られるということは、

国と私たちの生活が守られるということなのですね。


上賀茂神社

2015-10-25 13:00:20 | 奈良・京都の神社

<上賀茂神社 かみがもじんじゃ>

 

伊勢神宮の式年遷宮と前後するかのように、

出雲大社をはじめ、春日大社や塩釜神社など、

全国各地の神社で社殿を建て替えたり、

修繕したりする行事が行われています。

 

先日15日に、式年遷宮を終えた上賀茂神社

(正式名称:賀茂別雷神社)もそのひとつで、

今回は遷宮後の本殿を拝観するために、

夜間参拝に出かけてまいりました。

 

京都駅から市バスに揺られて約1時間。

木々が色づきはじめた加茂川沿いの土手の向こうに、

ご神体である神山が見えてきます。

あたりが暗くなってからも大勢の参拝客が、

お参りの列を作っていました。


ご神体への配慮

2015-10-24 17:32:40 | 自然災害・参拝マナー

<蔵王刈田嶺神社 ざおうかつたみねじんじゃ>

 

もともと山というのは、人が登るためのものではなく、

神様が地上に降り立つための巨大な目印です。

神様が宿るとされる山の頂には、

必ずといってよいほど神社や祠が建てられています。

近年の登山ブームの影響もあり、あちらこちらの山に、

祈願所が作られたり、仏像が安置されたりしていますが、

「癒し」や「達成感」のために山を利用すれば、

痛いしっぺ返しがあるでしょう。

 

昨年、御嶽山が噴火した際のニュースの中にも、

山頂付近に設置されていた仏像の首が、

吹き飛んでいる映像がありました。

本来は、麓から山の頂を仰ぎ見て、

静かに遥拝するのが山岳信仰の正しい形。

その事実をしっかりと肝に銘じ、

「ご神体」に登らせていただく配慮を、

忘れないようにしたいものですね。

 


蔵王山

2015-10-23 20:10:01 | 自然災害・参拝マナー

<蔵王刈田岳 ざおうかつただけ>

 

御嶽山の噴火からはじまり、

箱根、桜島、阿蘇、口永良部島など、

全国各地で火山活動が顕著になりました。

山形と宮城の境にある蔵王山にも、

一時「火口周辺警報」が出されましたが、

現在山腹の道路は通常通り通行できます。

 

山頂まで車で気軽に行ける蔵王山には、

お年寄りから子供まで、

またアウトドア服を身につけた登山者から、

近所に散歩に来るような格好の一般人まで、

様々な人たちが集まっていました。

皆が見つめるエメラルドグリーンの湖面の奥には、

いつ目覚めるかわからない山の神が眠っています。


湯殿山

2015-10-22 11:59:50 | 東日本・三陸の神社

<湯殿山山麓 ゆどのさんさんろく>

 

出羽三山神社と同じ鶴岡市内に、

湯殿山神社(ゆどのさんじんじゃ)があります。

出羽三山の奥宮と称されるこちらの神社には、

写真撮影禁止、土足厳禁などの厳しい戒めがあり、

「語るなかれ」「聞くなかれ」ともいわれる

謎?のご神体に、独特の作法でお参りします。

 

一年中強い風が吹き、麓から見上げると、

常に雲に覆われている湯殿山神社の周辺は、

全国有数の豪雪地帯で、神社も冬の期間は閉山されるそう。

残念ながら今回は、時間の都合で立ち寄れなかったのですが、

遠方から見た湯殿山の方角には、やはり雲が立ち込めていました。


変若水

2015-10-21 11:55:09 | 神道・祖霊崇拝・祭り

<月山山麓 がっさんさんろく>

 

万葉集には、月読命を詠んだ歌がいくつかありますが、

その中に、「月には月読命が待っている変若水がある。

それを取って来て、あなたに差し上げて若返らせたい」

という意味の歌があります。

 

変若水(おちみず)というのは、

お正月や立春の朝などに汲まれる 「若水」と同様の性質を持ち、

心身を清めたり、不老不死の効果をもたらしたりする聖水のこと。

このような不老不死の水に関する神話は世界各地で見られ、

いずれも月との関連が強く示唆されています。

 

