みちのくの山野草

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「賢治からのメッセージ」?

2019-02-17 12:00:00 | 濡れ衣を着せられた高瀬露
《『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲・鈴木守共著、友藍書房)の表紙》

鈴木 実はある時、花巻が地元であるある先輩から、『花巻では、賢治の伝記について言及することは歓迎されないことであり、不可侵の対象なのだ』と直接言われた。花巻出身でない私は、何となくそのことは感じてはいたのだが、やはりそういうことだったんだとショックだったよ。
吉田 確かにその実態は否定しきれないな。でもそれは、逆に言えばそろそろ総体的に宮澤賢治を見直すべき時機がやって来ているということだよ。
荒木 つまり、この状態が今後も続くことは大いに問題だということだべ。とりわけ、この<悪女伝説>がこのまま永遠に語り継がれたり、あげく活字となって再生産が続けられたりするということだけは絶対許されないことだ。百歩譲って、仮に賢治が「聖人君子」にされることはあったとしても、そのあおりを受けて、全くそうとは言えない一人の女性がとんでもない<悪女>にでっち上げられていることは許されるべきことではない。
吉田 ところが現実には昨今でも相変わらずその伝説の再生産が「賢治研究家」によって為されている。そして、ほとんどの賢治研究家はこの重大な誤謬・瑕疵をただただ傍観・座視、あるいは頬被りしているだけだ。
 だから当然、このような状態を天上の賢治は憂えているはずだ。賢治は露からいろいろと教わったり世話になったりしていたのだから、少なくともある一時期、二人の間にはよい関係が続いていたことは明らか。そのような女性がこのような扱いを受け続けていることに対してさぞかし賢治は忸怩たる想いでいると思う。
荒木 然り! このような状態のままに今まで放置されてきたことこそが、宮澤賢治生誕百年も疾うに過ぎた平成19年そして平成22年になっても相変わらず先のような再生産<*1>の著作をそれぞれ世に出さしめたとも言えるべ。
吉田 だから、著名な賢治研究家の誰かがこの現状を改めてる嚆矢をもうそろそろ放ってほしいものだ。人間亡くなって百年経てば評価が定まるということだから、もしそうであったとするならば、賢治を見直すべき期間はもはや15年しかなくなったと言える。このまま放っておくととんでもないことになってしまう。それは、実は賢治を貶めているのと同じことになるからだ。
荒木 うっ? なぜ貶めることになるんだ。
吉田 そりゃあ、巷間言われてる「賢治像」はあまりにも真実からほど遠いからだよ。そもそも「真実は隠せない」はずで、真実は隠すべきものでもなければ、何時までも隠しおおせるものでもない。
荒木 そりぁそうだよな。「創られた賢治」なんて天上の賢治が到底喜ぶはずないか。
鈴木 それに関してなんだが、以前に引用した
 二階には先客がひとりおりました。その先客は、Tさんという婦人の客でした。そこで四人で、レコードを聞きました。リムスキー・コルサコフや、チャイコフスキーの曲をかけますと、ロシア人は、「おお、国の人――」
と、とても感動しました。レコードが終わると、Tさんがオルガンをひいて、ロシア人はハミングで讃美歌を歌いました。メロデーとオルガンがよく合うその不思議な調べを兄と私は、じっと聞いていました。
             <『宮沢賢治の肖像』(森荘已池著、津軽書房)236p~より>
という清六が伝えるエピソードは、実は、一刻も早く露を救い出してほしいという天上の賢治からのメッセージではなかろうかと今頃になってやっと気付いた。
荒木 そっか、
 こんなに良い関係が私(賢治)と露さんとの間にはあったのだし、それを弟の清六もちゃんと証言しているじゃないか。なのに、なんでそのような露さんのことをみんなは一方的に悪し様に言うのだ。
と賢治は俺たちに諭そうとしている、そのためのこれがメッセージというわけか。
吉田 おおいいね。この賢治からのメッセージを正しく受けとめ、謂われ無き中傷を受け続けてきてしかもいまだ受け続けている露のことを一刻も早く救い出すような賢治研究家が、上田哲の遺志を継ぐ賢治伝記研究家が早く出でよ、と賢治は希願しているというわけだ。

<*1:註> それぞれ次のとおり。
・感情をむき出しにし、おせっかいと言えるほど積極的に賢治を求めた高瀬露について、賢治研究者や伝記作者たちは手きびしい言及を多く残している。失恋後は賢治の悪口を言って回ったひどい女、ひとり相撲の恋愛を認識できなかったバカ女、感情をあらわにし過ぎた異常者、勘違いおせっかい女……。〈『賢治文学「呪い」の構造』(平成19年、59p)〉
・無邪気なまでに熱情が解放されていた。露は賢治がまだ床の中にいる早朝にもやってきた。夜分にも来た。一日に何度も来ることがあった。露の行動は今風にいえば、ややストーカー性を帯びてきたといってもよい。〈『宮澤賢治と幻の恋人』(平成22年、145p)〉

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月28日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
 そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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