【Tokyo-k】東国者の私がこの街の名「各務原」を耳にするのは、年に一度「航空祭が賑わっています」というニュースが流れる時くらいだ。だがそのおかげでこの珍しい街の名を、知らず識らず覚えたようである。とはいえ「かがみはら」だと思い込んでいた読み方は、正しくは「かかみがはら」なのだとは知らなかった。岐阜から名鉄犬山線に乗り、市役所前で降りて歩く。新築間もない様子の市役所に立ち寄ると、ロビーの隅に展示された小さな立像に「村国男依」とある。 . . . 本文を読む
【Tokyo-k】岐阜市について「賑わいと静寂のバランスが程よく均衡した、暮らし良さそうな街だ」と書いたことがある。JRと名鉄の駅が隣り合う界隈から北へ、金華山通りを行くと柳ヶ瀬の繁華街になり、さらに市役所を過ぎると長良川の清流に行き当たる。長良川橋を渡って金華山を見上げると、陽に輝く稲葉山城が豊かな歴史を語りかけてきて、「いい街だ」と思うのである。ただいつも訪れるのはこのあたりだから、街の全体について語る知識はない。 . . . 本文を読む
【Tokyo-k】雑踏を遠ざかって久しい年寄りには、師走・週末の渋谷はひたすら疲れる。100年に一度の大改造中だという街はガラスのタワーが林立して、その麓を交錯する人々が急流のごとく渦巻いている。そこは単なる「谷」というより、もはや「渓谷」である。知らない街に迷い込んだ心もとなさでビルをめぐり、かつて馴染んだ渋谷はどこに消えたかと目を凝らす。ようやくビルの谷間に張り付く微かな残滓を見つけ、ともに老残の身を労わるのである。
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【Tokyo-k】東松山市を訪れたのは2年前の秋だ。吉見百穴を見物した帰り、吉見町との境を流れる市野川の堤から望まれる富士山が美しかった。今、その日のことを思い出そうとしているのは、国の文化審議会が先日、同市の中心部に鎮座する箭弓(やきゅう)稲荷神社の本殿などを国の重要文化財に指定するよう答申したからだ。神社を訪れたその日、私は「ずいぶん手の込んだ本殿だ」と感じ入ったものだ。そんな縁で、他所者ながらこの指定を喜んでいる。
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