また、月山の周辺ではありませんが、

「今朝汲む水は、福くむ、水くむ、宝くむ、命長くの水をくむかな」

という言葉を唱えながら、元日の朝に水を汲むご神事もあるそうです。


月読命

2015-10-20 11:48:40 | 神道・祖霊崇拝・祭り

<月山 がっさん>

 

月読(ツキヨミ・ツクヨミ)命という

一見風流な名前の中には、

ある種冷徹ともいえる意味が潜んでいます。

月読(黄泉)という漢字からもわかるように、

月読命は黄泉の世界と密接に関わる存在。

暦つまり時間や人間の寿命を司るのが、

月読命という神様の大きな役割です。

 

日本神話においてツキヨミは、

アマテラスやスサノオとともに、

重要な神として扱われているにも関わらず、

神話の中ではほとんどその姿をあらわしません。

ご祭神として祀る神社もあまりなく、

また現在月読命をご祭神とする神社の大部分も、

元は別の神様が祀られていたと考えられます。


2つの系統

2015-10-19 11:46:05 | 東日本・三陸の神社

<出羽三山神社 でわさんざんじんじゃ>

 

月読命を祭神とする神社には、

大きく分けて2つの系統があります。

ひとつは、伊勢神宮の別宮である月讀宮や月夜見宮など、

天照太御神の弟神としての性質をもつもの。

もうひとつは、本来祀っていた別の神様から、

後に神話の神である月読命に習合したもので、

出羽三山の月山神社はこちらに属します。

 

全国にある月山神社の多くは、

出羽三山の月山神社から勧請され、

もともとは神話に登場する神様ではなく、

「月」の性質を帯びた土着の神を祀っていた場所です。

蜂子皇子が月山を開いたという伝説はつまり、

この地が天皇(都)の支配下になった事実を示すのでしょう。


月山

2015-10-18 11:40:53 | 東日本・三陸の神社

<月山 がっさん>

 

月読命(つきよみのみこと)を祀る月山神社は、

月山の山頂に鎮座しています。

月読命といえば、天照太御神の弟神ですが、

一説によるとスサノオ命の別名でもあるのだとか。

私が最初にこの地を訪れたのも、

月読命という存在に興味を引かれ、

月山の見える温泉に宿泊したのがきっかけでした。

 

「月」の名を持つ月読命という神様は、

スサノオが冥界で呼ばれるときの名前だと聞きます。

熊野でスサノオの神使をしていたカラスも、

月山の地ではツキヨミの化身として、

皇子を自らの住む山へと導いたのでしょう。

ちなみに、八合目にある中之宮の御田原神社のご祭神は、

スサノオの妻・櫛名田比売 / 奇稲田姫(クシナダヒメノ)です。


羽黒鏡

2015-10-17 11:35:42 | 東日本・三陸の神社

<出羽三山神社 でわさんざんじんじゃ>

 

出羽三山神社の本殿前に、

通称鏡池と呼ばれる御手洗池があります。

大正から昭和初期にかけて、

御池の改修工事が行われた際、

その池の中から、平安時代から江戸時代までに造られた

多量の銅鏡(羽黒鏡・はぐろきょう)が発見されました。

 

古来よりこの御池は、

神霊が鎮まる神秘な場所として知られており、

羽黒神社と書いて「いけのみたま」と読ませるほど、

この池そのものへの厚い信仰があったのだとか。

当時の羽黒の修験者は、京の貴族たちを前に、

「鏡に穢れを移して羽黒の池に投げ込めば祓われる」と説き、

本人の代わりに鏡を御手洗池に沈めたという話もあります。

 

また、年間を通してほとんど水位が変わらない鏡池には、

同じ出羽三山の月山に伝わる

「若返りの水」と同じはたらきがあるそうです。

都の人たちにとって「異国」との境界でもある羽黒山が、

穢れを祓い心身の若返りを促す場として利用されたのでしょう。