桑の海 光る雲

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初めての沖縄の旅⑥

2006-01-19 21:22:46 | 旅行記

1/9②

午後は斎場御嶽(せーふぁーうたき)と識名園に行くことにした。というか、ガイドブックを見て私が行きたいと思ったところを挙げたら、それがそのまま通ってしまったのである。

レンタカーにはカーナビが付いているが、これが古いもので、最短距離を示してくれるのはいいが、狭い道やカーブの多い道を示してくれて困った。結局目的地まで、かなり余計に時間がかかって到着した。

斎場御嶽は沖縄に数ある御嶽(うたき)の中で最も聖なる場所であった。確か昔大河ドラマ「琉球の風」でここが取り上げられ、岩の間から見上げる三角形の空や、御嶽の一番奥の岩場から遠く久高島(くだかじま)を望む景色が放映されたのを覚えている。

ここは世界遺産に指定されており、駐車場や遊歩道も整備されていた。神聖な岩場を三つほど周り、横道にそれると、目指す岩場であった。道は奥まで続き、そこに大きな岩が寄りかかるように位置していた。その奥に、久高島を眺められる場所があった。そこから振り返り見上げると、あの時テレビで見たのと同じ三角形の空があった。空は曇っているが、それでも、その空の明るさと、岩陰の暗さのコントラストが印象的である。 そして、辺りには何とも言えない、Kさんの言葉を借りれば「凛とした」空気が漂っている。

目を海の方に向けると、神のいます聖なる島、久高島を眺め下ろすことができる。水色の珊瑚の海に浮かぶ緑色の島。今は失われてしまった、女性達によって行われる祭事・イザイホーで知られる島。人家はあるのだろうがほとんど識別できず、島一面が緑に覆われているように見える。

かつて人々は、ここから久高島を眺め下ろすことで、彼方の聖なる世界、ニライカナイにいざなわれたのだろう。そんなことを考えていたら、日々の暮らしの中で汚れきった心が、何だか浄化された、ピュア、とでもいったような気持ちになってきたような気がした。それを同行の人達に話すと、皆同じような感覚にとらわれていたという。やはり、ここは本当に聖なる場所であるように思えてきたのだった。

そんな不思議な心持ちで、最後の訪問地、識名園へと車を走らせた。沖縄はやはり島である。南北には長いが、東西は狭い。島の東の端にある斎場御嶽から島の西側の那覇市内にある識名園まで、さほど時間はかからなかった。

識名園は、琉球王室の別邸である。もちろん当時の建物は破壊されたが、現在では復元され、庭園もきれいに整備されていた。それにしても、ここも都会の喧噪から隔絶された、実に静かな場所であった。広さこそあまりないけれど、木々を植えた場所と芝生、果樹園、池、建物が巧みに配され、ぐるっと一周すると、庭園の様々な要素をすべて見て回れるようになっている。特に、池にかかる橋(二つあるうちの一つは珊瑚でできた石灰岩で作られていた)から眺める建物の姿が美しかった。

識名園を後にし、ゆいレールの県庁前駅で車を降りた。Tさんは今夜も泊まるので、ホテルに向かった。私とIさん、Kさんはゆいレール(まさか乗れるとは思っていなかった)で那覇空港に向かい、夕方の飛行機で羽田に戻った。飛行機は遅れもなく、行きよりもずっとく羽田に着いた。最終列車で家まで戻った。

初めての沖縄行きは、団体行動ということもあってなかなか自由はきかなかったし、初めて接する人も多くて戸惑いもあったが、見たいものは一通り見られたし、食べたいものもそれなりに食べられ、そして何より、そうしたことによる喜びを分かち合える人達と一緒に旅することができたのが良かったと思う。

コメント
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