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すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第1879号 上高地 穂高の峰に神を見る

2023-09-04 06:42:34 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】岳沢と呼ぶらしい、氷河が削ったような巨大なV字状渓谷を、遠く前穂高と奥穂高が見下ろしている。振り向けば焼岳の孤峯が、ケショウヤナギに縁取られている。尾瀬と上高地は山の景勝地の双璧だろうか。いやいや山に疎い私が知らないだけで、自然が生み出す美しい景観はもっとたくさんあるに違いない。ただ上高地がその一つであることに異論は出ないだろう。河童橋の畔で、梓川と山塊の大パノラマに眼を奪われている私がその証人である。 . . . 本文を読む
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第1878号 黒四ダムの巨大さを味わう

2023-09-03 07:14:01 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】室堂平から、立山山頂直下に掘られた3.7キロのトンネルをトローリーバスで抜けると、大観峰という名の標高2316メートル地点に着く。確かに眺めは「大観」で、緑の壁の底に黒部湖が、深い翠色を湛えて横たわっている。前日、宇奈月からのトロッコ電車で途中まで遡った黒部川の、最上流ダム湖を見下ろしているのだ。黒部の渓谷は立山連峰と後立山連峰を裂いて南北に延び、私たちは後立山の赤沢岳や爺ヶ岳に対面していることになる。 . . . 本文を読む
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第1877号 室堂で雷鳥に出会う

2023-09-02 02:25:08 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】そろそろ黒部ダムに向かう時刻だなと、室堂のベンチから腰を上げたその時、頭上を鳥が飛んで行った。鳩より少し大きいほどの、ずんぐり太めの体型に見えた。腹の辺りは白いけれど、首から背にかけては黒っぽい。続いてもう一羽が、華麗とは言い難い羽搏きで追いかけ、草原を渡って行く。ひょっとして私は、雷鳥に出逢ったのではないか。雷鳥は「飛ぶべき時は翔ぶ」そうだから、あれは特別天然記念物の二羽に違いないと、興奮して妻に伝える。 . . . 本文を読む
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第1876号 立山にバスで登る

2023-09-01 02:35:59 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】私は「街」を訪ね歩くことが好きだが、だからと言って「自然」に興味がないというわけではない。海や山の美しく雄大な景観には心惹かれるし、何よりも澄んだ空気を胸いっぱい吸い込むと、この惑星が愛おしくなる。ただ「山」は登らねばならないから困るのである。登り坂が苦手なのだ。だから山への旅は少なくなるのだけれど、今回は珍しく、その代表格として立山にやって来た。標高2450メートルの室堂平で、超高峰の威容を眺めている。 . . . 本文を読む
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第1875号 トロッコ電車で黒部川、発電所とお猿さん

2023-08-30 10:30:29 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】「宇奈月」ではあるけれど、私は温泉に浸かりに来たわけではない。宇奈月温泉郷から黒部川を遡る黒部渓谷鉄道に乗って、国内有数だと言われる水力電源開発の歴史を実感したいとやって来たのだ。「80歳の壁」が見え隠れする年齢になって「何をいまさら」と思わないでもないけれど、この列島にドンと居座る北アルプスの巨大山塊に未だ脚を踏み入れたことがない、ということもいささか心残りになって、トロッコ電車に乗り込んだのである。 . . . 本文を読む
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第1874号 王権発祥の地・纒向を歩く

2023-08-06 15:52:39 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】山辺の道を南に辿る時、巨大な前方後円墳群を経て穴師山と三輪山を分かつ巻向川の細い流れを渡るころには、深閑とした森の傍を檜原神社に近づく道が延びて、晴れ晴れとした眺めに疲れを癒されるのが常である。だから私も「纒向(まきむく)」という土地の名は馴染みが深く、檜原社から箸墓へ坂を下ったこともある。ただ日本史において、これほどただならぬ土地であるとは思い至らなかった。「纒向遺跡」の発掘調査が明らかにしつつある。 . . . 本文を読む
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第1873号 橿原の展望ルームで国見する

2023-08-01 09:13:24 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】橿原市は大和盆地の南部にあって、人口12万人の奈良県第2の街だ。京都―奈良―和歌山を結ぶ近畿圏の大動脈・国道24号線が南北に通じ、JR桜井線とともに近鉄の大阪線と橿原線が直交するという、鉄道網も発達した現代交通の要の街である。「交通の要」というこの街の特色は、古代から続く立地で、現代の国道や鉄道は、7世紀ころの大和盆地に整備された「下つ道」や、日本書紀の言う「自難波至京置大道」にぴたりと重なるのである。 . . . 本文を読む
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第1872号 五條新町で江戸の風情に浸る

