たびたび神社

ライターあかりの神社ブログ

新嘗祭

2015-11-30 11:51:16 | 伊勢神宮

<外宮 げぐう>

 

11月23日は新嘗祭の日でした。

当日は、新嘗祭の最中の靖国神社で、

不穏なテロ事件が起きましたが、

これも裏を返せば、

「新嘗祭が日本人にとって重要である」という証拠。

伊勢神宮では、10月の神嘗祭、

2月の祈年祭などとともに、

神様への五穀豊穣を感謝する大事なお祭りです。

 

ちなみに、新嘗祭というのは、

「天皇が新穀を天神地祇に勧めて神を祀り、

身ずからも食す」行事のことで、

伊勢神宮をはじめ全国各地の神社、

そしてもちろん皇居でも、

日本国民の衣食住を守るために、

天の恵みに感謝するご神事を執り行います。


土・金の火種

2015-11-29 11:55:39 | 奈良・京都の神社

<貴船神社周辺>

 

「水」「木」そして「火」の

三要素が整った貴船の地というのは、

陰陽五行(木火土金水)の面から考えても、

非常に稀有な聖地だといえます。

奥宮の龍穴を水源とする貴船川の「水」、

天へとまっすぐ伸びる北山杉の森の「木」、

そして高龗神(たかおかのかみ)を生んだ、

火の神・迦具土神の「火」…。

 

水を栄養として木々が育ち、

その木が燃えて火が生じるという循環が、

この狭い貴船の地の中で生まれているのですね。

賀茂氏をはじめ、多くの貴族や要人がこの地を訪れ、

貴船の大神に祈りを捧げたのも、

「土から金」へとつながる火種を、

この地で得たかったからなのでしょう。


「き」の神様

2015-11-28 19:35:55 | 奈良・京都の神社

<貴船神社周辺>

 

貴船神社の「き」の漢字は、

現在は「貴」と書き表しますが、

一説によれば、玉依姫命が乗られた

「黄」船の「き」であるとも、

また船の材質を意味する

「木」船の「き」であるともいわれています。

 

貴船神社へと向かう道すがら、

ふと周囲を見渡すと、

そこには朝日を浴びて神々しく輝く

見事な北山杉の森が広がっていました。

 

玉依姫命をはじめとする古代の霊人たちが、

この貴船の地にたどりついたとき、

清らかな水神の息吹とともに、

生命力あふれる「き」の神様の

エネルギーに触れたのでしょう。

 

本宮から奥宮へと続く山道の途中にも、

歴史と風格と感じさせるご神木が、

丁寧にお祀りされていました。


船形石

2015-11-27 11:33:28 | 奈良・京都の神社

<貴船神社・奥宮 きふねじんじゃ・おくのみや>

 

貴船神社の伝説では、およそ1,600年前、

神武天皇の母である玉依姫命が、

神を祀る場所を探すべく、黄船に乗って、

浪速の津(大阪湾)から淀川、賀茂川、

そして貴船川を遡り、辿り着いたところが、

この貴船神社・奥宮の地だったそうです。

 

その際使用された船の痕跡とされているのが、

奥宮本殿の向かって左手にある

船形石(ふながたいし)という大きな石組み。

玉依姫命の乗った聖なる船が人目に触れないよう、

小石を積み上げて周囲を囲み、船体を隠しました。

 

現在は上部を雑草で覆われているため、

さらに目立ちにくい姿になっておりますが、

遠くから見ると、船のような小判型の

形状をしているのがわかりました。

この船形石だけでなく、貴船神社の周囲には、

船の形に似た様々な自然物が残っています。


龍穴

2015-11-26 11:30:24 | 奈良・京都の神社

<貴船神社・奥宮 きふねじんじゃ・おくのみや>

 

貴船神社のそばを流れる貴船川は、

いくつかの川筋を経て鴨川水系に入り、

上賀茂神社の明神川(御手洗川)や、

下鴨神社の糺の森へと注ぎこみます。

賀茂氏が大切にした清らかな水は、

貴船の地から供給されていたのですね。

 

聖地・京都を潤す水源地のひとつが、

貴船神社の本宮から、さらに奥へと

歩いたところにある貴船・奥宮です。

 

平成23年から24年にかけて行われた、

奥宮本殿の改修事業の際に、

古来より神社の謎とされていた

伝説の「龍穴(りゅうけつ)」が見つかるなど、

京都に都が移るはるか昔から、

聖地として崇められていた場所でした。

 

奥宮の龍穴からあふれ出した水の流れは、

貴船川を下り、京都の街を潤すとともに、

天皇をお守りする大きな力となったのでしょう。


磐長姫命

2015-11-25 11:27:26 | 歴史・神話・旅・風景

<貴船神社・結社 きふねじんじゃ・ゆいのやしろ>

 

貴船神社の本宮を過ぎるとほどなく、

磐長姫命 (いわながひめのみこと)を祀る

貴船神社・結社(ゆいのやしろ)が見えてまいります。

大山祇命(おおやまつみのみこと)の長女である磐長姫は、

妹の木花開耶姫(このはなさくやひめ)とともに、

瓊々杵尊(ににぎのみこと)の妻になる予定でしたが、

瓊々杵尊はこれを拒み木花開耶姫だけを召されました。

 

