すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第1710号 ムジナに化かされ、ハケの道で歴史遊泳

2021-04-29 09:19:45 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】ここは「ムジナ坂」という。坂の麓に小金井市が建てた標柱にそう書いてある。「昔、坂の上に住む農民が田畑に通った道で、誰いうとなくムジナ坂といい、暗くなると化かされると怖がられ、遠回りをした」のだという。この崖地は、多摩川が悠久の時をかけて形成した国分寺崖線で、高低差は20メートルほどある。水を担ぎ、汗して上り下りする人々が目に浮かぶ。今は階段が整備され、手すりまで付いているからムジナも出てきにくいことだろう。 . . . 本文を読む
コメント

第1709号 丘陵のニュータウンは30年、見学する

2021-04-25 06:00:00 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】中央線が山梨県に入って二つ目の駅に四方津(しおつ)がある。北の崖地と南の桂川の間の狭い土地を鉄路が通過しているのだから、駅周辺に街を形成する余地はなく殺風景だ。風変わりなのは、駅から北の崖の上まで円筒状のガラスのドームが延びていることだ。崖上にニュータウンが広がっているらしいのだ。住宅メーカーが「手ごろな価格で戸建てが手に入る」と開発し、売り出した新造の街だ。1991年のことだから、バブル経済爛熟時である。 . . . 本文を読む
コメント

第1708号 山峡の街でパリの裏町を観る 増田誠展

2021-04-24 06:00:00 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】 不要不急の外出は控えるように、との呼びかけが飛び交っているというのに、富士の北麓を目指してやってきた私に、呼びかけを覆すほどの急用があるわけではない。増田誠という、初めて名を聞く画家の生誕100年展が、都留市のミュージアムで開催されているとローカルニュースで知ったからだ。テレビにちらりと映ったその作品は、私好みのタッチである。「あぁ、観たい」と思った瞬間、出かけようと決めていた。どうみても不要不急である。 . . . 本文を読む
コメント

第1707号 忍野八海で水垢離を思い浮かべるのは難しい

2021-04-23 09:16:30 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】観光写真的にアングルを決めれば、こんな1枚になるのだろう、「忍野(おしの)八海」である。私はその名前に惹かれていたのだろうか、どこか幽玄な、神秘的でさえある佇まいを想像して、機会があったら行ってみようと考えてきた。しかし残念なことに、実につまらない観光地だったのである。美しく透き通った池もあるけれど、阿蘇山麓の白水に比べたらそのスケールはお粗末で、「八海」と言うよりは「八つの水溜り」のようなものである。 . . . 本文を読む
コメント

第1706号 快晴の河口湖畔を歩く

2021-04-22 13:45:16 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】一片の雲もない。眼前には美しく冠雪した富士がどっかりと胡座をかき、脚元には澄んだ湖水が静かに打ち寄せている。完璧と言っていい風光に包まれていい気分だった私は、次第に鬱陶しくなっていることに気づく。完璧すぎるのである。天気が良過ぎるのだろう、だから造形も色彩も単純で、湖畔散歩を続けていると、あまりに泰然とした富士山の姿に己が小さく思えてきて「おい、富士よ、なんか芸でもしてみろよ」と悪態をつきたくなる。 . . . 本文を読む
コメント

第1705号 紫香楽の廃都に吹く風を感じ

2021-04-16 09:53:58 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】痩せた雑木が立ち並ぶ疎林を、冷たい風が吹き抜けていく‥‥ように感じるのだが、実際には風は吹いていない。剥き出しの礎石が点在する風景が、そうした感覚に陥らせるのかもしれない。廃棄された都とは、こういうものであろうか。聖武天皇・紫香楽宮跡である。1200年余も放置されていたにしては、削られて他の用途に用いられることがなかった土地である。そんなところに遷都しようとした帝の胸中には、何が去来していたのであろう。 . . . 本文を読む
コメント

第1704号 高原で夢を見る 信楽陶芸の森

2021-04-15 09:14:19 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】居並ぶタヌキとは、信楽の「陶芸の森」で出会った。窯場のコンクリート壁を背に5躰、並んでいる。いずれも不敵な面構えで、人間世界を凝視している。園内にたくさん展示されている焼き物で、私が一番気に入った作品だ。しかし信楽はもう、タヌキはやめた方がいい。陶芸店の店頭に、看板代わりにうず高く積み上げられているあのタヌキのことだ。鋳型で大量生産され、信楽の代名詞になっている。それが信楽焼の可能性を狭めてしまっている。 . . . 本文を読む
コメント

第1703号 忍者の里に泊まり、櫟野寺に行く

2021-04-14 09:03:27 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】「油日」という地名も、油日大明神を祀る「油日神社」も、日本中でここ甲賀にしかない。なんとも不思議な響きだけれど、878年の文書に由緒ある神社として登場するそうだから、創祀はそれを遡ることは間違いない。20代目になるという神主さんは「もう、よく分かりませんね」とおっとりしたもので、「ここまでおいでになったのですから、櫟野寺にも行かれたらどうです」と薦めてくださる。「甲賀」は小さな城跡と寺が実に多い不思議な里である。 . . . 本文を読む
コメント

