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「怪談牡丹灯篭:鬼火の巻」(第二話)

2008年08月20日 | ★恐怖!な映画
「鬼火の巻」と三話「蛍火の巻」からなる

●キーワード:
灯篭
下駄
長屋
お札
強欲夫婦
亡霊との取引

おなじみから~んころ~んの牡丹灯篭だが
山本薩夫版とは
筋書きが少し違っている。

夏の夕暮れ時。
空はどんよりとした血の色である。
ボウフラが浮き
猫の屍骸が浮かんでいるような
澱んだ沼の側に立つ貧乏長屋。
あたりには
夏草がぼうぼう生い茂っている。

汗まみれの営みも若い男女の逢瀬も
隣に筒抜け。プライバシーゼロの環境を
セットが見事に表現している。
まるで舞台を見るようで
平成から
一気に江戸の夏にタイムスリップ!

前編「鬼火の巻」は
浪人の新三郎(田村亮)の元へ
亡霊となったお露(金井由美)とお付女中が通ってくるまでの話と
隣の悪党夫婦が亡霊と取引をしてお札をはがすまでを
描いている。
中川信夫監督のテンポのいい演出が冴え
美術、そして幽霊の造形が素晴らしい。

お露さんは「呪怨」の俊雄くんみたいな白塗りで
真っ黒な目だけがほら穴のように強調されている。
寂しげで美しいが、明らかに生気は無い(当たり前ですね)。

伏目で黙って座っているだけの幽霊というのは
黒澤明の「蜘蛛巣城」の千秋実も
そうだったように
動き回るヤツよりもリアリティがあり
哀しく恐ろしい。

それと対照的に生きているものは
ギラギラと過剰な精気に満ち溢れている。

お色気むんむんのお露のまま母(長谷川待子)、情夫の大塚国夫
戸浦六宏とその妻、阿部寿美のエロエロ悪党夫婦、
名古屋章のいかにも小ずるそうな医者など充実!

山本版と違うのは
新三郎は亡霊に獲り殺されるのではなく
欲に目がくらんだ隣人の戸浦六宏に殺されるという点だ。
中川版はお露新三郎のラブストーリーのみではなく、
色と欲が絡む群像劇なのである!

教訓:●亡霊と取引するとろくなことは無い
     ●お札は「貼るもの」で、はがすとろくなことは無い


時代劇専門チャンネルにて

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