一説によりますと、人間に寿命があるのも、

岩のように永遠の命を意味する磐長姫命を、

天孫である瓊々杵尊が娶らなかったからなのだとか。

父である大山祇命とともに山の神の性質を持ち、

容姿端麗の木花開耶姫と合わせ鏡の関係を秘めた、

なかなかに意味深で強力な女神でもあります。


陽鬼と陰鬼

2015-11-24 11:25:03 | 歴史・神話・旅・風景

<鞍馬山 くらまやま>

 

古来より鬼の力を抑えるためには、

同じ鬼の力が必要だといわれてきました。

貴船大神に仕えていたのは、

「童子」を名乗る鬼の首領ですが、

童子(子ども)は神に近い存在とされ、

日本に古くから伝わる民話の中でも、

鬼退治をするのはほとんどが童子です。

 

貴船川を挟んで対岸にある鞍馬山は、

悪しき人間や魑魅魍魎を寄せ集める

異種の鬼・魔王尊が鎮まるといわれる場所。

貴船の鬼(童子)を「陽の鬼」とするなら、

鞍馬の魔王尊はさしずめ「陰の鬼」です。

 

天皇とのせめぎ合いが始まる以前から、

この地では貴船の陽鬼(童子)と、

鞍馬の陰鬼(魔王尊)との

せめぎ合いが続いているのでしょう。


異境の入り口

2015-11-23 11:21:53 | 奈良・京都の神社

<貴船神社 きふねじんじゃ>

 

もともと貴船神社にご奉仕していたのは、

「舌(ぜつ)」と呼ばれる土着の一族でした。

しかし、平安時代に上賀茂神社の摂社となってからは、

賀茂一族が貴船神社の神官の任命権を握り、

舌一族はその下で雑役をさせられていたのだとか。

江戸時代に「舌」の一族が上賀茂神社と論争し、

その後貴船神社の独立を果たした経緯は、

言いかえるなら「天皇系一族」と「鬼系一族」

とのせめぎ合いでもあったのですね。

 

今でこそ貴船という土地は、

雅な空気が漂う都の避暑地的な場所ですが、

本来は奈良の吉野などと同じように、

「鬼」の支配する異境の入口でした。

神武天皇一行がヤマトに向かう途中、

熊野から吉野にかけての鬼の聖域を、

次々と支配下に置いたように、

同じ渡来の血を引く賀茂氏も自らの勢力を、

京都の「鬼」の拠点へと広げていったのでしょう。

 

* 参考文献 貴船神社ホームページ *


貴船と五鬼

2015-11-22 11:21:30 | 奈良・京都の神社

<貴船神社 きふねじんじゃ>

 

貴船大神とともに、

貴船の地に降り立った仏国童子(牛鬼)は、

神界の秘め事を他言した罪により、

貴船神社を追放され吉野の山へと逃げました。

吉野の地では、「五鬼」という役行者所縁の鬼

を従えて力を蓄えていたものの、

ほどなくして、貴船恋しさのあまり、

吉野から逃げ帰ってきたのだとか。

 

そののち、大神の許しを得た

仏国童子の後を継いだのは、

吉野の丹生大明神(貴船大神と同神)に

ご奉仕していた仏国童子の子・僧国童子。

僧国童子は、吉野の五鬼を従えて貴船に戻り、

二代目の童子として貴船の大神に仕えました。

 

ちなみに、童子の子孫が人間の容姿になり、

「舌(ぜつ)」を名乗ったのは5代目からだそう。

貴船の地に最初に住んだ「舌家」の人間は、

吉野の鬼とも深く関わっているのですね。

 

【五鬼とは】

役行者の弟子となった鬼の夫婦、

前鬼(赤鬼)・後鬼(青鬼)の五人の子どもを指し、

今でも吉野には五鬼の名を持つ家系が存在する。


一本の道筋

2015-11-21 11:15:56 | 奈良・京都の神社

<貴船神社 きふねじんじゃ>

 

貴船神社の本宮に祀られている神様は、

高龗神(たかおかのかみ)という水の神様です。

全国各地に点在する貴船系神社の総本宮が、

こちらの京都の貴船神社でして、

「おかみ」(龗神社、高龗神社、闇龗神社など) を

名前に持つ神社とも深い関わりを持ちます。

 

日本神話において高龗神は、イザナギが

火の神・迦具土神(かぐつちのかみ) を

斬り殺した際に生まれとたされ、

奥宮のご祭神である闇龗神

(くらおかみのかみ)とも同神。

主に川や水源のそばに祀られています。

 

他に高龗神をお祀りする場所として知られるのは、

吉野の丹生川上神社(にうかわかみじんじゃ)ですが、

その縁か、仏国童子の後を継いだ僧国童子も、

当初は吉野の丹生大明神に仕えていたそう。

貴船神社~上下賀茂神社へ続く道筋の大元には、

吉野の神様が一枚噛んでいたわけですね。


舌家

2015-11-20 11:13:56 | 奈良・京都の神社

<貴船神社 きふねじんじゃ>

 

