みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

「総括見解」を公にしてほしい事柄

2021-11-26 18:00:00 | 「賢治年譜」等に異議あり
《『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版)の表紙》

 そして、こう続いた。
高橋 結局、昭和52年の『事故のてんまつ』の出版も、『校本全集第十四巻』の出版もともに「腐りきっていた」典型的な事例であったと言えるということだ。
 しかし、前者ではそれを厳しく総括したのだが、後者では全くそうではなかったということになる。となれば、遅ればせながら、まずは筑摩は第十四巻の総括をし、次にその「総括見解」を公にすることが筋であろう。
 ではその際に、主にどんな事柄に関して総括せねばならぬのか、具体的に挙げてみてくれんか。
鈴木 そうですね、現時点では、少なくとも次のような三つの事柄についてだと思います。
 まず一つ目が、先ほど高橋さんが「安易な」と形容された、それこそ、「新発見の書簡 252c」等の安易な公開についてです。
高橋 たしかにこの公開については、人権に関わることでもあるというのに、筑摩は安易で慎重さに欠けていた。その根拠も明らかにしておらず、推定にすぎないものだらけ。にもかかわらず、筑摩が断定的に書いたものだから、研究者も含めて一般読者もその推定を事実と思い込んだ。その結果、それまでは一部の人にのみ知られていた〈悪女伝説〉が、一気に〈高瀬露悪女伝説〉に変身して全国に流布してしまったと言えるからな。
鈴木 同時に悔やまれるのが、これらの一連の書簡下書群の安易な公開によって結果的に、賢治には従来のイメージとは正反対の、「背筋がひんやりしてくるような冷酷さ」があったということを世に知らしめてしまい、賢治のプライバシー権を侵害したことです。
高橋 これでは、筑摩は露のみならず、あまつさえ賢治までも貶めていると言われかねない。
鈴木 では二つ目ですが、それは、『新校本年譜』の大正15年12月2日の記載に関してで、例の「注釈*65」の仕方についてです。
高橋 そりゃたしかにそうだわな。さっき、
 昭和52年発行の第十四巻は、「大正一五年のことと改めることになっている」という横車を押して、「昭和二年十一月ころ」という証言を一方的に書き変えたということか。
と言ったように、その根拠も明示せずに他人の記述内容を一方的に書き変えているというのだから。出版社がこんなことをするということは、それこそ自殺行為だ。
鈴木 そして、最後の三つ目が次のことについてです。
 第十四巻は昭和2年の記載の中で、
七月一九日(火) 盛岡測候所福井規矩三へ礼状を出す(書簡231)。福井規矩三の「測候所と宮沢君」によると、
「昭和二年は非常な寒い気候が続いて、ひどい凶作であった……」
という記載をしています。そしてたしかに、福井は「測候所と宮澤君」において、「昭和二年はまた非常な寒い氣候が續いて、ひどい凶作であつた」(『宮澤賢治研究』(草野心平編、十字屋書店、317p)と述べています。
 そこで、多くの賢治研究家等がこのことは歴史的事実だと信じ込み、それに基づいた論考を著しています。しかし、この福井の証言内容は事実ではありません
高橋 つまり、鈴木君がしばしば口にする、あの石井洋二郎の戒め、「必ず一次情報に立ち返って」という研究における大原則を、彼等は蔑ろにしていると言いたいのだな。
鈴木 はい。
 ということで、以上の三つの事柄について、筑摩は少なくとも「総括見解」を公にしてほしいです。

 続きへ
前へ 
『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』の目次”へ。
 ”みちのくの山野草”のトップに戻る。

《ご案内》
 来る12月16日付で、新刊『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))を発売予定です。
【目次】

【序章 門外漢で非専門家ですが】

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 本日の下根子桜(11/26、詩碑... | トップ | 「賢治さんを想ひ出す」(菊池... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

「賢治年譜」等に異議あり」カテゴリの最新記事