みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

『春と修羅 第三集』昭和2年分より(前編)

2018-06-23 10:00:00 | 「賢治研究」の更なる発展のために
 前回最後に私は
 となれば、「羅須地人協会時代」の賢治が貧しい農民たちのために東奔西走したということを、『春と修羅 第三集』の昭和2年分の日付の詩篇を拠り所として言えるかどうかだ。
と述べた。
 そこで今回は、『春と修羅 第三集』の昭和2年分の日付の詩篇をまずは以下にリストアップしてみよう。
〈一〇〇一 〔プラットフォームは眩ゆくさむく〕〉
〈一〇〇三 実験室小景〉
〈一〇〇五〔鈍い月あかりの雪の上に〕〉
〈一〇〇八〔土も堀るだらう〕〉  
〈一〇一二〔甲助 今朝まだくらぁに〕〉
〈一〇一四 春〉
〈一〇一五〔バケツがのぼって〕〉
〈開墾〉
〈一〇一九 札幌市〉
〈一〇二二〔一昨年四月来たときは〕〉
〈一〇二五〔燕麦の種子をこぼせば〕〉
〈一〇二八 酒買船〉
〈一〇三〇 春の雲に関するあいまいなる議論〉
〈一〇三二〔あの大もののヨークシャ豚が〕〉
〈一〇三三 悪意〉
〈燕麦播き〉
〈一〇三七 宅地〉
〈一〇三九〔うすく濁った浅葱の水が〕〉
〈一〇四〇〔日に暈ができ〕〉
〈午〉
〈一〇四二〔同心町の夜あけがた〕〉
〈一〇四三 市場帰り〉
〈一〇四六 悍馬〉
〈一〇四八〔レアカーを引きナイフをもって〕〉
〈一〇五三〔おい けとばすな〕〉
〈一〇五六〔秘事念仏の大元締が〕〉
〈一〇五八 電車〉
〈一〇五九 開墾地検察〉 
〈一〇六六〔今日こそわたくしは〕〉
〈一〇六八〔エレキや鳥がばしゃばしゃ翔べば〕〉
〈一〇七二 県技師の雲に対するステートメント〉
〈一〇七五 囈語〉
〈一〇七六 囈語〉
〈一〇七七 金策〉
〈一〇七九 僚友〉
〈一〇八〇〔さわやかに刈られる蘆や〕〉
〈一〇八二〔あすこの田はねえ〕〉
〈一〇二〇 野の師父〉
〈一〇二一 和風は河谷いっぱいに吹く〉
〈〔一〇八八 もうはたらくな〕〉
〈一〇八九〔二時がこんなに暗いのは〕〉
〈一〇九〇〔何をやっても間に合はない〕〉
             〈『校本宮澤賢治全集第四巻』(筑摩書房)より〉

 一方で、これまた前回掲げたように、『この篇みな/疲労時及病中の心ここになき手記なり/発表すべからず』と記して賢治が封印した詩稿群、いわゆる「10番稿」のリストは以下の通りだった。
・第二集          506 〔そのとき嫁いだ妹に云ふ〕
・第二集          383 鬼言(幻聴)
・第三集 春と修羅  715   〔道べの粗朶に〕
・第三集 春と修羅  735   饗宴
・第三集 春と修羅  738   はるかな作業
・第三集 春と修羅  740   秋
・第三集 春と修羅  1015   〔バケツがのぼって〕
・第三集 春と修羅  1022   〔一昨年四月来たときは〕
・第三集 詩稿補遺  おぢいさんの顔は
・第三集 春と修羅  1025   〔燕麦の種子をこぼせば〕
・第三集 春と修羅  1033   悪意
・第三集 春と修羅  1036   燕麦播き
・第三集 春と修羅   午
・第三集 春と修羅  1048   〔レアカーを引きナイフをもって〕
・第三集 春と修羅  1066   〔今日こそわたくしは〕
・第三集 詩稿補遺  〔みんなは酸っぱい胡瓜を噛んで〕
・第三集 春と修羅  1077   金策
・第三集 春と修羅  1079   僚友
・第三集 春と修羅  1082   〔あすこの田はねえ〕
・第三集 春と修羅  730ノ2  増水
・第三集 春と修羅  1020   野の師父
・第三集 春と修羅  1021   和風は河谷いっぱいに吹く
・第三集 春と修羅  1088   〔もうはたらくな〕
・第三集 詩稿補遺  〔降る雨はふるし〕
・第三集 春と修羅   台地
・第三集 春と修羅   停留所にてスヰトンを喫す
・第三集 詩稿補遺  心象スケッチ 林中乱思
・第三集 詩稿補遺  〔鉛いろした月光のなかに〕
・文語詩未定稿    〔月光の鉛のなかに〕
・第三集 詩稿補遺  〔そもそも拙者ほんものの清教徒ならば〕
・第三集 詩稿補遺  毘沙門天の宝庫
・第三集 詩稿補遺  霰
・第三集 詩稿補遺  三月
・第三集 詩稿補遺  会見
・第三集 詩稿補遺  〔あしたはどうなるかわからないなんて〕
・第三集 詩稿補遺  保線工夫
・第三集 詩稿補遺  会食
・第三集 詩稿補遺  〔まあこのそらの雲の量と〕
・第三集 詩稿補遺  〔湯本の方の人たちも〕
・文語詩未定稿    〔馬行き人行き自転車行きて〕
・第三集 詩稿補遺  春曇吉日
・第三集 詩稿補遺  冗語
・第三集 詩稿補遺  〔もう二三べん〕
・第三集 詩稿補遺  〔馬が一疋〕
・文語詩未定稿    スタンレー探険隊に対する二人のコンゴー土人の演説
・補遺詩篇Ⅱ      〔十いくつかの夜とひる〕
               <『新校本宮澤賢治全集第十六巻(上)補遺・資料 草稿通観篇』(筑摩書房)662p~>

