すずめ通信

すずめの街の舌切雀。Tokyo,Nagano,Mie, Chiba & Niigata Sparrows

第245号 『土地の文明』

2005-07-26 12:59:58 | Tokyo-k Report
【Tokyo】『土地の文明』(PHP研究所)を読んだ。著者の竹村公太郎氏は、建設省の河川局長を務めた土木工学の技術者ということだ。こうした経歴の人が業界関係誌のようなところに寄せたエッセイというのは、軽薄とはいわないまでも、その軽さが鼻持ちならない、というのが通り相場だが、この一冊は「やや軽い」けれども、「魅力的な着想に満ちて」いて、飽きずに読了することができた。 江戸城の古地図から、その「正門 . . . 本文を読む
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第244号 政治空白って何だ?

2005-07-22 15:55:58 | Tokyo-k Report
【Tokyo】郵政改革をめぐって、政局がいよいよ混迷してきた。小泉首相は「参院で否決されれば内閣不信任だ」と言い切っているから、そうなった場合は内閣総辞職か解散しか選択肢はないことになる。そんなことはどっちでもいいのだが、こういう政治状況になると、決まって出てくる論調がある。「内政・外交がこれほど混迷している時、解散・総選挙という政治の空白を作ってはいけない」という常套句だ。 どういうものでしょ . . . 本文を読む
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第243号 韓国映画『マラソン』

2005-07-20 14:27:01 | Tokyo-k Report
【Tokyo】韓国映画『マラソン』を観た。走ることに自己表現を見出した自閉症の青年とその家族の物語だ。モデルは実在するのだそうで、そのせいか韓国の人々の日常生活がとても自然に描かれており、すばらしい作品だった。 自閉症という障害を持つ子を産んだ母親の愛情と苦悩が、観る者の人生それぞれに迫って来る。「あなたならどうするのだ」と。動物園で、疲れ切ってベンチに座り込んだ母親。シマウマを見に行きたい息子 . . . 本文を読む
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第242号 槿(ムクゲ)

2005-07-15 15:13:16 | Tokyo-k Report
【Tokyo】アジサイが終わってしまうと、花の季節はいったん、端境期に入るようだ。散歩をしていて出会う花がすっかり乏しくなり、その分、緑が勢いを増している。 それでもムクゲ、くちなし、ユリなどを見かける。わがベランダでも、朝顔が人知れず毎日新しい花を咲かせている。しかし春の花盛りのころのを思い出すと、わが散歩コースの色彩は緑一色に征服されたといってもいい。 今はこういう季節なのだろう。そう考え . . . 本文を読む
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第241号 続・談合と天下り

2005-07-13 13:42:41 | Tokyo-k Report
【Tokyo】橋梁談合事件の悪質さは、メーカーに天下っていた道路公団元理事の逮捕で、その根の深さが次第に明るみに出されつつある。それにしても、事件の推移を眺めていると、われわれはなんという情けない社会に生きているのだろうかという絶望に襲われる。 逮捕された元理事は、テレビに映し出される姿を眺めている限り、技術屋らしい真面目でおとなしい性格の人物のように見える。「とってもいい人なので、メーカー間に . . . 本文を読む
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第240号 連載習作「後退する男」 7 完

2005-07-11 15:15:25 | Tokyo-k Report
禎二の銀行(行員)嫌いは、四十年余も兜町というシマで暮らした者の筋金が通っていた。だから「元行員に違いないあの年寄りには、負けるわけにはいかないのだ」と、禎二の早朝ウオーキングはますます熱を帯びた。 禎二がその年寄りを「元銀行員」と見ぬいた根拠は、何よりもその雰囲気から来る直感だった。服装はいつもクリーム色のポロシャツにグレーのスラックスと決まっていた。ソフト帽のようなしゃれた帽子をかぶり、靴は . . . 本文を読む
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第239号 連載習作「後退する男」 6

2005-07-10 00:00:04 | Tokyo-k Report
娘と二人だけの静かな夕食に向かいながら、禎二は「くろがねさん」のことを話した。娘は驚いて「そのおじいさん、頑張りすぎたのかしら。悪いけど、年寄りの冷や水ってやつね」と冷たく言い放った。そのうえ「だめよ、お父さん、無理をしちゃ」と、矛先を父親に向けて来るのだった。 ウオーキングを進めたのも、後退歩行を迫ったのも娘だったくせに、急に父親のことが心配になったらしい、今度は「ほどほどにしなさいね」などと . . . 本文を読む
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第238号 連載習作「後退する男」 5

