サングラハ心理学研究所の昨日(13日)の講座は、「聴くこと――コスモス・セラピーの視点からカウンセリングの基本を学びなおす」の最終回でした。
そこで話した内容のレジュメを公開しておきたいと思います。
これは、批判のための批判や敵対的批判ではありません。
もし認識不足、まちがいがあれば、当然のことながら訂正する用意があります。
関係者の方の生産的なコメントをいただけるとうれしいと思っています。
ロジャーズ派の意味と限界
人間の潜在力・成長可能性への信頼は、人間性心理学全体が共有している。
感情に焦点を当てた傾聴-共感的理解によってクライアントが体験するのは、マズローの階層構造理論でいうと、所属と愛の欲求、承認欲求のある程度までである。
もっとも典型的・理想的に行なわれた場合、それらの欲求が適度に満たされることによって癒され、自己成長欲求に到りうる。
しかし、所属と愛の欲求や承認欲求が実際の社会生活の中で十全に満たされるためには、それらを満たしうるような適切な行動が必要であり、適切な行動には適切な知識と考え方(思考)が必要である。
ロジャーズ派では、無条件に感情を受容することに集中しすぎて、そうした学習過程を組み込んでいない。
そのため、深い体験をすることなしにただ「親身になってグチを聞いてもらう」ことで一時的に気が楽にはなるが、問題解決はせず、カウンセリングが長引くだけという結果に終わることも多い。
また、日本には自己決定-自己責任という文化的な風土がないので、深い体験をしたとしても、その結果、適切な思考、知識、行動の自己学習が自発的に行なわれるということが起りにくく、おなじくカウンセリングが長引きがちである。
クライアントの自己改善・自己学習意欲を引き出し、かつセラピストのインストラクションを受け入れる気になってもらうには、「心の絆(ラポール)」を形成する必要があり、そのための導入部でのベースとして、傾聴-共感はできるだけあることが望ましい。
しかし、知識・思考・行動が適切なものに変容するために不可欠なのは、適切な事柄の「学習」である。
論理療法は、感情はそれ自体で独立して起こるのではなく、自明化・自動化した思考(belief)に大きく影響されて起こることを発見した。
そこで、もちろん感情を大切にはするが、それに焦点を当てるのではなく、思考・思い込みに焦点を当て、働きかけ、変えることで、不健全な否定的な感情を健全なものに変えるという教育―学習的な技法を開発している。
もちろん心理療法に万能薬があるとは思えないが、脳の病理がない・または少ない中程度までの心理的な不調の治癒の方法としては、比較的短期間でかなりの効果があがる有効な方法だと評価できる。
自己肯定のための条件・4つの層
個人レベル
社会集団レベル(家庭、友人グループ、会社など)
民族・国家レベル
自然・宇宙レベル
人間性心理学は、主に個人としての人間に焦点が当たっており、一部、集団における人間を重視するものもあるが(エンカウンター・グループ、グループ・ダイナミックス、アドラー心理学etc)、民族・国家、自然・宇宙レベルは十分視野に入っていない。
その点を補うものが、サングラハにおける仏教の学びとコスモス・セラピーの組み合わせである。
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以前にそんな感じのロジャーズ派のカウンセリングを受けたことがあるのですが、まさに「優しくグチを聞いてくれる」だけ、という感じでした。
導入ではベーシックにあったほうがよいけど、それはひじょうに限界のある方法論ということですね。
一般的にそういうタイプのカウンセリングが大きな主流になっていると思いますが、なぜそういう有効性の低い、いわば古くさいものがもてはやされているのか、自分の体験と考え合わせてちょっと疑問に思ってしまいました。
グチを引きつけると思った方が良いかもしれない。課題はグチに思う思考になっている事をカウンセリングした方が良いのではないだろうか。
さらに言えば、その事より、その方が楽しく元気になる事に感心を向けることが1番だと思います。
その方が今一番したい事、楽しい事を思えば、身体全体がたのしくなります。一時でも元気な状態になることが、大切かと思います。
ウスイツカサ
講座でも感じたことですが、ロジャーズ派カウンセリングの「聴く」姿勢は、
基礎として必要ですし、重要なものですよね。
でも、確かに、それだけでは不十分です。
つまり、ロジャーズ派カウンセリングを含んで超える必要があるわけですね!
ロジャーズ派の聴く姿勢もまだ十分に習得できていませんが、
いずれは、含んで超えた理論と実践まで身につけていきたいと思います。
日本人は、話せと言われて一方通行に話せる人ばかりではないと思います。
自分が納得した上で、従来の思い込みを自分の選択したいあり方に恣意的に矯正する、論理療法の可能性は大きいと思います。
論理療法、学んでいきます。