邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「兵隊やくざ」

2005年07月06日 | ★痛快!な映画
ソ連との国境に近い
極寒の満州孫呉に駐屯する関東陸軍。
有田上等兵(田村高廣)は
初年兵の大宮(勝新太郎)というやっかいものの指導を任される。

田村高廣と勝新太郎という
名優二人がコンビを組む!のだから
面白くないわけがないのであります!

暴力シーンは多いが陰惨にならず。

「なんでそこまでやるの?」と思うほど
有田は大宮の面倒をみる。
上官からかばい、殴られ、それでもかばう。
大宮も有田には従順に従う。

物語が進むにつれ、有田の気持ちが
だんだん理解できるようになってくる。

有田は軍隊が大嫌いで
除隊することだけを希望に耐える日々だった。

やくざ上がりで無鉄砲な大宮が行くところ、怪我人続出。
義理人情に厚いが直情径行で上官にもたてつき大暴れ。

有田に出来ないことを大宮がやり、
大宮にないものが有田にはある。
これ以上はないくらい
凹凸ぴったりはまってしまったんですね。

この二人を見ているだけで
スカッとしてくる。


脇も役者がそろっている。
気がいい女(淡路恵子)との
明日をも知れぬ結びつきは泣かせる。

内地から慰問に来る浪曲師の師匠に山茶花究。
勝新も鼻歌でうなるシーンがあるが
ものすごい声量と絶妙な節回しに聞き惚れた!
ちらりと現れる憲兵に成田三樹夫。

「軍隊に入って三年、殴られたことはあっても殴ったことは一度もない!」
知的でどんな場合でも毅然としている有田上等兵。

「俺は上等兵殿と離れたくないんだ。」
化け物のように腕っ節が強く、
時に子犬のように可愛らしい、大宮。

極限状態で出会った
運命の二人!

名演に酔い、
爽快なラストシーンには
思わず拍手を送りたくなった!

これが大ヒット。シリーズ化するんですね。

1965年 増村保造監督作品  脚本 菊島隆三

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「網走番外地」

2005年07月05日 | ★ハードボイルドな映画
極寒の地、網走に降り立った男たち。
その両腕にはガッチャン!と
手錠がはめられていた。

高倉健、田中邦衛、南原宏治、待田京介、嵐寛寿郎・・

このメンツ!
登場場面がいい。
それぞれの顔をアップで抜く、
「らしい」登場の仕方でワクワクする。

ここから一瞬たりとも退屈させない、
男たちの世界が繰り広げられる。

雑魚寝状態の雑居房には
古参の牢名主(安部徹)がのさばっていた。

何をやって入ってきたか、刑期は何年かが自己紹介だ。
ひとりひとり名乗っていくが
なぜか最年長のアラカンだけは口をつぐんでいる。

その素性が明らかになる大見せ場があるのだが・・・
それはあ・と・の・お・楽しみ!

アラカン凄い!

高倉健は親身になって面倒を見てくれている保護司(丹波哲郎)にも
心配をかける「馬鹿な」やつ。

時々不幸な生い立ちが追憶形式ではさまれ、哀れを誘う。
だけどヤッパリ馬鹿なやつ。

シリアスなドラマなのだけど、
深刻なテーマをどこかユーモラスに描いている。

高倉健が歌う主題歌「網走番外地」がずんと響く。
音楽の入り具合もイイ。

渡哲也、小林旭、鶴田浩二・・、
スターの歌には誰も真似できない味がある。
(例外もたまにあるが)
この歌は受刑者の間で歌い継がれていたものが採譜、編曲されたそうで
放送禁止の憂き目にあったとか。
反社会的だというのが理由だそうだ。

大雪原の中を走るSL。
クライマックスは手に汗を握る!

追記:
大ヒットしたシリーズの記念すべき第一作目。
この作品を入れてなんと18本作られた。

石井輝男監督作品 10本、
マキノ雅弘1本、佐伯清1本、降旗康男、6本。

1964年 石井輝男監督作品 脚色 石井輝男 原作 伊藤一 

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「武士道残酷物語」

2005年07月01日 | ★ぐっとくる時代劇
話は現代から始まる・・

大手ゼネコンに勤めている
青年飯倉(中村錦之介)の恋人(三田佳子)が自殺未遂をする・・

病院で恋人を見守っている飯倉は
飯倉家にまつわる因果な歴史を語り始める・・・

7つの時代にまたがる7つのエピソードの主役を
語り部を兼ねた
中村錦之助が順に演じていくという構成。
この構成自体が変わっているが
まるで川が流れていくように、物語のつながりは自然だ。

役者がとんでもなく豪華。
監督は「橋のない川」などの今井正。

戦国時代の昔から、
脈々と受け継がれる呪いの「武士道DNA」とは?
理不尽な武家社会に甘んじて殉じた先祖たちの物語とは?
いずれも「ここまでやるか」な内容ですが
トーンは一貫して、凄まじいまでにシリアスです。

名優森雅之が、
美少年を愛する嫉妬深い殿様を演じて凄絶。
妖しい目の光が絶品で、これは全日本映画ファン必見!

凄いといったらもうひとり。
明治時代のエピソードの中の加藤嘉
その不気味さといったら(ワンショット衝撃映像があります)
珍奇なホラー映画の比ではありません。
必見。
よ~くご覚悟されてご覧下さい。

この二人の演技は見ておいて損は無いと思う。

主役錦之介の、まるで輪廻転生を繰り返しているかのような
7つの役の演じわけは文句なしにすごい。

そして現代・・もう武士はいないはずなのに・・・

ぞっとした。

侍社会から受け継がれる日本人社会の暗黒面を
これほどまでに暴き立てる作品も珍しい。
痛烈なメッセージ性を感じる。

同じように封建社会への憤りを描いた小林正樹監督の大傑作「切腹」
そして「上意討ち-拝領妻始末」も思い出した。

ただひとつ無礼を承知で言わせていただきたいのは・・

ビデオのジャケットなんですけど、
あまりにも恐ろしげではありませんか?
まるで海外輸出向けのように、
また、キワモノのようにけばけばしく、
ビデオ屋さんの棚で見つけても
まず題名でびびっているところへ
写真がこれでは
恐くて借りられないのではないでしょうか??(自分です)

素晴らしい映画なのにもったいないです。

今井監督が「忠臣蔵」を撮っていたら(!?)
今までの作品群とは180度違うものになっていたに違いない。

出演:中村錦之介 東野英治郎 渡辺美佐子 荒木道子 森 雅之 有馬稲子
加藤 嘉 木村功、三田佳子 岸田今日子 江原真二郎 山本 圭 

1963年 今井正監督作品 南条範夫原作「被虐の系譜」  鈴木尚之 / 依田義賢脚色

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