新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
出かけるときはカメラ連れ。
目標は毎日1記事です。

ミヤマナラ:深山楢(雪山を引き立たせる紅葉)

2006-10-14 06:23:52 | 植物観察1日1題
八方尾根の黒菱平でリフトを乗り継ぐあたりからは、見事に紅葉したミヤマナラ:深山楢(ブナ科コナラ属)越しに、新雪の白馬鑓ヶ岳が輝いています。尖った白馬鑓の頂上からから左へなだらかな稜線が続き、左端で天狗の大下りから不帰険の難所へと落ち込んでゆきます。
ミヤマナラは多雪地の斜面などに生え、幹は斜面を這うようにのび低木状になります。葉はミズナラより小さく縁に粗い鋸歯があり、果実も小ぶりです。
ここ八方尾根は地質的に特異な場所で、黒小屋(1680m)あたりから八方池上方の下の樺(2130m)までは蛇紋岩地帯で大きい樹木は育たず草原または低木林となっており、本来標高2500m以上に生育する植物が下降していて高山植物の宝庫になっています。
蛇紋岩が途切れる2130mより上になると標高が高くなるにもかかわらずダケカンバ林が現れるという植生相の逆転が見られます。
四方八方が見渡せることから八方尾根の名がついたというこの尾根の魅力は蛇紋岩という地質によるところが大きいのです。

三段紅葉(初冠雪の白馬三山) 

2006-10-13 06:24:57 | 植物観察1日1題
10月9日、白馬八方尾根に登りました。
前2日は台風崩れの低気圧で猛吹雪となり2名の遭難が伝えられた白馬岳は嘘のように晴れ上がり、まぶしいくらいの純白の初冠雪で輝いていました。
積雪は標高2060mの八方池で20cmもあり、辺りの紅葉と絶妙のコントラストをなしています。
ガイドさんによると、初冠雪がこれだけ多く、またこれだけきれいに晴れ上がるのは10年に一回あるかなしかとのこと、この日にめぐり合えた幸運に感謝しつつ絶景に飽くことなく見とれていました。
世に言う三段紅葉とは、山頂の雪、中腹の紅葉、麓の緑を同時に見るというのが普通ですが、空の青さ、山頂の雪、紅葉の三段を指していってもよいそうです。この日の白馬は、麓から見ればさしずめ四段紅葉ということになります。
夏山を彩った高山植物たちもおおくは霜枯れてすっかり冬支度です。むかごめもこの日ばかりは、足元よりも連なる銀嶺を見上げるばかりでした。(ということで久しぶりに植物から離れた日記になりました)
写真は八方池から見る白馬三山、左から白馬鑓ケ岳(2903m)、杓子岳(2812m)、白馬岳(2932m)です。
フォトアルバムもご覧ください。

ジャコウソウ:麝香草(貴船の花Ⅳ)

2006-10-06 06:24:37 | 植物観察1日1題
貴船から鞍馬へ抜ける入り口鞍馬寺の西門のすぐ側に咲いていたのがジャコウソウ:麝香草(シソ科ジャコウソウ属)です。
山の谷間に生える日本固有種で、高さ60~100cmの多年草です。対生する葉は長楕円形で長さ10~20cm、粗い鋸歯があります。花は9~10月葉腋に出る短い柄の先に2~3個ずつ、1方向に向けて開き、花冠は淡紅色筒形で長さ4~4.5cmあります。
帰って図鑑を当たると、和名は茎葉をゆすると麝香のようによい香りいがすることから来ているとありました。写真だけ撮って香りを楽しまなかったのが心残りです。
ここで入山料2百円也を払い、鞍馬への登りにかかりましたが、何十年前とは違い、いやでも足の衰えを自覚させられる羽目になりました。
(お断り:しばらく留守をしますので明7日より12日まで休載します)

シュウメイギク:秋明菊(貴船の花Ⅲ)

2006-10-05 07:12:32 | 植物観察1日1題
夏の間川床でにぎわった貴船の茶店も今は静けさを取り戻しています。
ちょうど茶店の門脇にシュウメイギク:秋明菊(キンポウゲ科イチリンソウ属またはアネモネ属)が咲いていました。ここ貴船に多かったのでキブネギク(貴船菊)の名もあるこの草は、古い時代に中国から入ってきたと考えられている多年草で、庭などに植えられていますが、野生状態になっているのもよく見られます。
高さは50~80cm、根生葉は3出複葉、茎葉は2~3個ほど輪生し上部の方ほど小さくなります。
9~10月に咲く花は直径約5cmで、花弁のように見えるのは萼片で20~30個あります。雄蕊は多数で葯は黄色、雌蕊も多数で球状に集まります。普通果実はできず地下匐枝で増えます。
菊の花に似ていますが、キンポウゲ科でアネモネなどと同じ仲間です。
白色や一重に見えるものなど園芸品種も多く栽培されています。
貴船の宿に貴船菊、取り合わせはよいのですが、欲を言えば、園芸種ではなく赤紫色の萼片の多い原種であればもっとよかったのにと少し残念です。