2005-07-09 12:53:11 | Tokyo-k Report
娘に言われると黙って従うしかないのが、今では家事をすっかり娘任せにしている禎二の弱みだった。だからある朝、いつもより早めに家を出て、ひと気の少ないグランドで後ろ向きに歩いてみた。 直線では別に難しいことはなかったが、四百メートルトラックのコーナーに差し掛かると、後ろ(前?)が気になってついつい振り向いてしまう。振り向きながら歩くとバランスを崩しそうになってコースを大きくはずしてしまう。 そんな . . . 本文を読む
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第237号 連載習作「後退する男」 4

2005-07-08 09:22:41 | Tokyo-k Report
娘のやつ、どこでどう仕入れているのか、「ウオーキングはとっても体にいいそうよ」などと、このところやたらと口うるさくなった。父親の健康維持を慮ってくれるのはありがたいが、まるで女房気取りだ。そんな娘に頭の上がらない自分に、時々、舌打ちしたくなる。 禎二がしぶしぶ朝のウオーキングを始めたころ、娘は嫌がる禎二の意向をわざと無視して、休日はコーチ然として自転車で付いてきたものだった。 「ね、ね、腕は大 . . . 本文を読む
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第236号 連載習作「後退する男」 3

2005-07-07 11:44:00 | Tokyo-k Report
禎二が会社帰りに、毎晩のように通っていた飲み屋の女将が癌で死に、それから間もなく亭主が後追い自殺してしまうと、禎二はなんだか人生にぽっかりと空洞ができたように感じた。考えてみれば、この十年は身近な人の死だらけだった。 禎二が妻に先立たれたのは、四十九歳の時である。ありきたりの夫婦だったのだろうが、仲は決して悪くなかった。仕事にかこつけて家庭を顧みない、平凡なサラリーマンであった禎二に不満な様子を . . . 本文を読む
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第235号 連載習作「後退する男」 2

2005-07-06 08:19:45 | Tokyo-k Report
「うしろさん」は、名前を堀口禎二といった。髪がすっかり白くなっているせいか老けて見られるが、今年の秋が来て六十四歳になる元証券マンだ。広場から歩いて十分くらいの分譲住宅に、娘と二人で暮らしている。妻は十三年前、四十七歳の若さで死んでしまった。クモ膜下出血だった。以来、禎二はやもめ暮らしを続けているが、一人娘が嫁に行きもせず、家事を切り盛りしてくれている。 禎二は六十歳で勤めを辞めた。定年ではあっ . . . 本文を読む
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第234号 連載習作「後退する男」 1

2005-07-05 22:19:27 | Tokyo-k Report
午前六時半は、ニッポンのミステリータイムである。公園という公園で、年寄りたちが輪を作る。そしていっせいに、お馴染みの号令とピアノ伴奏に合わせ、腕を上げ足を踏み、曲がりかけた腰を無理やり伸ばしたりし始める。ラジオ体操の時間なのである。 そんな輪に加わりたければ、早起きをして近所の公園に行ってみるといい。住宅地の中の、そこそこの規模を備えた公園ならば、決まったようにそうした輪があって、その中心では「 . . . 本文を読む
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第233号 アサガオ開花

2005-07-04 15:12:40 | Tokyo-k Report
【Tokyo】古いマンションの私の住まいには、北側にも小さなベランダがある。北向きではあるが、東側は市営の駐輪場で広々とした空間になっているから、4階のわがベランダには昼過ぎまで燦々と日が差す。どういう経緯で思い立ったかは忘れたが、そこで朝顔を咲かせたいと思い立った。そのアサガオが今朝、大輪の花を開いた。 小さなプランターと土を買ってきて、発芽させた種子を植えた。突っ張り棒などを利用して、天井ま . . . 本文を読む
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第232号 マリオネットの増税論議

2005-07-02 14:42:17 | Tokyo-k Report
【Tokyo】増税論議が急に賑やかになってきた。きっかけは政府税調の会長が「サラリーマンにがんばってもらうしか財政再建はできない」と、記者会見で所得税増税不可避を打ち上げたことだ。これに対して自民党の税調会長、いわゆる党税調の会長が「税を決めるのは政治だ。私は絶対反対する」と吼えたものだから面白くなった。しかしこれらはすべて、財務省のシナリオどおりの展開であることを知っておかなければならない。 . . . 本文を読む
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第231号 花盗人

2005-07-01 12:48:26 | Tokyo-k Report
【Tokyo】今朝の散歩で、写真のような張り紙を見つけた。マンションエントランスの植え込みに植えられたアジサイに括りつけられていたもので、「美しく色づいた紫陽花を、どうしてすっかり切り取っていくのですか。楽しみに育てていたのに、とても悲しい。花盗人さんへ」といった文章だった。確かにてっぺんの一輪だけ残し、茎がすべて無残な切り口を見せている。ひどいことをする盗人がいたものだ。 「花盗人は罪にならな . . . 本文を読む
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