みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

2980 賢治、喜善、中館武左衛門(#3) 

2012-10-31 08:00:00 | 賢治渉猟
 では今回は「第二回は五月二〇日から二八日まででした」という、花巻で開かれた第二回目エスペラント講習会期間中の佐々木喜善の日記を見てみよう。
  五月二十日 晴
 二時半に田中さんと共に花巻に立つ。大和さんに落着く。夜の森さんの座談会に呼ぶために島君と明治屋へ行く。明治屋で夕食をすまし、一時半まで話して雨中明治屋へ行つてとまる。此の人たちはとても親切である。
  五月二十一日 晴
 森さんの話で、菊池盛一郎氏から推薦で支部を設くるのであるが、永作に金がなく参綾出来ぬことで田中さんが出してくれるといふのである。
 光広も本部へやりたいと思ふことを森さんが受け合ふ、考へてよいことである。
 鈴木良ちやんに逢ふ。なかなかの盛会であった。
 夜、座談会に島君と明治屋が来た。
  五月二十二日 晴
 朝明治屋と話し、午前十時頃宮沢君のところへ行く。同君とてもよくなつてゐる。長い時間話し昼食を御馳走になる。それから大和さんにかへり話し、四時十五分に立つ。停車場で桜井村長と阿部力太郎君に会ふ。
 夜エスペラントの講習会を倶楽部に開く。十四、五人であり、花巻とは比較にならぬほどおとなしかつた。いい気持であつた。寝たのが十二時頃、永作と妻に手紙を出した。
  五月二十三日 晴
 体を健康にするためにいろいろな運動をはじめた。ややよいやうである。ただ灸を焼いたために水ぶくれが出来ていたくて閉口である。
 夜の講義は初日より油がのらなかつた。
  五月二十四日 晴
 今夜でエスペラント講習会が了つた。改めて黒沢尻エスペラント研究会をつくり、茶話会を催した。散会したのは十一時半頃で雑談した講習生が三人ばかりついて来て話をした。
 隣家の長谷川さんといふ未亡人の家の月並祭なので行つて天津祝詞を奏上した。玉串料二十銭献上した。
  五月二十五日 晴
 午後二時黒沢尻を発つて花巻へ向つた。宿の石川さんと一緒であつた。停車場で石川の金ちやんが三円のつつみをよこしたのでありがたく頂戴した。
 花巻に着いてから宮沢君に行つて話をした。仏教の奥義をきいて来る。夜三人の講習生のために三時間ばかりやつた。
 五月二十六日 晴
 中館さんのところへ行つて見る。宮沢君のところに行かうと思つたが止した。講習生の別の一人が来た。心持ちよく稽古が出来た。
 照井君のところに6号金ペン、パイロツトをあづかつて来る。
  五月二十七日 晴
 風吹き、宮沢さんに行き六時間ばかり居る。夕方かへる。今夜の講習で今度は終わるのである。十二時半まで話す。
  五月二十八日 晴
 八時五十分で花巻を立ち仙台へかへる。大和さんと一緒である。…(略)…
            <『佐々木喜善全集 Ⅳ』(遠野市博物館)550p~より>
 残念ながら〝中館〟の下の方の名はわからなかった。そして前回、佐々木喜善の日記に出てきたのは〝中舘〟だったのにこちらは〝中館〟になっている。さてはて、佐々木喜善は日記にどちらの文字で書いていたのであろうか。
 いずれ、残念ながら〝中館〟(もしくは〝中舘〟)の下の方の名はわからなかった。当然、中館武左衛門かどうかもいまの時点では不明である。
 ところで、佐々木喜善の日記によく出てきている明治屋とはどこのことであろうか。どこかでこの店名を聞いたことがある。なんとなく関登久也の店だったような気がする。
 そこで、私は花巻は上町にある「岩田屋(かつての岩田呉服店)」を訪れてお訊き聞きしたところ、上品な女店員さんが教えてくださった。
 『たしかに「明治屋」さんは岩田徳弥さんのお店でした』
と。
 そこで、『拡がりゆく賢治宇宙』の中に載っている「大正期の花巻地図」
【「大正期の花巻地図」抜粋】

            <『拡がりゆく賢治宇宙』(宮沢賢治イーハトーブ館)46pより>
で探してみたならばたしかにその店名の記載があった。ちなみに⑩がそれである。そしてその左隣にはやや不鮮明だが
  ●(関徳弥)
と書かれていることがわかる。
 ということは、この講習会の会場は関登久也が経営していた自分の店「明治屋」であったと考えてよさそうだ。すると、4月18日の日記に出ている〝隣家の呉服屋の主人〟とは、「岩田呉服店(岩田洋品店=⑨)」の当時の主人岩田豊蔵のことだったかも知れない、等と想像をめぐらしてみた。

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