気の向くままに

山、花、人生を讃える

木村秋則さんの話

2009年10月13日 | その他
来年は名古屋で「生物多様性条約、第10回締約国会議」、つまり「COP10」が開催されます。
昨日はその1年前記念事業として 生物多様性フォーラムがセンチュリーフォールで開催されました。その記念講演で「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則さんの講演があり、抽選で当たっていたので家内と出かけてきました。(9月6日の記事で教化部長の話として出ています)

アナウンサーのインタビューに答えるという対談形式でしたが、木村さんはいかにも農園経営者らしい、気取らない楽しそうな笑顔で話をされるのが印象的でした。

木村さんは機械関係の仕事をしていて農業をするつもりはなかったが、結婚した奥さんが農業をしていたので農業をすることになった。それで山を開墾して、最初にトウモロコシを始めた。すると、そのトウモロコシが何者かに荒らされ、或る日その現場を突きとめた。犯人はタヌキであった。棒で懲らしめてやろうとしたら、親ダヌキが出て来て木村さんの前に立ちふさがって逃げようとしない。木村さんはしばらくどうしようかと迷っていたが、結局、黙って逃してやったとのこと。

タヌキは臆病と聞いていたので、懲らしめてやろうと棒をもった人間に、子を庇うために一歩も引きさがらなかったタヌキの話は、とても印象的でした。それを見逃してやった木村さん、そしてタヌキ、最初から素晴らしい話が出て、話の中に引き込まれて行きました。

それからは、そのタヌキの通り道に、自分も歯抜けだが、市場には出せない歯抜けのトウモロコシをタヌキの餌として置いてやるようにした。それ以後、それ以外のトウモロコシは一切荒らされることが無くなった、と話されていました。そして、考えて見ればもともとは、そこはタヌキの縄張りだったんですね。それを私たちが開墾して奪ってしまったから、悪いのはこちらの方なんですよね、とも言っておられました。

リンゴの方では、無農薬、そして化学肥料を使わないようにして8年も収穫が全くなかったとのこと。
それでも、あきらめず頑張りとおして遂に成功させたわけですが、その間にいろいろなことを学ばせてもらいましたとのこと。

その一つ、スライドを映しながらの説明でしたが、明らかに虫食いのような葉っぱを映し出し、これは誰が見ても虫食いのように見えるが、実は虫食いではなく、葉っぱが病気にかかり、その病気がほかの葉に移らないように、リンゴの木自身がこのように自衛処置をしている、ということでした。

また、ダニを食べる「ダニ喰いダニ」というダニがいるのですが、今までこういうダニを食べてくれるダニを農薬で殺してしまっていたんですね、とも言っておられました。

50分という、そう長い時間ではではなかったのですが、深みのある話がいろいろ聞けました。
最後の方には、「リンゴの実をならせるのは自分じゃない。リンゴの実をならせるのはリンゴの木だ。自分はその手伝いをしているだけだ。そんな当たり前のことがやっとわかりました」と言っておられました。

当たり前と言えば当たり前ですが、その当たり前のことを、全身で腹の底から実感されたのでしょうね。
単に頭だけで知っているのと、腹の底から体で解ることとの違いを、実感させられる話でした。

帰りには、歩いて500メートルほどの距離にある「白鳥庭園」を散策。
20年ぐらい前に開催された「名古屋デザイン博」の会場となったところで、それ以来ですが、いい話が聞けた後での静かな日本庭園散策は、満たされた気分の気持のいいものでした。

   ☆       ☆       ☆ 

下の写真は、前日の11日に写したもの。
雲の下の光の縞模様が神秘的で、時間とともに火炎のごとく赤く染まっていき、まるで火が燃えているかのようでした。




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