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〈「白花露草」(平成28年8月24日撮影、下根子桜)
〈仮説〉の反例現る?
鈴木 もちろんこの「昭和7年」が最後に残された年だったので、結局最後までこの〈仮説:高瀬露は悪女ではなかった〉は検証に耐え続けてくれたということになる。したがって、高瀬露の全生涯にわたってこの〈仮説〉は成り立つことになった。
荒木 いやちょと待てよ、その他にもまだいくつか検討すべき資料や証言があるだろうに。
鈴木 それはないわけではないが、ここまでの分で私の知る限りの「高瀬露関連」の証言及び資料等による検証作業は実質終了したと思っている。なぜなら、残っているものの全ては今まで検討してきた森の「昭和六年七月七日の日記」等の引用やその孫引きと言えるからだ。新たなことが述べられている論考や知られていなかった証言などが紹介されているものは私の管見のゆえか、他にはまずないと認識している。
吉田 基本的には僕もそうは思うのだが、ただ一つだけ気になっているものが残っている。ほら鈴木、あれがあるじゃないか。例の〈「押しかけ女房」的な痴態にも及んだ「悪女」〉が。
鈴木 あっ…、そうか、そうだった。
荒木 なんだ、その〈「押しかけ女房」的な痴態云々〉ってのは?
吉田 それは、上田が例の論文の中で、
高瀬露の場合は、小倉豊文のことばを借りれば〈「押しかけ女房」的な痴態にも及んだ「悪女」〉とされているのである。
<『七尾論叢 第11号』(七尾短期大学)89pより>と述べていることなんだ。しかも、他ならぬ「小倉豊文のことば」であればその信憑性は高いぞ。
荒木 やべぇ。実際にもしそのようなことが本当にあったとすれば露にとってはかなり不利なことになるぞ。もしかすると、折角いままで耐え抜いてきた〈仮説:高瀬露は悪女ではなかった〉が、この小倉の一言でぐらついてしまうのか。
鈴木 そのことは私も気になっていたので、以前、そのことが述べられているであろうはずの小倉の著書『宮澤賢治の手帳 研究』『「雨ニモマケズ手帳」新考』『解説 復元版 宮澤賢治手帳』には目を通してみたのだが、見つからなかったから諦めていた。
ただし、その中の一冊に似たような事は述べられていて、「高橋氏の話によれば」と前置きした後で、
高瀬さんの強引な単独訪問はその後もしげしげ続いたが、
とか、 関徳弥氏夫人に、賢治を悪しざまに告げ口した。その前に賢治は「自分の悪口をいいに来る者があるだろう」と、関氏と同夫人に話に来たという。このことは関氏と同夫人から私も聞いている。
<『解説 復元版 宮澤賢治手帳』(小倉著、筑摩書房)47p~より>というようなことは記述されていた。
荒木 するとますますやばいぞ。「(露の)強引な単独訪問はその後もしげしげ続いた」り、「賢治を悪しざまに告げ口した」りしたというんだべ。もしそのとおりだったとすれば、これらは〈「押しかけ女房」的な痴態にも及んだ〉と似たり寄ったりで、どっちにしても、このことが本当であれば露のこのような行為は〈仮説:高瀬露は悪女ではなかった〉の反例となるおそれがあるべ……。
鈴木 私もちょっと油断していた。以前話し合った「全てが皆繋がった」と同じことを言っているのかなと思ってあまり深刻に受け止めていなかったが、改めて吉田に指摘されて自分も少し甘かったと今思ってる。
荒木 いよいよ足下に火が付いてきた感じだ。最後にどんでん返しを喰らうのか……。
吉田 すまん、折角ここまで頑張ってきたのに。変なことを言ってしまって。
荒木 いや、それはない。大事なことは何が真実かだ。もしそうであったとすれば、今までのことは徒労に終わってしまうかもしれんが、また一つ真実が明らかになるのだからそれはそれで甘受する。
鈴木 おっ、格好いいことを言ういうじゃないか。
荒木 実は、ちょっと強がってみた。
吉田 しかし、ここまでこの〈仮説〉はどんなことがあっても検証に耐え続けてきたのだから、最後の土壇場でどんでん返しはなかろう。少なくとも、僕らがここまで調べてみた限りでは露はそんなことをするような人ではないということを確信できているのだから、ここで諦めてどうする。
荒木 そうだよな……。よしっ、ここはあまり悲観的にならずに、露のことを信じて闘い続けるべ。
鈴木 それじゃこうしよう。ここは一度冷静になって小倉の先ほどの著書等を読み直して、一週間後にまた集まって検討してみようじゃないか。
荒木 よし、ここは東北人の粘り強さを発揮してみるべが。
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さて、二人が帰ってから少し心を落ち着けて小倉の本を読み直してみた。すると先ず気になったのが次の一文だった。 私は本書初版で森・関両氏の著によって以上の件の大略をこの詩のテーマと推考して述べたが、私の行文が不備だった為に高橋氏から批難を受けたので、その後手帳複製版解説では一応全面的に取消した。
<『「雨ニモマケズ手帳」新考』(小倉豊文著、東京創元社)115pより>かつて読んだ時には軽く読み流していたのだろう。余り気にも留めていなかったのだが、改めて読み直してみたならば、
・行文が不備だった
・為に高橋氏から批難を受けた
・その後手帳複製版解説では一応全面的に取消した。
とは一体どういうことなんだ、と一気に疑問が膨らんだ。・為に高橋氏から批難を受けた
・その後手帳複製版解説では一応全面的に取消した。
そこで、まずは小倉の「雨ニモマケズ手帳」に関する著書を並べてみると次のようになる。
(1)『宮澤賢治の手帳 研究』(創元社、昭和27年)
(2)『宮沢賢治『手帳』解説』(生活文化社、昭和42年)
(3)『「雨ニモマケズ手帳」新考』(東京創元社、昭和53年)
(4)『解説 復元版 宮澤賢治手帳』(筑摩書房、昭和58年)
さて、では小倉が言うところの「本書初版」とは何を指すのかだが、それは〝(3)〟の初版のことを指しているのだから、当然〝(1)『宮澤賢治の手帳 研究』〟のことを指している。そして、小倉はその〝(1)『宮澤賢治の手帳 研究』〟に載せた「大略」が不備だったので「手帳複製版解説」では「全面的に取消した」ということだから、この「手帳複製版解説」とは〝(2)〟を指していることが判る。(2)『宮沢賢治『手帳』解説』(生活文化社、昭和42年)
(3)『「雨ニモマケズ手帳」新考』(東京創元社、昭和53年)
(4)『解説 復元版 宮澤賢治手帳』(筑摩書房、昭和58年)
そこで、これらの中で私が持っていないものは〝(2)『宮沢賢治『手帳』解説』〟なので、これを見てみる必要があると思ってあちこち探してみたがなかなか見つからなかった。が、やっとのことでそれをある場所で見ることができた。
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賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』
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〈平成30年6月231日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました。
そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
電話 0198-24-9813
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