○目標に向けて
私が受験することに決めた筑波大学・新潟大学について、二次試験の科目はただ「実技」とあるばかりで、その内容は高校の書道の先生に聞いてもさっぱりわからなかった。そこで、筑波大学については高校の先輩から、新潟大学については通信添削の会社で、その大学の現役大学生に手紙を送れるサービスを使って入試情報を集めた。
その結果、二大学の実技は以下のような内容だった。 筑波大学:半紙漢字創作(楷書と行書各一体)、仮名色紙創作(和歌一首)、漢字半紙臨書(楷書か行書のいずれか一つが出題される。任意の連続する六字を選んで臨書する)、仮名臨書(古筆が数行分示され、料紙を切って原寸大で臨書する)、漢字半切創作(七言二句を書体書風自由で創作)の6点を6時間で制作する。 新潟大学:半紙漢字創作(漢字四字を楷書または行書で書く。どちらの書体を指定されるかは年によって異なる)、仮名半紙創作(和歌一首)、漢字半紙臨書(創作が楷書を指定された時は行書の、行書の時は楷書の作品が出題される。指定された四字を臨書する)、半紙仮名臨書(古筆が和歌一首分示され、半紙に臨書する)、半切創作(七言二句、四字句、和歌一首のいずれか一つを選んで創作・私は七言二句を選んだ)の5点を3時間制作する。
資料は秋頃までに入手していたが、秋は共通一次に集中していたので、二次対策は封印していた。共通一次終了後、友達は教室で二次試験・私立大試験対策をする中、私は書道室でひたすら制作を続けた。自宅学習期間中に入っても毎日学校に通って制作した。
二次対策については、まずは過去問を制作し、それが一通り終わると、先生にお願いして筑波大学と同じ形式の問題を朝選んでいただき、昼までに仕上げ、午後先生に見ていただくというやり方を採った。先生はいつも褒めてくれ、たまに細かい指導をしてくれるだけだったので、このまま入試に突入しても大丈夫だろうかと、ちょっと不安に思ったくらいだった。
二次試験は、楷書と半切の創作は「龍門造像記」の力強い書風で、行書は「集字聖教序」の整った書風で書くことに決めた。仮名の創作は書道の教科書に出ている手本(後の恩師・村上翠亭先生の手になる)の書風と構成をもとにすることに決めた。
臨書は様々なものが出題されているので、1年~3年の書道の教科書に出ている楷書と行書の作品は一通り全部臨書し、草書についても出題はされないが念のため「書譜」と「十七帖」だけは勉強しておいた。仮名についても同様だったが、特に「高野切」は3種類とも繰り返し臨書した。
今思うと我ながらあの時はよく書いたなぁ、と思う。時間に束縛されることもなく、書いていて飽きると美術系の大学を受ける友達のいる美術室へ行っておしゃべりしていた。それ以外の時間は、ひたすら予想問題を書き、教科書の作品を臨書することに集中していた。
そして、この時の勉強の経験が、大学の書の学習の根底を成すことに、この時はまだ気付いていなかった。
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