キヨちゃんは糊の効いたパリッとしたものが好きである。確かにパリッとしたワイシャツやシーツは気持のいいものだが、何でもぱりぱりは困るのである。
私はどちらかというと、テロテロのふわふわ、柔らかい布地が好きである。だから子供の頃、ピンと張りつめたコットンスカートやブラウスはとても苦手だった。特に夏の中学のセーラー服などは、風でも吹こうものなら、まるでエリマキトカゲのごとくセーラーカラーが立ち上がり、戻らなくなるのだった。
また糊が余るともったいないと思うのか、パンツまでパリンとさせるのはいかがなものだろうか。
ある日、いつものようにパリッと仕上がった父のワイシャツに、念入りに今度はスプレー糊で襟をアイロンがけしていたキヨちゃんが私を呼んだ。
「おかしい。パリッとせん。しかも何だかテラテラする。」
はあ?何のこっちゃ??と思いつつ行くと、訝しげにスプレー缶を見ている。そして私にこう言った。
「おかしいんよなあ。いつもアイロンの絵が書いてあるのに、車の絵になっとるんよ。」
彼女の差し出した缶には確かにアイロンではなく、車の絵が印刷されていた。勿論絵が勝手に変わろうはずもない。車用のペンキを使ったということは、火を見るより明らかだった。
私はどちらかというと、テロテロのふわふわ、柔らかい布地が好きである。だから子供の頃、ピンと張りつめたコットンスカートやブラウスはとても苦手だった。特に夏の中学のセーラー服などは、風でも吹こうものなら、まるでエリマキトカゲのごとくセーラーカラーが立ち上がり、戻らなくなるのだった。
また糊が余るともったいないと思うのか、パンツまでパリンとさせるのはいかがなものだろうか。
ある日、いつものようにパリッと仕上がった父のワイシャツに、念入りに今度はスプレー糊で襟をアイロンがけしていたキヨちゃんが私を呼んだ。
「おかしい。パリッとせん。しかも何だかテラテラする。」
はあ?何のこっちゃ??と思いつつ行くと、訝しげにスプレー缶を見ている。そして私にこう言った。
「おかしいんよなあ。いつもアイロンの絵が書いてあるのに、車の絵になっとるんよ。」
彼女の差し出した缶には確かにアイロンではなく、車の絵が印刷されていた。勿論絵が勝手に変わろうはずもない。車用のペンキを使ったということは、火を見るより明らかだった。