<是川縄文館>
八戸市の是川縄文館の展示室に入ると、
まず出迎えてくれたのが、「朱」と「黒」の
コントラストが際立つ「漆製品」のコーナーでした。
その場に一歩足を踏み入れたとたん、
一瞬にして「輪島塗り」の世界へと
トリップしてしまったほど、
時代を経た今もなおその神々しい色彩は、
時空を超えていぶし銀の輝きを放っています。
一説に、「強度」や「耐久性」を
高めるために使われたとされる漆ですが、
特にベンガラや水銀朱を混ぜて作る赤漆には、
強力な「魔除け」や「覚醒作用」の
効果があることが古代より知られており、
古墳の石室や神社の社殿など、
「神聖な場所」には必ずといっていいほど
赤漆の痕跡が見られます。
縄文時代の遺物にも、赤漆が塗られたものが
多数散見されることから、すでにこの頃から
「漆の効果」は周知の事実だったのでしょう。
実際に、土偶の表面の土からは、赤漆や黒漆の
成分が抽出されることが間々あるそうですし、
もしかすると、縄文人たちが目にしていた土偶は、
私たちが知る土色の偶像ではなく、
艶やかな「朱」や「黒」の光沢を纏う
特別な「逸品」だったのかもしれませんね。