すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第1872号 五條新町で江戸の風情に浸る

2023-07-30 09:57:05 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】紀伊半島は広大で、列島の「半島」では突出している。標高1500メートル前後の峰々が連なる紀伊山地が中央に居座る大山塊で、古来、山びとが行き交う杣道を除けば、熊野詣の「辺路」や吉野修験の「奥駈道」が尾根を縫う程度の道路事情の地だった。縦走する自動車道が通じたのは昭和30年代になってからで、新宮から北上して五條に至る国道168号線である。私はその道を二日を掛けてバスに乗り継ぎ、ついに吉野川を渡る。五條だ。 . . . 本文を読む
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第1871号 歌書よりも軍書に哀し賀名生の里

2023-07-29 08:43:33 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】関西人なら、梅林で有名なこの地名を難なく「あのう」と読むかもしれないけれど、アヅマエビスの私には実に難しい。奥吉野へ分け入る「喉口」とでも言うあたりの、五條市西吉野町賀名生である。私は天辻峠を南から越えてやって来たので、いささか空は広くなったけれど、依然として山に囲まれた小さな里である。しかしもし650年ほど遡ったとすれば、ほんの一時とはいえ、ここがわが国の「帝都」であったと言えなくもない土地なのである。 . . . 本文を読む
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第1870号 空青く緑に埋もれ遠つ河

2023-07-27 09:14:41 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】「遠つ河」なのだろう。「つ」は津か都か、何れにしても湊にも街にも遠い「十津川」である。紀伊山中を縦走するバスは本宮から北上を続け、ずっと並走していた熊野川がいつの間にか目もくらむ谷底となっている。紀伊・大和の国境、果無山脈を越えているのだ。かつては里の物資を求めて村人が歩き、高野山から熊野霊場を目指す参詣者が1000メートルを超す峠をいくつも越えた小辺路である。私はバスを独占して隧道を通過、大和に入る。 . . . 本文を読む
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第1869号 大斎原から熊野本宮大社へ、暑い!

2023-07-26 11:38:27 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】私は和歌山県田辺市本宮町本宮の熊野川右岸堤防上にいる。正面には熊野本宮大社が鎮座する丘が望まれ、左の森は旧社地の大斎原(おおゆのはら)である。中央に聳える大鳥居は高さが34メートルもあるそうだが、25年前に訪れた時はまだなく、翌年の建造だ。当時ここは本宮町といったが、現在は合併して田辺市に含まれる。そして遥かに望む北方の峰々は、熊野川が発する吉野の大山塊だ。十津川村から奥吉野へ続く、山また山の世界である。 . . . 本文を読む
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第1868号 御旅所で熊野の神と戯れる

2023-07-25 11:07:03 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】熊野川の河口近くに残る、新宮城(丹鶴城)址に登る。陽が落ちようとしている彼方は、熊野の神々が降臨した権現山が、果無山地へと続いて行く峰々の世界である。振り向けば家並みの向こうに熊野灘が蒼海を広げ、こちらも果て無しの太平洋が陸を縁取っている。そうした大地を裂いて、流れ込んで来るのが熊野川である。今日の川面は翡翠色に鎮まっているものの、一度氾濫すれば何もかも呑み込んでしまう、山塊と大洋と大河の新宮である。 . . . 本文を読む
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第1867号 新宮を再訪して胎内回帰する

2023-07-24 15:03:41 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】熊野路を廻ったのは25年も昔のことになる。再訪しようと何度か計画を練ったものの、果たせず四半世紀を経てしまった。以来、熊野を考えると決まって思い浮かぶ光景がある。それは新宮の、ごくありふれた街角に過ぎないのだが、「もう一度あの場所で街を見つめたい」と、渇望にも似た想いが湧いてくる地なのである。自分でも不可解なこの「想い」は何なのか、確かめたくて再び新宮にやって来た。そして独り、夕暮れの街角に立っている。 . . . 本文を読む
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第1866号 水源の里・丹波山村を歩く

2023-07-09 08:30:55 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】清流が流れ来る彼方を望むと、峰はさほど高くも険しくも見えない。しかし幾重にも重なる山の深さを知るには人はあまりに小さく、背伸びしても到底無理だ。山梨県の東北端、丹波山(たばやま)村に来ている。297世帯527人が暮らす面積101平方キロの村は、97%が山林で、そのうち約70%は東京都の水源涵養林である。眼前の丹波川は遠く笠取山に発して奥多摩湖へと下り、多摩川になる。つまりここは都民の水源の村なのである。 . . . 本文を読む
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第1865号 玉淀で鮎の塩焼きを食す

2023-07-04 09:14:48 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】毎年6月になって鮎釣りが解禁されると、釣りキチはお気に入りの渓流へと飛び出し、友釣りに没入するのだけれど、釣りキチでない私は家に居て、「今年こそ鮎を食べるぞー」と雄叫びを挙げる。そんなことを繰り返して10年余になろうかという今年、とうとう我慢できずに家を飛び出し、寄居の料理旅館にやって来た。世の中、美味しいものはたくさんあるのに、この季節になると、無性に鮎の塩焼きを頬張りたくなるのである。さあ、食べよう! . . . 本文を読む
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第1864号 長瀞で「地球の窓」を開けてみる

2023-07-03 11:37:15 | Tokyo-k Report
【Tokyio-k】この景色を前にしたら、腕を思いっきり広げて深呼吸したくなる気分は、後方で写真を撮っている私にもよく解る。あいにくの梅雨空でも実に清々しい風景なのだ。秩父盆地の水が荒川を中心に全て集まって、関東平野に出て行こうとする長瀞である。「瀞」とは「水が深くて淀み、流れの緩やかな川の状態」を言う。岩に囲まれた瀞が続く長瀞は、「地球の窓」とも呼ばれる日本地質学発祥の地で、名勝が乏しい埼玉では、とっておきの観光地なのである。 . . . 本文を読む
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第1863号 「あついぞ!熊谷」にミストを浴びに行く

2023-07-02 16:52:59 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】熊谷のイメージが「日本一暑い街」と定着して久しい。今年も天気予報でその名を耳にするようになり、頭上から冷えたミストが降り注ぐ駅前広場の映像が紹介される季節になった。この霧を浴びるとどれほど涼しいのか、体験したくてやって来た。だが今日は生憎というか幸いなのか、「気温28度以上・湿度75パーセント未満・風速3メートル未満・降雨なし」というミスト運転条件が満たされていないのだろう、装置は休養日のようである。 . . . 本文を読む
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