先週末で大学が冬休みに入り、研究所の忘年会、O大学のクリスマス礼拝があって、それから元旦配達に間に合うよう相当な数の年賀状を書き(元旦に届かないみなさん、すみません)、今日、研究所の今年最後の講座があって、これで今年一息です。
今年のクリスマスは、子どもたちが帰ってこなかったので、夫婦二人で静かなものでした。
今日の講座「『十七条憲法』と緑の福祉国家――日本の原点と目標」の最終回では、「福祉国家」さらには「緑の福祉国家」という理念を掲げ、それを実際に推進してきたスウェーデン社会民主労働党の2001年に改訂された新綱領(『ヨーロッパ社会民主主義論集(Ⅳ)』生活経済研究所、所収)のポイントを学び、『十七条憲法』の理想とみごとに重なるということを見ていきます。
準備のために読み直しをしながら、日本の諸政党との認識の差に改めて驚きとため息状態です。
出がけに、ごく一部ですが、紹介させていただきます。
まず綱領の冒頭の言葉は、単なるきれいごとではなく、スウェーデンにおいては実際にかなりの程度実現されてきたものとして読むと、感動的です。
社会民主主義は、民主主義が徹底されすべての人が等しく扱われる社会を理想としている。皆が連帯し、自由で平等な社会こそ、民主的社会主義の目標である。
福祉政策について、こう述べられています。
社会民主主義的な福祉政策は、自由、平等、連帯という3つの原理を体現したものである。社会民主主義的な福祉政策は、共同の社会形成を重視する伝統を背景としており、個人的効用と社会的効用の双方をつくり出す。
スウェーデンの福祉政策が優れているのは、そのことによって個人が利益を得るだけでなく、経済力も含め社会全体の利益にもなるように作られている点です。
例えば、福祉と雇用については次のように述べています。
福祉は、成長の条件を強化する。多くの人々がより良い教育を受け、自らの能力を発展させることができるのであれば、経済は強化される。積極的労働市場政策によって、失業者が新しい仕事を発見することが容易になるし、経営者にとっては、仕事に必要な能力を備えたスタッフを見つけることが容易くなる。健康保険によって、人々は自らの健康を維持する手段を得て、労働市場から排出される人々が少なくなる。……
経済力と福祉との関係が理解されなければならない。そして政策はこの両者の関係をふまえて形成されなければならない。ここでは、いかなる成長を求めるか、ということが問題になる。成長の目的は、人間の福祉を増大させることである。この目的は、人間の健康や生活の質を害する、あるいは環境を破壊し、自然資源を浪費するような手段をもって達成できるはずがない。このような成長は実際には成長と呼ぶことはできない。なぜなら、こうした成長がともなう人間的、環境的、あるいは社会的コストが、こうした成長がもたらす短期的な利益を超えてしまうからである。……
完全雇用は経済的目標であるばかりか社会的目標である。……
さらに例えば、金融危機に関しては次のようにちゃんと予測しています(7年も前に)。
生産の資本主義的秩序は私的所有の上に立脚している。したがって、他のすべての利益に対して利潤増大が優先される。利潤をあげるために、どのような方法が用いられるか、またその際に、社会、人間、環境にいかなる犠牲が生じるかは問題ではない。……金融の利益は部分的には現実の生産から切り離されている。……金融の短期的で投機的な動きが強まったために、国際経済は不安定なものとなり、個々の国の経済問題が深刻化するというケースもいくつか生じている。……
指導者たちの先見性は、ほんとうにすばらしいと思います。
日本にもこういう先見性のある指導者-党が欲しい!!(欲しければ育てるしかない)。
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講座も講義も、お疲れ様でした。
この綱領は、自国に対する誇りと、成してきたことの自信が見える文章だと思いました。
利益だけにとらわれていない視野の広さなのに、単なる机上だけの理想ではないという信念。
これを一党が書いたのか…と思うと、スウェーデンの国としての成熟度がやっぱりすごいなぁと思いました。
読み終わるとちょっと胸が熱くなりますね。
一年間、ご苦労さまでした。ご参加、ご協力、とても感謝しています。
スウェーデンは漢字では「瑞典」と書くのですが、清潔で真面目でヒューマンで、これからの世界のモデルになる国の雰囲気がよく出ていますね。うらやましい!(←健全な羨望です)
長い間政権を担当し続けてきたスウェーデン社会民主労働党の理想の高さとその実現力には感動しますね。
時間がかかっても、日本もこういう国にしましょう!
来年も続けて、よろしく。