たびたび神社

ライターあかりの神社ブログ

川原大祓

2015-03-31 12:22:33 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<外宮 げぐう>

 

川原大祓(かわらおおはらい・かわらおおはらえ)

が行われるのは、

遷御の儀を翌日に控えた夕刻近くです。

風宮の川原大祓の時刻には、

後鎮祭のとき降っていた雨も上がり、

午後の柔らかな日差しが、

朱塗りの辛櫃(からひつ)や五色の幣を

美しく浮かび上がらせていました。

 

遷宮のお祭りの中でも、

ひときわ華やかな川原大祓という祭典ですが、

大宮司・小宮司を始め、ご奉仕する神職はみな、

遷御の儀と同じ装束を身につけるのが習わしです。

遷御の諸具を納めた素木の辛櫃、

御装束や刀や弓などを納めた朱塗りの辛櫃、

また遷御にご奉仕する神職を丁寧に祓い清めます。


物忌

2015-03-30 14:00:00 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<外宮 げぐう>

 

通常、物忌(ものいみ)とは、

神事に先立ち一定期間の間、

飲食・言行などを慎んで心身を清めること、

不浄を避けて家に籠ること、などを意味しますが、

伊勢神宮においては、

祭典にご奉仕する童女(あるいは童子)を指す言葉です。

今回の遷宮でも、一番最初のお祭りである山口祭を始め、

御船代祭(みふなしろさい)、鎮地祭(ちんちさい)など、

重要なお祭りに物忌さんがご奉仕しました。

 

聞いたところによりますと、

物忌として選ばれるのは、

小学3年生くらいの神宮神職のお子さんで、

神職と同じように前日から斎館に泊まりこみ、

心身を潔斎した上で祭儀に臨むそう。

背の高い大人たちに囲まれ、懸命に歩くその姿は、

ほんとうに微笑ましく、 また誰よりも神々しい光を放っていました。


後鎮祭

2015-03-29 13:44:33 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<外宮 げぐう>

 

杵築祭の後に行われたのは、

後鎮祭(ごちんさい)という祭典です。

個人的にとても観たかった祭儀のひとつでして、

こちらのお祭りでは、

物忌(ものいみ)という童女がご奉仕します。

杵築祭までは何とか天候が持ったものの、

後鎮祭の直前に雨が降り出し、

修祓(しゅばつ)の儀式は屋外ではなく、

「雨儀(うぎ)」と呼ばれる場所に変更になりました。

 

遷宮諸祭の「庭造り」最後の祭儀である後鎮祭は、

新宮の竣工をお祝いし、

御殿がいつまでの堅固であるよう祈るお祭りです。

物忌の童女と神職が、

御殿の前に忌物・神饌・番の白鶏… 

などをお供えしたのち、

社殿の床下に天平瓮(あめのひらか)

と呼ばれる丸い土器を安置します。

ちなみにお供えをした番の鶏は、

元いた場所に戻されるそうです。


古歌

2015-03-28 14:11:55 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<外宮 げぐう>

 

遷宮のいくつかの祭典では、

古式ゆかしい歌が歌う場面があります。

杵築祭でも御柱を杵築く動作をする際に、

歌を歌いながら御殿内を回るそうです。

 

ちなみに内宮で歌われる古歌は、 

・ かしこしや 五十鈴の宮の杵築(こつき)してけり  

杵築してけり 国ぞ栄(さか)ゆる  

郡(こおり)ぞさかゆる 万代(よろず)までに 万代までに 

・ 天照らす大宮処(おおみやどころ)  

かくしつつ仕えまつらん かくしつつ仕えまつらん  

万代までに 万代までに

 

外宮で歌われる古歌は、 

・ 度会(わたらい)の豊受の宮の杵築きして 

宮ぞ栄ゆる 国ぞ栄ゆる  万代までに 万代までに

 

神様をお呼びする際などに使われる

「おー」という発声(警蹕)もそうですが、

日本古来の言葉を発声したり、

節に乗せて歌ったりすることで、

その場の邪気を祓う力が強まるのでしょう。


杵築祭

2015-03-27 01:12:20 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<外宮 げぐう>

 

洗清が終わりますと、

遷御の儀はいよいよ佳境に入ります。

遷御の前日、風宮では、

杵築祭(こつきさい)

後鎮祭(ごちんさい)

川原大祓(かわはらおおはらい)

が執り行われました。

* 内宮・外宮の御正宮ではこの間に、

心御柱奉建(しんのみはしらほうけん)

御装束神宝読合(おんしょうぞくしんぽうとくごう)

というお祭りが挟まれます。

 

杵築祭は、新宮の御柱の根本をつき固める行事です。

白杖(びやくじょう)というヒノキの杖を持ち、

2首の小歌を歌いながらお社の周囲を3度巡り、

その際に床下の柱根を三度づつ杵築く動作をします。

祭典の行われている新宮の扉の間からは、

コツコツという音が漏れ聞こえてきました。


真のご神事

2015-03-26 13:13:00 | 神社について

<外宮 げぐう>

 

