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【「羅須地人協会」〈『兄のトランク』(宮沢清六著、筑摩書房)の口絵から)】
たまたま観たTV画面に、スーパードクター スゴイ日本人SP
ミャンマー2万人以上の命を“無給”で救う日本人医師
という文字が並んでいた(平成30年12月8日12時からの『岩手めんこいTV』)。もちろんすぐに惹きつけられて観続けた。
するとその画面には、その医師が深夜までの勤務を終えて寝に帰るというシーンが映ったのだが、帰ったその部屋にはベットと毛布2枚、飲み物もペットボトルの水が一本あるだけだった。そしてそこはいつも寝泊まりしている勤務先の病院の部屋であるという。
この方は吉岡秀人(53歳)いう医師で、日本に妻子を残して、貧しい人々の命を救おうとして30歳でミャンマーに赴任。寝る間も惜しんで連日大車輪の医療活動をしているのだそうだ。しかし、専門が小児科であったために、自分の専門以外の患者に対しては自分の力不足を痛感して一時挫折。そこで苦悩した同医師は、1997年に一度日本に戻って5年間外科手術の腕を磨き、2003年に再びミャンマーに戻ったという。したがって、この医師は自分を犠牲にして(本人は全くそうは思っていなかったのだが)約23年間ミャンマーの貧しい人々のために献身してきたということになる。
するとすぐに較べてしまうのが、「貧しい農民たちのために自分の命を犠牲にしてまでも献身しようとした」といわれている宮澤賢治である。しかも、残念なことだが、かつては「貧しい農民たちのために自分の命を犠牲にしてまでも献身しようとした」賢治と私は思っていたが、それは事実ではなかったということを私は実証してしまった<*1>。実際それはまた、賢治自身が伊藤忠一に対して「羅須地人協会時代」のことを、「たびたび失礼なことも言ひましたが、殆んどあすこでははじめからおしまひまで病気(こころもからだも)みたいなもので何とも済みませんでした」と吐露して謝罪していることからも容易に窺える。
それから賢治は、例えば昭和3年の農閑期、近隣の農民たちに対する無料の肥料設計や肥料相談のために邁進していたということは事実であったであろうが、このような献身はそれほど長続きはしなかった。
そしてそもそも、賢治が「貧しい農民たちのために自分の命を犠牲にしてまでも献身しようとし」なかったということが事実であったとしても、無料の肥料設計が長続きしなかったとしても、賢治が責められる点は何もない。賢治自身が「貧しい農民たちのために自分の命を犠牲にしてまでも献身しようとした」ということなどを言っていたわけではないからである(周りの誰かが褒めそやしたに過ぎない)。要するに、貧しい人たちのために自分の命まで犠牲にして献身する人など、元々いるはずがないのだ、というのが私の最近の認識であった。
ところがこの度、この吉岡秀人氏の場合はまさにそのような人であり、そして今でも実践し続けているということを知り、私は自分の浅はかさを恥じると共に、ただただ圧倒され、そして崇敬の念を抱くだけだった。
残念ながら賢治はそうではなかったようだが、現実に今、
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
を実践している、松田甚次郎のようにいわば「賢治精神」を実践してる吉岡秀人という医師が、今ミャンマーで貧しい人々を救い続けている日本人がいるのだということを知って、ほんのちょっとでいい、私も爪の垢をもらいたいものだと思った一日となった。
<*1:註> 賢治の稲作経験とは花巻農学校の先生になってからのものであり、豊富な実体験があった上での稲作指導というわけではないのだから、経験豊富な農民たちに対して賢治が指導できることは限定的なものであり、食味もよく冷害にも稲熱病にも強いといわれて普及し始めていた陸羽132号を、ただし同品種は金肥に対応して開発された品種だったからそれには金肥が欠かせないので肥料設計までしてやるという指導法であった。おのずから、同品種による稲作は、当時大半を占めていた小作農たち、つまり「貧しい農民たち」にとっては現実的にはふさわしいものではなかったのである。
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賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』
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〈平成30年6月28日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました。
そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
電話 0198-24-9813
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