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「怪談:宇津谷峠」(第四話)

2008年08月26日 | ★恐怖!な映画
●キーワード

護摩の灰
大金を持った按摩
宇津谷峠
地蔵堂
鞠子宿

前々から怖い怖いと評判で、ぜひ見たかったこの話。
やっぱり怖い~按摩ものは怖い~~

「蔦紅葉宇津谷峠」として歌舞伎・文楽でも演じられている。
原作は河竹黙阿弥。

「日本怪談劇場」シリーズはハイクオリティな時代劇として楽しめる。
ただし
お化け付き~~~!!

江戸の風俗なども勉強になる。
ちなみに
キーワードの「護摩の灰」とは、

「―昔、旅人の姿をして道中で旅客の持ち物を盗み取ったどろぼう。
高野聖(こうやひじり)のなりをして、弘法大師の護摩の灰だといって
押し売りして歩いた者があったところからの名という」(大辞林より抜粋)

だそうである。

「盗っ人」「こそ泥」「物取り」「白波」など、一口に泥棒といっても
色んな呼び方があるものだ。

この護摩の灰は
冒頭からちょろちょろと登場する。
大金を持って旅をする按摩の懐を狙っていたのである。

伊丹屋十兵衛(御木本伸介)は旅の途中、
鞠子宿(東海道の宿場・今の静岡市駿河区)で
按摩の文弥(沢村精四郎:後の沢村藤十郎)と同宿になる。

宿場の旅籠って相部屋だったのですね。
見知らぬ同志が枕を並べるなんて、
物騒な今のご時勢では考えられない。
のんびりしていて趣がある。

当然セキュリティなどという言葉も無い時代、
寝静まった頃按摩の財布を狙って護摩の灰が出没。
盗人は何も取れずに逃げたが按摩が金を持っていることが知れる。

親切心から文弥を難所の宇津谷峠を越えるところまで
送っていった十兵衛は
文弥が座頭の位を取るため百両の大金を持っていることを知って驚愕する。
ちょうど自分も
主人のために百両要るので貸してくれと頼むが拒否され、
いきなり豹変!
峠の地蔵堂の前で斬りつけ、金を奪って崖から投げ落とす。
ここが最大の見せ場である。

十兵衛の心に悪が芽生えると同時に
目の下のクマがどす黒くなるメイクが怖い。
はらはらどきどきする展開が見事である。

逃げ惑う按摩がばっさり斬られた姿は無残この上なし!
腰が低く丁寧な言葉使いがよけいに哀れを誘い
自分が斬ったわけでもないのに後味サイアク

黙阿弥の原作らしく、
因果は巡って文弥の姉(藤田佳子)を知らずに妻にした十兵衛。
文弥の恨みは強く、その怨念によって自滅する。
伊吹吾郎がさわやか与力役でちょい出。

御木本伸介の
善人が悪人に劇的に豹変する瞬間、
亡霊の出現に怯える姿、魂が抜けた表情は見事である。

怪談はお化け役ももちろんだが、
亡霊に恐れおののく役のほうも大変重要であると悟った。

教訓:「金を持っている」と公言するとろくなことはない
    按摩を殺すとやっぱり祟る


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