現代科学のコスモロジー:そのアウトライン

2005年10月09日 | 心の教育




 前に、「いろいろな事情があって、日本の戦後教育では『近代科学』の大まかな成果は学校で教えられるのですが、『現代科学』の、特にコスモロジーとしての到達点については、まったくといっていいほど教えられていません」といいました。

 学生たちや中高の教師の方たちに聞き取り調査をしていますが、ネット学生のみなさんにも質問をしたいと思います。

 以下、19世紀末から20世紀末までの科学の成果のうち、コスモロジーにとってきわめて重要なものを5つあげてありますが、これらの人名と事項の中のいくつを高校までで学んだ覚えがありますか? それから、学校ではないけれども、自分で学んだものがいくつありますか?

 1869年 ヘッケルによるエコロジー(生態学)の提唱。
 1905年 アインシュタインの相対性理論。
 1947年 ガモフのビッグバン仮説。
 1953年 ワトソンとクリックの遺伝子の二重ラセン構造の発見。1962年ノーベル賞を受賞。
 1977年 プリゴジーヌの散逸構造の理論がノーベル賞を受賞。

 このあたりで、「わっ、苦手な理数系だ」とアレルギー反応が起きそうな方も少なくないと思いますが、ぜひ、ここで頑張ってください。

 ニヒリズムに到る近代科学を教え込まれたために陥っている心の不調、つまり自信喪失を克服する上で、希望に到る現代科学をごく大まかでも学ぶことが、根本的なベースになるからです。

 私自身、いわゆる文科系の人間で科学の専門家ではないため、かえってわかりやすくお伝えできると思いますから、ほんの少し努力していただくだけで、アレルギーは解消できます。

 それは、これまで教えてきた学生は、文学部、社会学部、経済学部、人間関係学部、人文学部、経営学部……と、すべて文科系であったにもかかわらず、最後まで授業を受けた学生の90%から100%近くが、大まかな流れはちゃんと理解できたことからも保証できますから、ご安心ください。

 それから、念のために申し上げておきますと、私は科学の専門家ではありませんが、以下お話しすることについては、何人もの科学の専門家にチェックしていただいて、だいじょうぶという保証をいただいています。


 万一、気になる方は、以下お話しすることと、例えば1流の科学者が執筆・監修した『21世紀こども百科 宇宙館』(小学館)を対照していただけるといいと思います。

 あげている事実や仮説はほとんど重なっていることがおわかりいただけるでしょう。

 もっとも、その事実や仮説の解釈については、私のほうがコスモロジーとして踏み込んだ解釈をしていますが。

 さて、これから徐々にお話ししていくのですが、まず、1947年、ガモフのビッグバン仮説が正しいとすると「宇宙はもともと1つのエネルギーの玉だった」ということになります。

 それは、1905年に発表されたアインシュタインの相対性理論によって、宇宙は究極のところ物質というよりエネルギーからなっていることが明らかにされたことをベースにしています。

 1953年、ワトソンとクリックによる遺伝子の二重ラセンの構造の発見(62年にノーベル賞を受賞)から始まって、地球上の多様な生命の種の遺伝子が研究され、すべて同じ二重ラセンの構造になっていること、そこから、おそらくすべての生命は同じ1つの単細胞生命の遺伝子を引き継いでいるのではないかと考えられるようになっています。それは、すべての生命がいわば親戚であるということ、全生命の一体性の発見ということになりそうです。

 さらに、1869年、ヘッケルによる提唱から始まったエコロジー(生態学)は、20世紀全体をとおした研究によって、地球上ではすべての非生命・環境とすべての生命が互いにバランスをとりながら一つのシステムをなしていることを、疑いの余地のないほど明らかにしています。

 もう1つ、驚くべきことは、プリゴジーヌの散逸構造の理論が、近代科学では外から力を加えないかぎり動かないのが物質であるかのように思われていたのに対し、物質自体がダイナミックに運動し新しい秩序を生み出す、つまり自己組織化する力を持っていることを明らかにしたということです。

 ここでいわれても「ピンと来ない」という方が多いと思いますし、それでいいのですが、いちおう申し上げておきたいのは、こうした「現代科学」の成果は、「もともと1つのエネルギーだった宇宙が、自己組織化能力によって実に複雑な秩序を生み出し、エネルギーから物質を、物質から生命を、そして生命から心を生み出してきた。しかし1つだった宇宙は依然として1つのままである」という、まったく新しいコスモロジーを形成しつつあるということです。

 そのコスモロジーを学ぶと、私たちはもうニヒリズムに陥る余地はない、自信喪失してはいられなくなるのです。

 前置きのところでは眠そうにしていた学生たちの眼が、やがて話が進むにつれて輝いてくるように、ネット学生のみなさんの眼もそうなるはずです。

 特に文科系のみなさん、少しだけ努力して話についてきてください。決して損はさせませんからね。

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