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【Tokyo】「いづら」はまるで呪文のように、不思議な「ときめき」となって私の心を波立たせる。それは岡倉天心という、日本美のカリスマにつながっていく地名だからなのだろうけれど、そうした神秘的な人格が身を潜め、潜めたがゆえに多くの若い才能を引き寄せた土地とは、いったいいかなる「場」なのだろうと、いつも「ときめき」ながら思いを馳せてきたのだった。そしてその地をようよう訪ねてみて、いまは夢から覚めた . . . 本文を読む
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【Tokyo】「しおやざき」という響きが、微かな記憶を連れてきた。――人里遠く断崖に立つ灯台が、暴風雨に曝されている。その灯火を守ろうと、懸命に手を取り合う灯台守夫婦。「頑張って!」と声に出しそうになりながら、私は小さな握りこぶしに力を込める――。小学生のころ、学校の映画鑑賞会で観た映画の、擦り切れかけた思い出である。その塩屋崎が、福島県いわき市に所在することは、記憶から完全に抜け落ちていた。 . . . 本文を読む
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【Tokyo】ようやく梅がほころび始めた季節、平日の昼下がりに初めての街・いわきを歩いた。旧「平」市街と言ったら判りがいいか、城跡らしき高台をぐるりと回ってJRいわき駅構内を抜け、市街地に出る。
まっすぐ南へ広い道が延びていて、その周辺が繁華街であり官庁街らしい。程なく行き当たる流れを新川といい、東の夏井川とともに城下を守る濠のような構造である。城下町から地方都市へ、変遷も構造も、実にわかり . . . 本文を読む
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【Tokyo】目下、読みかけのベルンハルト・シュリンク『ゼルプの殺人』(2003年、小学館)に、こんなくだりがあった。「何もかもお粗末なジョークです。連邦功労十字勲章、職務命令、私がここに座っていた歳月、私が手がけた事件、どれもこれも死ぬほど笑えるジョークですよ」(岩淵達治・他訳)。ドイツ人も同じことを考えると、妙に共感してしまった。
私立探偵ゼルプの友人の警察署長が、退職に当たって漏らした . . . 本文を読む
【Tokyo】東京は急に春めいてきて、ちょっと散歩をサボっていると、蕾が次ぎ次ぎ開いて、どんどん《春》が進行している。私の散歩コースである井の頭公園界隈の《春》を紹介する。このサイトは1ページに1枚の写真しか掲載できないため、ページを替えて掲載する。御面倒でもお付き合い願いたい。先ずは七部咲きの「カワヅザクラ」から。 . . . 本文を読む
【Mie】先日の民放テレビ番組で、周防正行監督の映画「それでもボクはやってない」を観た。この映画は痴漢冤罪を扱った裁判のシリアスな社会派ドラマで、内容が極めてリアルなため、観て楽しい映画ではないが、観終わった後で何かしら釈然としないものが残った。
日本の警察に犯罪の容疑者として逮捕された場合、たとえその人が無実としても、いったん起訴されれば99.9%は有罪になるということを、この映画で始めて . . . 本文を読む