伊勢神宮が管轄する神社を訪れますと、

どんなに小さなお社であっても、

ゴミひとつ落ちていないことに感心します。

ときどき、神域の中にゴミを見つけると、

どうしても拾わずにはいられなくなるほど、

隅々にまで掃除の気配りが生き届いており、

祭儀が行われる際には、清掃担当の職員が、

入念にご神事の場を掃き清めています。

 

今回拝見した、風宮の遷宮の祭典の中でも、

急な雨により祭儀の場が変更になったとき、

お祭りが始まる直前まで、

清掃担当者が落ち葉を掃いておられました。

 

よく「部屋の汚れは心の汚れ」といいますが、

ほこりだらけの散らかった場所で生活をしていると、

いくら開運行動を試みても、運気は上がりません。

それと同じく、どんなに御利益のあると評判の神社でも、

境内が荒れていたり、余計な物が置いてあったりすれば、

いくらお金を積んで御祈祷をしても、

逆に「厄」をもらってくるだけでしょう。

 

遷御の儀を目前にした大事な時期に、

「洗清」という儀式を行うように、

掃除という行為は真のご神事であり、

私たちの生活を安定させるための、

欠かせない秘儀なのだと思います。


洗清

2015-03-25 12:51:51 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<外宮 げぐう>

 

御船代奉納式が終わると、

「洗清(あらいきよめ)」という祭典が続きます。

これは、完成した社殿を濡らした布で拭き清め、

ほこりや汚れを取り除く儀式のことで、

宮大工の仕事が終わり、

造営使から引き渡された新宮において、

神宮側が最初に行う祭典です。

* よってご奉仕するのは神職のみ

 

洗い清めるという儀式には、

社殿が完成に至るまでに蓄積した汚れを落とす、

という現実的な側面と同時に、

「場を祓う」という霊的な意味も含まれています。

私たちの日常生活において

「掃除」が重要な鍵となるように、

常に神様の空間を清浄に保つことは、

神様を迎えるために欠かせない準備なのですね。


警蹕

2015-03-24 13:39:36 | 神社について

<風宮 かぜのみや>

 

神社の祭典の中で、

お社の扉の開閉をしたり、

御神体をお運びしたり、

神様をお呼びしたりする際に、

「おー」という母音を長く発声します。

これを警蹕(けいひつ)といい、

警蹕が発声されている間は、

神職も参列者も頭を下げて敬礼するのが、

神道の祭典における習わしです。

 

警蹕の「警」は警戒する、

「蹕」は行く人を止めるという意味を持ち、

神霊や天皇などの貴人に対し、

人々が不敬な行為をしないよう、

畏みと警戒を促す先払いとしての役目があるそう。

遷御の儀はもちろん、

他の式年遷宮のお祭りにおいても、

参進の列が通り過ぎるときなどに、

おーという警蹕をよく耳にしました。

 

なぜ警蹕に「お」という音を

用いるのかはわかりませんが、

やはり日本語の秘儀である

「母音」を長く伸ばすことで、

祓いの効果が高まり、

神様が寄り代に宿りやすくなるのでしょう。

神道の儀式を見ておりますと、

私たちが普段接している日本の文化や伝統が、

いかに神様との親和性が深いかに気づきます。


御船代奉納式

2015-03-23 18:30:23 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<外宮 げぐう>

 

御戸祭ののち、御船代(みふなしろ)

という入れ物を殿内に奉納する、

御船代奉納式(みふなしろほうのうしき)

が執り行われました。

「御船代(みふなしろ)」とは、

ご神体を納めた「御樋代(みひしろ)」 を

さらに納める木製の船形の器のことで、

木曽ヒノキで作られています。

 

ただし、こちらは御神体が鎮まる神聖な入れ物ゆえ、

直接カメラを向けることはできません。

祭典の御列に心の中で手を合わせながら、

白い覆いをかけた辛櫃(からひつ)が

通り過ぎるのをじっと目で追っていると、

遷御の儀が目前に来ていることをひしひしと感じました。

* 写真は御戸祭のときのものです


屋船大神

2015-03-22 20:02:50 | 神道・祖霊崇拝・祭り

<内宮 ないくう>

 

住宅などの建物を建築するにあたり、

土地の神様にその許可を願う「地鎮祭(じちんさい)」、

および工事の安全と建物の安泰を願う「上棟式(じょうとうしき)」

というお祭りを行いますが、

このとき奏上される祝詞の中に、

屋船大神(やふねのおおかみ)という名前の神様が登場します。

 

屋船大神は、屋船豊受気姫命(やふねとようけひめのみこと)

屋船久久能智命(やふねくくのちのみこと)とも呼ばれる木の神様。

まずは地鎮祭で氏神に建物を建てる許しを請い、

上棟祭で屋船大神に建物の守護をお祈りした後、

屋船大神のお札を屋根裏に収めるのが一般的です。

 

