ヌバタマ:射干玉(ぬばたまの黒髪、今何処)2006.12.12
「居明かして君をば待たむぬばたまのわが黒髪に霜は降るとも」(万葉集巻2-89)
ぬばたま”は万葉集の中でも“あしびきの”に続いて第2番目に多用されている黒、夜、暗などにかかる枕詞です。
ぬばたまはまたヒオウギ:檜扇(アヤメ科ヒオウギ属)〈05.8.5日記事)の黒くて丸い種子のことを指していることもよく知られているところです。
ただ最初からぬばたまがヒオウギの種子を指す言葉であったのではなく、真珠を白玉というように、“ぬばたま”も本来黒い玉を意味する一般的な言葉だったといいます。ぬばたまという言葉が先にあって、やがてそれがヒオウギの黒い種子を指すようになったというのです。
万葉集ではヒオウギを烏扇、野羽(ぬば)といっており、この種子のことを野干玉、夜干玉と書いて当時すでにぬばたまと呼んでいたのも確かなようです。
ぬばたまの語を用いた万葉集の歌79首のうち、黒髪にかけた歌を数えると16首もありました。当今の茶髪全盛を見て万葉人なら何と詠うのでしょうか。