桑の海 光る雲

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焼岳

2013-10-02 21:59:30 | 旅行記

9/30(月)

私に山の素晴らしさを教えてくれた叔父の書棚にある、北アルプスの写真集に掲載されていた、焼岳噴火の写真が、私が焼岳の存在を知った初めての機会でした。アルプスにも火山があるんだと、新鮮な驚きで見たのを覚えています。

3年前の夏、槍穂縦走をした際、穂高岳の山頂から見下ろしたのがはじめで焼岳を目にした最初の機会でした(上高地にはそれ以前に2回訪れていますが、いずれも雲に隠れて見えなかったのです)。9/28に北アルプスに登った友人がUPしてくれた写真が素晴らしく、29日も好天が続くとのことで、1日で容易に登って帰ってこられる焼岳に登ろうと決めました。

2時に起き、いろいろあって2:45に出発。一路上高地の手前にある中ノ湯温泉の登山口(焼岳山頂まで最短コース)を目指します。登山口近くの道路の路肩の広くなったところに車を置くのですが、ここが休みの日はすぐにいっぱいになってしまうとのこと、遅くとも6時には着いた方がいいとのことで、この時間の出発となりました。眠気と戦いながら運転すること約3時間、登山口周辺の路肩は既に満車、登山口から200mほど上った路肩に車を置き、30分ほど仮眠をして出発しました。

最初は樹林帯の緩やかな道が続き、次第に傾斜がきつくなっていきましたが、それほど辛い登りではありません。団体で登っている人もおらず、登る前は団体をいくつも追い越すことになるのかと思うとうんざりしましたが、幸い出会うことはありませんでした(恐らく団体はバスの便が良い上高地から登ってくるのでしょう)。小さなピークを一つ越えたあたりで樹林帯を抜け、目の前の木々の間に焼岳の山頂が見えはじめました。ナナカマドが赤く紅葉し始めています。空は青く、双耳峰の間にある噴気口からは真っ白に噴気が立ち上っているのが見えます。

針葉樹林帯が落葉樹林帯になり、木の高さが低くなり、間もなく灌木帯(低木帯)になると、いよいよ山頂に向けての最後の登りになります。登山道は、北峰と南峰の間から下る谷筋に付けられており、真正面に見える噴気口からは真っ白な噴気が盛んに上がっています。登山道の両脇にあるナナカマドは紅葉が進んで、空の青とのコントラストがきれいです。後ろを振り返ると、左後方には乗鞍岳が聳えています。右手には霞沢岳が聳えています。真後ろを振り返ると、はるか遠くには先月登った中央アルプス、さらに遠くには、甲斐駒ヶ岳・北岳・間ノ岳が並び、甲斐駒ヶ岳の向こうには富士山もちょっぴり頭をのぞかせています。

それにしても素晴らしい天気、そして青空です。焼岳は火山で、大正時代には大噴火も起こしているので、山頂付近には木が生えていません。ナナカマドがなくなると、あとは岩だらけの道になりました。岩の周囲にはイタドリが生えており、既に霜で茶色く枯れていました。

北峰と南峰の間の鞍部までがけっこうかかりました。鞍部に着くと火口湖である正賀池が緑色に水をたたえているのが見えました。池の南側には登頂できない南峰、正面遠くには笠ヶ岳が聳えています。噴気口は鞍部の少し上にあります。ごーごーと音を立てて噴気が立ち上っています。今まで大雪山の旭岳や、那須岳の茶臼岳などで噴気口を見ましたが、ここまでの迫力ではありませんでした(十勝岳は別。あそこは危険なので近寄れません。)。噴気の硫黄分に反応したのか、途端にくしゃみと鼻水が出始めたのには困りました。

噴気口の下を通り、ぐるっと回り込むと、目の前に穂高連峰がばーんと聳えているのが突然目に飛び込んできました。左奥には槍ヶ岳も見え、右手下方には大正池が見えます。雲一つ無い快晴の空の元に聳える山々。それはそれは素晴らしい眺めでした。

北峰への登山道への途中に上高地からのルートが合流し、あちこちから噴気が上がっている岩場を少し登ると、北峰の山頂に着きました。時間にして2時間半。途中カメラのトラブルがあったりして、ちょっと時間がかかってしまいました。

山頂は意外と広く、既に20人ほどの人が座っていました。山頂からの眺めは素晴らしいの一言に尽きます。右手に霞沢岳、その奥に平坦な蝶ヶ岳、正面に奥穂高岳、そのすぐ右に吊尾根を挟んで前穂高岳、左にはジャンダルムと西穂高岳の独標、奥に並んで槍ヶ岳、さらにその奥に三俣蓮華岳、鷲羽岳、黒岳と並んでいます。左手には笠ヶ岳、左後方には遠く御嶽山、さらに後方には乗鞍岳が見えます。焼岳の標高は2,455mと、北アルプスの中ではさほど高くはありません。しかし、火山ということで、他の山から離れたところにぽつんと聳えているので、標高はさほど高くなくても、眺望はこのように素晴らしいのでしょう。槍ヶ岳~奥穂高岳、前穂高岳、木曽駒ヶ岳~空木岳、北岳~間ノ岳はいずれも登頂したことがあり、例によってあの山頂に一度は立ったことがあるのだと思うと、感慨深いものがありました。

山頂は風もなく、見事な景色を眺めながら食べる昼飯はいつもより美味しく感じました。ロッククライミング用とおぼしき赤いお揃いのヘルメットをかぶり、「SWAT」と書かれたベストを着た老夫妻、目の前に聳える山が何という山か知らず、地図に載っていた大正池を「おおまさいけ」と読んでいた、赤髪と金髪の若者2人組、山頂標のすぐ後ろの岩に腰掛け、記念撮影の邪魔になっていることもものともせずに、金麦の大缶を悠然と飲み干した中年の女性(単独行)、ビニール袋からざく切りキャベツと味付けホルモンを取り出して、大きな鍋に空けてもつ鍋を作り始めた男性2人組など、ユニークな人が山頂にたくさんいたのが印象的でした。
山頂で1時間以上過ごして下山しました。

下りは同じルートを戻ります。登りの時は日陰になっていた霞沢岳にも日が当たるようになりました。行きは後方に聳えていた乗鞍岳ですが、帰りは目の前に聳えます。もう少し早い時間に登っていれば、午後に乗鞍岳にも登頂できたのでしょうが、次の機会に取っておくことにしました。下りも登りとほとんど同じくらいの時間がかかってしまいました。

帰りに温泉に入るわけですが、帰りは中ノ湯までのジグザグの山道を運転するのが嫌なので、そのまま山を登って安房峠を越え、平湯温泉に行きました。バスセンターと一緒になっている日帰り温泉に入りましたが、露天風呂からは正面に笠ヶ岳が聳え、あの山にもいずれは登らなければならないな、という思いを強くしました。帰りは安房峠は越えず、安房トンネルをくぐって(ETCが使えたのは驚きでした)帰りました。

次に登るべき山がいくつも見えてしまいました。来年は黒岳、鷲羽岳、笠ヶ岳あたりを登ることになるでしょうか?

コメント
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