ノブキ:野蕗(貴船の花Ⅱ)

2006-10-04 06:57:02 | 植物観察1日1題
ノブキ:野蕗(キク科ノブキ属)が実をつけていました。
8月5日の記事8月5日の記事“果実の形をにらんだ花” 紹介した、茎の上部についていた白い小さな頭花が、今独特の形をした実になっているのです。
果実はそう果で放射状に並んで冠毛がなく、先端の腺体が粘って衣服などにつき遠くへ運ばれます。花びらのように並んだ果実はそれだけでひとつの造形となっています。
ノブキの花と果実を見比べると、花のときからこの実の形になる準備がされているようで、思わず納得という感じです。

スズムシバナ:鈴虫花(貴船の花Ⅰ)

2006-10-03 07:18:06 | 植物観察1日1題
洛北貴船から鞍馬へと歩いてきました。
貴船口駅から貴船川沿いの道筋でいろいろな草花に出会えました。
スズムシバナ:鈴虫花(キツネノマゴ科イセハナビ属)は、スズムシソウ(鈴虫草)ともいわれ、山地の木陰に生える多年草です。茎は四角形でまばらに分枝し高さ40~80cmになります。9~10月上部の葉のつけ根に淡紫色の花を数個ずつつけます。花は長さ3cmほどの太い筒状で、先は5つに切れ込み中に2個ずつ長さの違う雄蕊が4本あります。花は一日花で、朝開いて夕方には散ってしまいます。
手元の図鑑では、名前の由来は不明としていますが、この花のをこの時期この地で見ていると、ごく常識的に鈴虫の鳴く頃咲くからといってもおかしくはない感じです。

ヤブミョウガ:藪茗荷(香りなき茗荷)

2006-10-02 06:20:47 | 植物観察1日1題
生駒山脈の室池周辺の木陰にヤブミョウガ:藪茗荷(ツユクサ科ヤブミョウガ属)が一面に咲いています。早いところでは7月ごろから花を見かけていましたし、この地区でもすでに黒い実をつけている一角があったので、ずいぶん花期にばらつきがある感じです。
やぶや林の木陰などに生える多年草で、葉の感じがミョウガに似ていることからこの名がありますが、ミョウガはショウガ科であるのに対し、ヤブミョウガはツユクサ科ですから両者は遠い関係ですし、こちらには香気はありません。
高さは50~100cm、葉は6~7個が茎の中ほどに集まって互生し、長さ20~30cmの細長い楕円形です。表面は光沢があって触るとざらつきます。
8~9月茎の上部に直径1cmほどの白い小さい花を多数開きます。同株に両性と雄性があり、両性花では雄蕊は短く、雄性花では大きくなります。果実は直径約5mmで藍色に熟します。

ミョウガ:茗荷(食せずとも物忘れの歳)

2006-10-01 07:22:55 | 植物観察1日1題
旅籠の亭主が、客の財布を置き忘れさせようとして茗荷を食べさせたのはよいが、己も食べたので翌朝宿賃をもらうのを忘れたという笑い話は、仏教説話が下地になっているようです。
釈迦の弟子に物忘れのひどい男がいましたが、生真面目なところがあり人に馬鹿にされながらも釈迦によく仕えました。釈迦はこれを嘉し、1本の箒を与えます。彼は毎日枯葉を掃除しますがそのたびに秋風に散らされてしまいます。しかし懲りずに黙々と何日も繰り返すうちにやがて悟りを開き高徳の僧になります。死後、彼の墓石の下から生え出したのが彼の霊である茗荷だというのです。ミョウガ:茗荷(ショウガ科ショウガ属)は日本には古い時代から中国から入り、今では栽培のほかあちこちの木陰などに野生化している多年草です。高さ40~100m、独特の芳香があります。
若芽とともに食用にされるのは花穂です。花期は7~9月、地中の根茎から長さ5cmほどの花穂を出します。花穂は重なり合った緑色の苞葉に包まれ、その間から淡黄色の一日花を次々に咲かせます。時には液果を生じるとありますが見たことはありません。
ミョウガ好きの私は裏庭に植えて毎年楽しんでいます。我が家のミョウガは、毎年店頭に出回るよりなぜか一月以上も遅く今出盛りです。づんぐり形で青黒く不恰好ですが、もぎたてのシャキシャキした香味はまた格別です。輪切りにすると苞葉に包まれた花芽がきれいな断面模様を作っています。