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礼文島断章22・94年の礼文の話⑦

2005-05-14 23:11:13 | 旅行記
翌日は、24時間コースを歩いたSさんと、4時間コースで一緒だったTさんが2便で、4時間コースで一緒だったWさんとYさんが午後の便で島抜けすることになった。また、この日は夜の七夕パーティーの準備ということで、夕方から船泊の町に繰り出そう、ということで、日中は見送り&香深方面ツアーということになった。

出発前、恒例の写真撮影をした。Sさんのカメラで写す時、Sさんが「せ~のっ、T!」と声をかけた。ブラックホールのメンバーはどういうことかわかっているので、手でTの形を作った。Tとはつまりこの日島抜けをする教師のTさんである。Tさんは関西の人で、気さくに話しかけてくれるのだが、残念ながらちょっとキョーレツ過ぎるので、皆から敬遠されていた。Tさんが選んだコースへは、同行者が集まらなかった。そんないきさつもあり、皆そんなポーズを取ったのである。後日Sさんから送られてきた写真を見ると、総勢22人のうち、10人がTポーズをしている。Tさんは皆とは違ったポーズをしている。Sさんは大きな付箋を吹き出しの形に切り抜き、色鉛筆でTと書き込み、写真に貼り付けて送ってくれた。

フェリーに乗り込んだSさんやTさんを、名残を惜しみながら見送った。Sさんはきっと涙を流すのではないかと思われたが、そんなことはなく、皆笑顔での見送りとなった。夜の準備で来られない彦さんに代わり、Pさんがギターを弾き「忘れないで」を歌った。今日は星観荘の見送りの人数も多く、桃岩荘の見送りにも負けていない。こんなに多くの人に見送られ、S
さん達も嬉しかっただろう。

午後の便で利尻に渡るWさんとYさんを見送るにはまだ時間がある。その間私達は桃岩方面へ行くことにした。行っている間にTさんの乗る便が出るのだが、誰もそれを気には懸けていない。桃岩展望台に登る山道を、皆で楽しく語らいながら登っていく。ややガスがかかっているが、夏らしい爽やかな眺めである。レブンソウなどの花も咲いている。展望台でのんびりと時間を過ごし、昼時になったので、香深の町に下りた。利尻行きの便に乗る人を見送った後、ちゃんちゃん焼きで有名なちどりに向かった。

ちどりのちゃんちゃん焼きは、炭火を使用している。ホッケの開きに味噌をのせ、焼けたところでほぐしながら食べるのであるが、これが実に美味い!私は礼文では昼間に酒を飲むことはなかったのだが、この時ばかりは飲まずにはいられなかった。炭火を使い、満員の店、しかも礼文でも暑い夏。汗をかきながらちゃんちゃん焼きをつまみながら、しかも、気心の知れた楽しい面々と飲むビールはサイコーであった。

この後Pさんの運転する車で星観荘に戻った。この後の七夕パーティーのことはすでに書いているのでここでは書かない。

翌日は私の島抜けである。本当はもっとずっといたかったのであるが、仕事の都合でどうしても戻らなければならなかったのである。しかもこの日も素晴らしい天気で、皆は礼文岳に登るという。今日あたり、礼文岳の山頂からは、利尻山の眺めが素晴らしいことだろう。しかも、あの楽しい面々と一緒ならば。まさに、断腸の思いであった。フェリーターミナルでは、彦さんとKさん、みゆきさんが見送ってくれた。でも、こんなに後ろ髪引かれる思いで島を出たことはなかった。

この一週間後、私は再び北海道に上陸した。Rちゃんとは岩尾別YHで再会して、一緒に羅臼岳に登った。Qちゃんもまだ道内に滞在しており、Rちゃんと一緒に電話で話をしたりした。教師のTさんとは、偶然美瑛で会った。Qちゃん、Rちゃん、Pさんとは、今でも年賀状だけではあるが、連絡しあっている。人との出会い、という面では、最も思い出深い旅だったと思う。

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