みちのくの山野草

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大正15年の紫波郡の大旱害の惨状と支援

2019-08-19 10:00:00 | 子どもたちに嘘の賢治はもう教えたくない
《ルリソウ》(平成31年5月25日撮影)
〈子どもたちに嘘の賢治はもう教えたくない〉

 さて、生前全国的にはほぼ無名だった宮澤賢治及びその作品を初めて全国規模で世に知らしめた最大の功労者はと言えば、今では殆ど忘れ去られてしまっている松田甚次郎だ。まさに「賢治精神」を実践したとも言える彼は、その実践報告書を『土に叫ぶ』と題して昭和13年に出版すると一躍大ベストセラーに、それに続いて翌年に松田甚次郎編『宮澤賢治名作選』を出版すると、これまたロングセラーになった事が切っ掛けだった。その『土に叫ぶ』の巻頭を甚次郎は次のように書き始めている。
    一 恩師宮澤賢治先生
 先生の訓へ 昭和二年三月盛岡高農を卒業して歸鄕する喜びにひたつてゐる頃、每日の新聞は、旱魃に苦悶する赤石村のことを書き立てゝゐた。或る日私は友人と二人で、この村の子供達をなぐさめようと、南部せんべいを一杯買ひ込んで、この村を見舞つた。道々會ふ子供に與へていつた。その日の午後、御禮と御暇乞ひに恩師宮澤賢治先生をお宅に訪問した。
             〈『土に叫ぶ』(松田甚次郎著、羽田書店)1p〉
 そこで私は思った、この旱魃による被害はさぞかし相当深刻なものであったであろうと。早速、大正15年の旱害に関する新聞報道を実際に調べてみた。するとやはり、この年の『岩手日報』には早い時点から旱魃に関する報道が目立っていて、12月に入ると、赤石村を始めとする紫波郡の旱魃による惨状がますます明らかとなり、
◇大正15年12月7日付『岩手日報』には、
 村の子供達にやつて下さい 紫波の旱害罹災地へ人情味豐かな贈物
という見出しの、仙台市の女生徒からの援助の記事や、
◇同年12月15日付『岩手日報』には、
 赤石村民に同情集まる 東京の小學生からやさしい寄附
本年未曾有の旱害に遭遇した紫波郡赤石村地方の農民は日を経るに随ひ生活のどん底におちいつてゐるがその後各地方からぞくぞく同情あつまり世の情に罹災者はいづれも感涙してゐる數日前東京浅草区森下町濟美小學校高等二年生高井政五郎(一四)君から河村赤石小學校長宛一通の書面が到達した文面に依ると
わたし達のお友だちが今年お米が取れぬのでこまってゐることをお母から聞きました、わたし達の學校で今度修學旅行をするのでしたがわたしは行けなかったので、お小使の内から僅か三円だけお送り致します、不幸な人々のため、少しでも爲になつたらわたしの幸福です
と涙ぐましいほど眞心をこめた手紙だった。
というような記事が連日のように載っていた。地元からはもちろんのこと、陸続と救援の手が遠く東京の小学生からのものも含め、他県等からも「未曾有の旱害に遭遇した紫波郡赤石村地方」へ差し伸べられていたということがよく分かる。
 ちなみに、
◇大正15年12月22日(水)付『岩手日報』には、

米の御飯をくはぬ赤石の小學生
 大根めしをとる哀れな人たち
という見出しの記事が載っていたから、甚次郎が(本人の『大正15年の日記』によれば、赤石村慰問日は)同年12月25日(土)に赤石村を慰問したのはおそらくこの新聞報道を見たからに違いない。
 さらに、この旱害の惨状等は年が明けて昭和2年になってからも連日のように報道されていて、例えば
◇昭和2年1月9日付『岩手日報』は、

というように、トップ一面をほぼ使っての大旱害報道をしていて、その惨状が如実に伝わるものであった。しかもその悲惨さは、紫波郡の赤石村だけにとどまらず、同郡の不動村、志和村等も同様であることが判るものだった。

 つまるところ、紫波郡の惨状を知って、地元のみならず隣県宮城県や東京等からも陸続と支援の手が差し伸べられていたということであり、そのうちの一人が松田甚次郎であったということになろう。となれば、地元の賢治や羅須地人協会の会員はこの時の大干魃被害の際にどのような支援活動を繰り広げたのだろうか。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月28日付『岩手日報』一面〉
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 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
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 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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