2023-07-30 09:57:05 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】紀伊半島は広大で、列島の「半島」では突出している。標高1500メートル前後の峰々が連なる紀伊山地が中央に居座る大山塊で、古来、山びとが行き交う杣道を除けば、熊野詣の「辺路」や吉野修験の「奥駈道」が尾根を縫う程度の道路事情の地だった。縦走する自動車道が通じたのは昭和30年代になってからで、新宮から北上して五條に至る国道168号線である。私はその道を二日を掛けてバスに乗り継ぎ、ついに吉野川を渡る。五條だ。 . . . 本文を読む
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第1871号 歌書よりも軍書に哀し賀名生の里

2023-07-29 08:43:33 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】関西人なら、梅林で有名なこの地名を難なく「あのう」と読むかもしれないけれど、アヅマエビスの私には実に難しい。奥吉野へ分け入る「喉口」とでも言うあたりの、五條市西吉野町賀名生である。私は天辻峠を南から越えてやって来たので、いささか空は広くなったけれど、依然として山に囲まれた小さな里である。しかしもし650年ほど遡ったとすれば、ほんの一時とはいえ、ここがわが国の「帝都」であったと言えなくもない土地なのである。 . . . 本文を読む
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第1870号 空青く緑に埋もれ遠つ河

2023-07-27 09:14:41 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】「遠つ河」なのだろう。「つ」は津か都か、何れにしても湊にも街にも遠い「十津川」である。紀伊山中を縦走するバスは本宮から北上を続け、ずっと並走していた熊野川がいつの間にか目もくらむ谷底となっている。紀伊・大和の国境、果無山脈を越えているのだ。かつては里の物資を求めて村人が歩き、高野山から熊野霊場を目指す参詣者が1000メートルを超す峠をいくつも越えた小辺路である。私はバスを独占して隧道を通過、大和に入る。 . . . 本文を読む
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第1869号 大斎原から熊野本宮大社へ、暑い!

2023-07-26 11:38:27 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】私は和歌山県田辺市本宮町本宮の熊野川右岸堤防上にいる。正面には熊野本宮大社が鎮座する丘が望まれ、左の森は旧社地の大斎原(おおゆのはら)である。中央に聳える大鳥居は高さが34メートルもあるそうだが、25年前に訪れた時はまだなく、翌年の建造だ。当時ここは本宮町といったが、現在は合併して田辺市に含まれる。そして遥かに望む北方の峰々は、熊野川が発する吉野の大山塊だ。十津川村から奥吉野へ続く、山また山の世界である。 . . . 本文を読む
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第1868号 御旅所で熊野の神と戯れる

2023-07-25 11:07:03 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】熊野川の河口近くに残る、新宮城(丹鶴城)址に登る。陽が落ちようとしている彼方は、熊野の神々が降臨した権現山が、果無山地へと続いて行く峰々の世界である。振り向けば家並みの向こうに熊野灘が蒼海を広げ、こちらも果て無しの太平洋が陸を縁取っている。そうした大地を裂いて、流れ込んで来るのが熊野川である。今日の川面は翡翠色に鎮まっているものの、一度氾濫すれば何もかも呑み込んでしまう、山塊と大洋と大河の新宮である。 . . . 本文を読む
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第1867号 新宮を再訪して胎内回帰する

2023-07-24 15:03:41 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】熊野路を廻ったのは25年も昔のことになる。再訪しようと何度か計画を練ったものの、果たせず四半世紀を経てしまった。以来、熊野を考えると決まって思い浮かぶ光景がある。それは新宮の、ごくありふれた街角に過ぎないのだが、「もう一度あの場所で街を見つめたい」と、渇望にも似た想いが湧いてくる地なのである。自分でも不可解なこの「想い」は何なのか、確かめたくて再び新宮にやって来た。そして独り、夕暮れの街角に立っている。 . . . 本文を読む
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第1866号 水源の里・丹波山村を歩く

2023-07-09 08:30:55 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】清流が流れ来る彼方を望むと、峰はさほど高くも険しくも見えない。しかし幾重にも重なる山の深さを知るには人はあまりに小さく、背伸びしても到底無理だ。山梨県の東北端、丹波山(たばやま)村に来ている。297世帯527人が暮らす面積101平方キロの村は、97%が山林で、そのうち約70%は東京都の水源涵養林である。眼前の丹波川は遠く笠取山に発して奥多摩湖へと下り、多摩川になる。つまりここは都民の水源の村なのである。 . . . 本文を読む
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第1865号 玉淀で鮎の塩焼きを食す

2023-07-04 09:14:48 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】毎年6月になって鮎釣りが解禁されると、釣りキチはお気に入りの渓流へと飛び出し、友釣りに没入するのだけれど、釣りキチでない私は家に居て、「今年こそ鮎を食べるぞー」と雄叫びを挙げる。そんなことを繰り返して10年余になろうかという今年、とうとう我慢できずに家を飛び出し、寄居の料理旅館にやって来た。世の中、美味しいものはたくさんあるのに、この季節になると、無性に鮎の塩焼きを頬張りたくなるのである。さあ、食べよう! . . . 本文を読む
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