第1702号 油日の隠れ里を歩いて太夫に会う

2021-04-13 11:39:07 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】「あぶらひ」と読む。滋賀県最南部の甲賀市の、そのまた最南東部にある山里で、山の向こうは三重県だ。三重県伊賀市の柘植駅で、関西本線を草津線に乗り換えると、最初の駅が油日である。私はここに来たかったのだ。そのために四日市から信楽までの5日間の旅を組んだ。油日以外はいずれも「ついで」なのだ。駅から2キロほど山に向かうと「油日神社」という古社がある。そこに所蔵されている「福太夫」の面が見たくてやってきたのである。 . . . 本文を読む
コメント

第1701号 関宿で東海道を行ったり来たり 

2021-04-12 10:09:50 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】東海道「関宿」である。53次の内、江戸から数えて47番目の宿場町である。ただこの「関」は、7世紀に遡る「鈴鹿関」を受け継ぐ由緒がある。関所に由緒などあるものかと言えばそれまでだが、不破関、愛発関とともに「律令三関」を形成する、ほとんど国家の始まりを伝える関跡となれば、歩く気分も一入である。宿場の中ほど、江戸から百六里に当たるあたりに建つ眺関亭から俯瞰する。街並みの向こうに聳える山が、鬼の棲む鈴鹿峠であろうか。 . . . 本文を読む
コメント

第1700号 花吹雪の亀山城下を歩く

2021-04-11 12:36:18 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】四日市から乗車した関西本線は、亀山止まりだった。亀山まではJR東海、ここから先はJR西日本の管内になるからだろう。亀山市は三重県中北部の人口5万人弱の街だ。カメヤマと聞いて思い当たるのはローソクと液晶テレビの亀山モデルくらいの私だから、この機会に街を歩いてみようと下車する。何の予備知識もないので、とりあえず城跡を目指して歩き始める。今日はこの旅の「中日」。幸い好天続きだが街は吹雪いている。花吹雪だ。 . . . 本文を読む
コメント

第1699号 養老で「死なないための庭園」を歩く

2021-04-10 10:44:43 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】私が住んでいる東京・三鷹に「天命反転住宅」という風変わりな建物がある。建築の狙いはいくら読んでも解らないから放っておくとしても、大きな積み木を組み上げたようなカラフルな形状自体は面白く、私は通りかかるたびに眺めて楽しんでいる。その住宅と関わりがあるのかどうか、岐阜県のどこかに「天命反転地」というテーマパークのような場所があることも知って久しくなる。行ってみたいと思いつつ、辺鄙だからと断念してきた。 . . . 本文を読む
コメント

第1698号 御在所岳はあいにくの眺望不能

2021-04-09 13:45:00 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】四日市の西、滋賀県との県境に御在所岳(1212m)という峰がある。鈴鹿山脈に含まれ、切り立った山頂からは伊勢湾まで見晴らせて、眺望がすこぶる良いらしい。山麓に「湯の山」という温泉郷があって、そこからロープウエーが山頂近くまで延びている。そんなことを以前、津で暮らす幼馴染に三重県南部を案内してもらった際、聞いたことを思い出した。四日市滞在に時間の余裕ができたので行ってみる。温泉に浸かるのもいいかもしれない。 . . . 本文を読む
コメント

第1697号 四日市は工場夜景と萬古焼

2021-04-08 05:36:49 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】近年「工場夜景」が人気スポットなのだそうで、その「聖地」を謳う四日市は「コンビナート夜景クルーズ」がほぼ毎夕、運航されている。純粋に生産効率のみを追求するコンビナートが、結果として無機質の美を出現させる夜景は確かに美しく、観光客で賑わっているようだ。だが群れることが苦手な私は三滝川の河口に近い大正橋脇の堰堤に立ち、製油所のプラントにカメラを向けている。暗くなった上空を、旅客機が中部国際空港へと降りて行く。 . . . 本文を読む
コメント

第1696号 空襲と公害を乗り越えた四日市を歩く 

2021-04-07 20:07:28 | Tokyo-k Report
【Tokyo-k】四日市市の中心部に「鵜の森」という公園がある。満開の桜林を、子供たちが走り回っている。市民のマスク姿を除けば、いつもと変わらぬ平和な風景なのだろう。私は初めてやってきた街を歩き、その公園でしばし疲れを癒している。そして「この街は二度、空襲に遭ったようなものだ」と思い、この平和を得るまでにどれほどの苦労があっただろうかと考えている。「二度」とは、戦争での空爆と、それから10年ほどして街を襲った大気汚染である。 . . . 本文を読む
コメント