羅臼平を山頂に向かって西に進んでいく。斜度がきつくなりかけた頃、崖の岩の間から、水が幾筋もしたたり落ちるところがある。ここが岩清水である。この水は煮沸せずに飲めるので、皆で代わる代わる飲んだ。これが大変冷たくて美味しかった。北海道ではエキノコックスの関係で、やたらと生水が飲めない。だから、こうした稀にある清水でのどを潤すことができるのは、実にありがたいものである。そこから先は、大きな岩がごろごろする斜面を、岩を飛び越えながら、そして岩をよじ登っていく。そして岩だらけの山頂に着く。
山頂からの眺めは素晴らしかった。山の西側は雲一つ無い青空である。しかし、山の東側には、雲が浮かんでいる。硫黄山は雲の間からかろうじて山頂を覗かせているばかりである。国後島も同様である。しかし、山頂は風もなく、実に気持ちよかった。
一休みの後、恒例の写真撮影タイムとなり、30人が代わる代わるカメラを交換して写真を撮り合った。1時間ほど山頂に滞在して下山した。帰りはひたすら下りなので、軽快に下っていった。山頂ではちょっと涼しすぎるくらいだった気温が、高度が下がっていくにつれて上がっていくのがよくわかった。
YHに戻ると、大住所交換会となった。後日、山頂で撮した同じ写真が何枚も送られてきたのは嬉しい悲鳴だった。そして、その中の意気投合した何人かは、翌日も一緒に行動した。カムイワッカの滝(I本さんだけが水着無しで入浴したのが忘れられない)の滝壺の湯に浸かったり、、知床大橋の奥の無名滝を眺めたり、自然センターの裏の海岸に出て乙女の涙を見たりしたのを覚えている。
今手元にある写真を見ると、レナちゃんとHさんに加え、現在でも交流のある人が3人写っている。H比野さんとI本さんである。翌日も行動を共にしたことによるのであるが、この時はまさかずっと交流が続くとは思いもしなかった。そしてもう一人のT中さんはこの時少し話をしたのだが、ずっと後になってゆわんと村で再会したのだった。私はその時はあまりよく覚えていなかったのだが、T中さんの方が覚えてくれていた。
念願の山に登れたことに加え、親しい人と登ることができ、しかも、人との出逢いをもたらしてくれたこの山行は、数ある山行の中でも特に印象深いものである。