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おわりに

2019-07-13 10:00:00 | 濡れ衣を着せられた高瀬露
〈「白花露草」(平成28年8月24日撮影、下根子桜)

おわりに
鈴木 ではこれで検証作業等は全て無事完了。そして我々は、「高瀬露は〈聖女〉の如き人だった」ということを明らかにできたと言えるし、少なくとも〈高瀬露は悪女ではなかった〉ということは「仮説検証型研究」によってバッチリ実証できた。
荒木 でもやはり、俺は正直不満を隠せないな。賢治が亡くなってから約85年を経た今でさえも、調べてみればこうやって新たな事実等を知ることができてしかもこの検証ができたというのに、なぜこのようなことが今までに賢治研究家によって為されて来なかったのだろうか、ということがだ。
吉田 まして、研究者でもない僕らがこうして〈高瀬露は悪女ではなかった〉ということを検証できたくらいなのだから、専門家であればいともたやすいはことだったはずなのにな。
鈴木 そもそも、「露は<悪女>などではない」ことは、わざわざ検証せずともそれまでに知っている事柄からだけでも常識的に判断すれば始めから明らかなこと。
吉田 実は、僕の周りの賢治研究家の中にも、『露は<悪女>なんかじゃないよ。悪いのは賢治さ』とはっきり言う人さえも居る。
荒木 だから思うんだ。従前、露を<悪女>であるとしてきたその根拠と思われる資料や証言はこうやって調べてみた結果、揃いもそろって皆危ういものばかり、そうそう皆「あやかし」ばかりであり、そんなもので一人の女性の人格を全否定し、その尊厳を貶てしまうような<悪女伝説>をでっち上げたということは犯罪行為であるとさえ言えるのではないべが、と。
鈴木 おおっ、厳しいな。
吉田 でも確かに荒木の言うとおりで、現実には捏造された〈悪女伝説〉はすっかり巷間広まってしまったし、定着してしまったのだから、やはり極めて罪深い行為だ。
荒木 納得できないんだよ。あまたいる賢治研究家たちのうちのせめて何人かが、このような<悪女伝説>がまことしやかに流布していることに対して疑念を持ったり、あるいはこれは看過できない事態だということを憂いてそのことをどうして公的に論議したりしてこなかったということがさ。
鈴木 いや公的な論議でなくてもいい、私的な論考を堂々と公にすることであってもいい。しかし、そのようなことであってさえも、今までにそれを為した賢治研究家は上田哲ただ一人だったと言っても過言でないはずだ。
荒木 逆に、「あることないこと」を、いや違うな「ないこと、ないこと」をでっちあげ、ゴシップ記事のようなレベルのものを少なからぬ「賢治研究家」が、あろうことか活字にして公にしてきた。
吉田 確かに、僕もそう思っている。明確な根拠も理由もないままに、噂話や推測を基にしてある特定の人物を誹謗中傷し、あげく〈悪女〉呼ばわりすることはもちろん絶対許されないことだと思う。まして、虚構まで弄してのそれは何をか言わんやだ。
 しかし、それに絡んだ過去の非対称性を今さら直せということもまたなかなか困難なことだ。だからそれよりは、僕らが今まで取り組んでみて明らかにできたように、露はそんな人にはあらず、ということをできるだけ多くの人に知ってもらうことがまず先決ではないのかな。それは地道なものになると思うのだが。
荒木 そうだな、かっかしていたって事態は改善されないし、それがまず俺たちの出来ることであり、為すべきことか。
鈴木 そっか、それじゃ今後は東北人の粘り強さを活かして、
(1) まずは、少なくとも露は<悪女>などではないことを我々は示せたわけだから、何はともあれ、
    早急に<悪女伝説>は破棄すべきである。
ということ多くの人たちに訴える。それは、ここまで行ってきた我々の幾つかの検証結果を説明すれば結構わかってもらえるはずだ。
(2) 次、高瀬露は聖女の如き人だったということを我々は示せたわけだが、これは「現通説」とは真逆だから、この結果を声高に言ったとしても世間はそう簡単には受け容れてくれないだろう。そこで当面は、
    高瀬露は巷間いわれているような〈悪女〉では決してなかった。
ということを可能な限り周りの人たちに訴える。それは特に、遠野時代の露のエピソードや寶閑小学校時代の露にまつわる事実を紹介すればわかってくれるはずだ。
(3) そしてそれがある程度理解が得られようになった段階で最後に、
    というよりは、実は、高瀬露は〈聖女〉の如き人だった。
と訴える。
という、ホップステップジャンプが我々のこれからの使命と任務だ、ということでどうだ。
荒木 んだな。
鈴木 どうやら、人間の評価は亡くなってから百年すれば定まるということだから、賢治の場合はそれまでまだ約15年の時間はあるのだから、焦らずにやってゆこう。まあ、約15年後となればその頃には我々はこの世にはいないだろうけどな。
吉田 なあに、天国で賢治や露の周りをうろちょろしながらその顚末を見ていようじゃないか。
荒木 俺は天国には行けんから、地獄からそれを見上げているよ。
吉田 じゃじゃ、荒木とあろうお方が殊勝なことを言うもんだ。
荒木 おれはなあ……いろいろあったからな。
 まあ何はともあれ、
    〈高瀬露は悪女ではなかった〉は妥当な真実となった。
ということであり、
    〈高瀬露は悪女ではなかった〉は、今後この反例が見つからない限りという、限定付きの「真実」となった。
ということを確信できた人間がこの世の中に一人増えたということは確かだってことだよ。
吉田 いやいや待て待て、少なくともあと二人は増えたとしてくれよ。
鈴木 われわれ三人組のわずか三人がか。
荒木 いやいや、それだけでもたいしたもんだよ。 
             〔完〕

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月231日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
 そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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