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阪妻の「破れ太鼓」

2005年08月27日 | ★人生色々な映画
親父が阪東妻三郎で息子が森雅之という贅沢。

これが進藤英太郎主演の
人気テレビドラマ「おやじ太鼓」につながる、
噂の映画だったのか。

暴君親父に従順に従う妻と子供たちが、
反旗を翻すというコメディタッチの映画。

木下監督の映画って洒落ている。
そのユーモアは上等のお菓子のように繊細な味わいだ。

白亜の豪邸に帰るや
オーダーのスーツを脱ぎ捨て、
駱駝のももしきに腹巻姿でライスカレーを食べ、説教!
会社でもまた説教!
いつでも破れ太鼓のように怒り散らす。

息子の田村高広さんが
「普段の親父にそっくりだ。なんで監督は知っているんだ?」と言ったとか。

脚本は木下恵介と小林正樹

六人の子供たちはみな個性があるが
特に、森雅之はぴかぴかのポマード頭で
父親に頭が上がらない長男役をコミカルに演じていて可笑しい。

用件をなかなか言い出せず
豪快にビールを一気飲みする阪妻を前にして
小学生の坊ちゃんのように恐れおののく。
さびしそうにオルゴールを開くシーンがなんともいじらしく可愛い。

阪妻VS森雅之これすごいです。

次男役にはなんと、
「水戸黄門」「喜びも哀しみも幾年月」などの作曲家、
木下忠司が扮し、
ピアノを弾き「破れ太鼓」のテーマを歌って
そこらの俳優さんとは毛色の異なる味を出している。

終盤、孤独な父をなぐさめる言葉を木下監督は彼に言わせている。

「家族といえども人間はみんなひとりひとりなんですよ。
でもやっぱり家族なんですよ。
なんとなくお互いを好きなんですよ・・
お父さんもボクのことなんとなく好きでしょう」

なんか泣かせます。

東山千栄子と滝沢修がパリ仕込の芸術家夫婦に扮していてヘン。
その息子には宇野重吉なのだが
星空の下でスキップする
やら、大声で叫ぶやらこちらもへン。

全体に誇張した表現で、舞台劇のような味わいもある。

おとなしい妻、村瀬幸子が爆発するところ(大爆笑)
今の世の奥さんたちが見ても溜飲が下がるに違いない。
お父さんたちは羨望か同情か。

こんな家族今どき古いというも良し。
だけど今こそ見たい映画。
何度も何度も見たくなってしまう品のある映画。

1949年 木下恵介監督作品 脚本 小林正樹 木下恵介 音楽 木下忠司

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
阪妻の顔の美しさ (さすらい日乗)
2005-08-28 10:25:02
『破れ太鼓』を見て思うのは、阪妻の顔の美しさです。くだらない悩みや不安のない人間の美しさです。

それに比らべ、宇野や滝沢ら新劇役者の顔が美しくないことには衝撃を受けました。

変な言い方ですが、人間は知識や教養を持つと顔が美しくなくなるのか、と思った。

あの阪妻の豪快さ、ユーモアと美しさを継承した役者は、彼以降では勝新太郎だけだった。

60年代の小林旭にもその素質はあったが、70年代以降は太りすぎだ。
返信する
千両役者 (spok23)
2005-08-28 22:09:38
阪妻さんの笑顔には曇りがないですね。

みているこっちまで嬉しくなってきます。



豪快なのにすごく「愛嬌」があって、大勢の

ファンに愛された理由がわかりました。



知識や教養を持った人間の顔・・については

色々と思い当たる気もいたします・・・



さすらい日乗さんのコメントを読んで

「飢餓海峡」などの脚本を書いた

鈴木尚之さんの「内田吐夢伝」を読み始めました。面白そうです。
返信する
阪妻が正しいのか周りが正しいのか…… (オリイ)
2005-08-31 01:17:02
 ちょっとお久しぶりです。

 個人的に木下監督の作風は正直言って苦手なところがあるのですが、『破れ太鼓』だけは抵抗なく好きといえる作品です。

 なんといっても阪妻の演ずる親父が可愛らしくて仕方ありません(笑)。



 さすらい日乗さんの言われる“美しい顔”とそうでない顔の対比、考えさせられます。

 宇野重吉と滝沢修と東山千栄子の家族の設定はどう見ても現実感がないと思うのですが、木下監督はどういう意図で登場させたのでしょう。

 今の目で観ると、家族が誰も正業に就いていない宇野重吉と自分の娘が結婚することに反対する阪妻の感覚の方がまともに見えてしまうのですが(笑)。



 というか、“封建的”な頑固親父が戦後の価値観についていけなくなる喜劇というよりも、阪妻一人が自分勝手な家族の中で孤軍奮闘するものの復興バブル崩壊で矢玉尽きて敗北する……という悲劇に見えてしかたありません(爆)。
返信する
喜劇と悲劇 (spok23)
2005-08-31 10:23:45
滝沢ファミリーは「メルヘン」でしたね。



妻は子供たちから「お母さん、お母さん」と慕われるのに対し

家族から疎まれ

苦労して建てた豪邸からは妻も子供も去っていき・・・会社もつぶれ・・



次男の発言には木下監督の(小林正樹か?)の

人生観が反映しているのかなと思いました。



オリィさんのHPの表紙、森雅之なんですね。ながめに行ってこよう♪
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