ちなみに、家屋の守護神とされる屋船大神は、

またの別名をトヨウケビメ(外宮の神様)ともいい、

宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)と同神という説もあり。

遷宮諸祭では、御戸祭を始めとする祭典で、

幾度となく屋船大神に祈りを捧げるように、

私たちの住んでいる家も、

屋船大神の力によって守られるのでしょう。

 

<地鎮祭資料>


御戸祭

2015-03-21 22:20:30 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<外宮 げぐう>

 

新宮に御扉を取りつけるお祭り・御戸祭(みとさい)は、

小工(こだくみ)と呼ばれる宮大工がご奉仕する

遷宮諸祭16番目の祭典です。

このお祭りを皮切りに、

神様が新宮へとお移りになられる遷御の儀に向けて、

重要な祭儀が連日続きます。

 

御戸祭ではまず、

新しいお社の御扉が支障なく開閉できるよう、

家屋の守護神である

「屋船大神(やふねのおおかみ)」にお祈りをし、

御扉に鍵穴を開ける所作をしたのち、

きちんと鍵穴が開けられているかどうかを調べる

検知という動作をします。

 

ちなみに小工というのは、

御用材の切り出しや造営に関わる宮大工のことで、

遷御の数年前になると、神宮専属の小工以外にも、

各地から宮大工が集められるそうです。

小工は素墺(すおう)と呼ばれる青い装束を身につけ、

次の祭典である

御船代奉納式(みふなしろほうのうしき)までご奉仕します。


風宮の遷宮

2015-03-20 22:11:11 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<風宮 かぜのみや>

 

伊勢神宮の式年遷宮というのは、

神様が古いお社から新しいお社にお移りになる

「遷御の儀」に至るまでに、

約8年もの準備期間を費やす壮大なお祭りです。

その間、33の祭典や行事が続き、

内宮・外宮のご正宮の遷御が済んだあとは、

別宮の遷宮祭典が順次執り行われます。

 

先週末から今週にかけて拝見したのは、

12ある別宮の中で、

一番最後に遷御の儀が執り行われた「風宮」の

・御戸祭 ・御船代奉納式 ・洗清

・杵築祭 ・後鎮祭 ・川原大祓

・御飾 ・遷御(拝観不可)

・大御饌 ・奉幣

の9つの祭典。

風宮のような小さなお宮でも、

ご正宮と同じように、

古式に従って丁重に神様を新宮にお移しします。


蘇る神様の力

2015-03-19 21:44:33 | 伊雑宮・風宮式年遷宮

<風宮 かぜのみや>

 

先週末から、外宮・風宮の

遷宮諸祭に行ってまいりました。

風宮のような小さなお社でも、

遷宮に関する祭典は、

御正宮と同じ内容で行われ

(若干規模は小さくなります)、

祭典の種類によっては大宮司や小宮司、

また物忌(ものいみ)という童子も参列します。

 

伊勢神宮では、

毎日お祭りが執り行われていますが、

これらの遷宮諸祭を拝見できるのは、

あと20年後のこと。

ゆえに、ひとつひとつの祭典が

とても貴重で意味深く、

時間が経つのも忘れるほど、

有意義なひとときでした。

 

一昨年の内宮・御正宮から始まった遷御の儀は、

風宮の遷御の儀をもって終了となります。

新しく建て替わったお社を眺めていますと、

まさしく神様の力の「蘇り」を

目の当たりにする思いです。


願いの本質

2015-03-18 13:37:44 | 神社について

<外宮 げぐう>

 

以前、一日に何か所も神社を巡る、

ハードな神社参拝をしたことがあります。

最初のうちはあれこれと欲張って、

願い事を並べていたにも関わらず、

次第に願いを考える気持ちすら起こらなくなり、

最後には鳥居の下や神殿の前で、

ひたすら頭を下げることを繰り返していました。

 

わざわざ苦痛を伴う修業などしなくても、

長年染み付いた神様や仏様に頼る気持ちを捨て、

「願いの場」での態度を改めれば、

悟りを開くことは十分可能です。

自分を取り巻くすべてのものに命が宿り、

「自然に生かされている自分」を確認することが、

願いの本質なのだと思います。


空になる場所

2015-03-17 13:34:01 | 神社について

<外宮 げぐう>

 

神社という聖域は、

「空になる場所」なのではないかと、

最近つくづく感じております。

鳥居をくぐった瞬間に、

日常のしがらみをすべて断ち切り、

「空の自分」に戻ることを求められるのが、

神社の聖域でして、

決して「願いが叶う」「パワーをもらえる」などの

単純な仕組みでできているわけではありません。

 

どんな悩みを抱えていても、

お参りをしている間だけは、

不運を嘆く気持ちや、

自分を卑下する気持ちは起こらなくなるもの。

ひたすら神社という空の空間に身をゆだね、

静かに呼吸を繰り返すだけで、

「受け入れてもらっている」 という

絶対的な母性に浸れる場所が神社なのですね。