貴船神社の筆頭社家である「舌家(ぜつけ)」は、

貴船大神の従者である童子(牛鬼)を始祖に持ち、

今もその末裔とされる方々がいらっしゃるそうです。

 

実は、平安時代の始めから明治時代まで、

貴船神社は上賀茂神社の摂社だった時期があり、

江戸時代に活躍した舌左司馬(ぜつさじま)の「舌力」より、

上賀茂神社からの独立を果たしたのだとか。

 

その名残かどうかはわかりませんが、

同じ賀茂の氏神である、下鴨神社の摂社・河合神社には、

貴船神社のご祭神・高龗神(たかおかのかみ)が祀られています。

舌家と高龗神、そして貴船川~鴨川を通じて、

貴船神社と上下賀茂神社が一つの線に結ばれるのですね。


仏国童子

2015-11-19 11:02:26 | 奈良・京都の神社

<貴船神社 きふねじんじゃ>

 

-------------------------------------

丑の年、丑の月、丑の日、丑の刻に、

貴船大神が天下万民救済のために、

仏国童子(牛鬼)を従者として

貴船山中腹の鏡岩に降臨した。

-------------------------------------

 

こちらの文章は、貴船神社の家伝書

「貴布祢雙紙」(きふねぞうし)の中に、

収められている一文です。

これによりますと、貴船神社の大神は、

「丑」が重なる日時に、「牛」とともに

この地に鎮まったとされています。

 

貴船神社には、牛鬼をお祀りする

「牛一社(ぎゅういちしゃ)」という

丑の刻参りで有名な末社があり、

またお隣の鞍馬山には、

有名な牛若丸の伝承が残るなど、

この地域のあちこちに、

「牛」や「丑」との関連が見られます。

 

ちなみに、貴船大神の従者である

仏国童子(牛鬼)は、 神の戒めも顧みず、

神界の秘事を広めてしまったため、

災いの元である舌を八つ裂きにされてしまったそう。

その後改心して人間となり、

貴船神社の社家の始祖になったという話です。


丑の刻参り

2015-11-18 10:59:51 | 奈良・京都の神社

 

<貴船神社 きふねじんじゃ>

 

貴船神社と聞いて、世間の人がまず思い浮かべるのは、

丑の刻参り(うしのこくまいり)ではないかと思います。

 

丑の刻参りと申しますのは、 丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)、

恨んでいる相手に見立てた藁人形を、

五寸釘でご神木に打ち込み呪いをかけるという、

日本に古来から伝わる呪術の一種。~ByWikipedia

 

体には白い着物、頭にはロウソクを立てた鉄輪、

そして手には藁人形と五寸釘という出で立ちの女性が、

髪を振り乱しながら一心不乱に釘を打ち込む図で有名です。

 

なぜ清らかな川をご神体とする貴船神社が、

このようなおどろおどろしい伝承で、

知られるようになったのかと申しますと、

貴船神社に残る伝承の中に、

「丑の年の丑の月の丑の日の丑の刻に、

神社に参詣すると心願成就する」

という内容があるからなのだとか。

 

本来は呪いとはまったく無関係の話だったにも関わらず、

陰陽道(おんみょうどう)の呪詛の手法などと混ざり合い、

現在まで続く丑の刻参りのイメージを定着させました。


京都の魔界

2015-11-17 10:53:18 | 奈良・京都の神社

<鞍馬寺西門 くらまでらにしもん>

 

初めて京都の貴船神社を訪れたのは、

かれこれ20年以上前のことでした。

とても暑い夏の日だったのですが、

当時の思い出として残っているのは、

貴船神社から山伝いに鞍馬寺の奥の院へ、

修業中の天狗のように全速力で走り抜けた記憶のみ。

貴船の川床の下を流れる涼やかな清流の音と、

地上に張り出した鞍馬山の木の根の荒々しさとのギャップが、

京都の夏のひとつの情景として脳裏に焼き付いています。

 

「京都の魔界」として有名な鞍馬山周辺は、

暗魔(くらま)などとも称される異界中の異界でして、

一説によると、京都中の魑魅魍魎が、

この地に封じ込められているという話も…。

オカルトマニアの間では、牛若丸の伝承より、

魔王尊やサナト・クマーラ(ヒンズー教の神)が、

祀られる地として知られております。

今回鞍馬に関しては、 諸々の意味で

危険なため立ち寄りませんでしたが、

安易な気持ちで訪れる場所でないことは確かです。


気生根(きふね)

2015-11-16 10:51:25 | 奈良・京都の神社

<貴船神社 きふねじんじゃ>

 

メディアや観光ガイドのほとんどは、

貴船神社の本宮(よくて奥宮)での、

縁結びや水占いのことしか伝えません。

ただ、貴船神社の貴船神社たるゆえんは、

その名の通り「川」と「水」に関係します。

 

貴船の表記を、気の生じる根源の地

という意味の「気生根」と書いたり、

貴船の呼び名を「きぶね」と濁らず、

「きふね」と濁点をとったりするのも、

貴船川の水が持つ神聖な力を、

無意識に示しているからなのでしょう。