 次に、『春と修羅 第三集』昭和2年分の日付の詩の中から、「10番稿」に入っているものは賢治が「疲労時及病中の心ここになき手記なり/発表すべからず」として封印したものだから、考察の際の客観的な典拠としては使うわけにはいかないだろう。そこでそれら除いてみると、そのリストは以下のようになった。
《「10番稿」を除いた『春と修羅 第三集』昭和2年分日付の詩のリスト》
〈一〇〇一 〔プラットフォームは眩ゆくさむく〕〉
〈一〇〇三 実験室小景〉
〈一〇〇五〔鈍い月あかりの雪の上に〕〉
〈一〇〇八〔土も堀るだらう〕〉  
〈一〇一二〔甲助 今朝まだくらぁに〕〉
〈一〇一四 春〉
〈開墾〉
〈一〇一九 札幌市〉
〈一〇二八 酒買船〉
〈一〇三〇 春の雲に関するあいまいなる議論〉
〈一〇三二〔あの大もののヨークシャ豚が〕〉
〈一〇三七 宅地〉
〈一〇三九〔うすく濁った浅葱の水が〕〉
〈一〇四〇〔日に暈ができ〕〉
〈一〇四二〔同心町の夜あけがた〕〉
〈一〇四三 市場帰り〉
〈一〇四六 悍馬〉
〈一〇五三〔おい けとばすな〕
〈一〇五六〔秘事念仏の大元締が〕〉
〈一〇五八 電車〉
〈一〇五九 開墾地検察〉 
〈一〇六八〔エレキや鳥がばしゃばしゃ翔べば〕〉
〈一〇七二 県技師の雲に対するステートメント〉
〈一〇七五 囈語〉
〈一〇七六 囈語〉
〈一〇八〇〔さわやかに刈られる蘆や〕〉
〈一〇八九〔二時がこんなに暗いのは〕〉
〈一〇九〇〔何をやっても間に合はない〕〉

 ここで吃驚することは、私もかつては大好きだったし、一般的にも評価の高いはずのあの3作品、
・〔あすこの田はねえ〕
・野の師父
・和風は河谷いっぱいに吹く
が揃いも揃って賢治にとっては、『この篇みな/疲労時及病中の心ここになき手記なり/発表すべからず』だったのである。

 そこで次回は、なぜこれらの3作品が「10番稿」に入ったのであろうかということをまずは推考してみたい。

 続きへ
前へ 
 ”みちのくの山野草”のトップに戻る。

 賢治の甥の教え子である著者が、本当の賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、宮沢賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

〈鈴木守著、ツーワンライフ出版、定価(本体価格1,500円+税)〉
をこの度出版した。
 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付された。
 そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題の本である。

 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北上市国見山(6/22、エゾタ... | トップ | 北上市国見山(6/22、マルバ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

「賢治研究」の更なる発展のために」カテゴリの最新記事