この川柳時評の担当は3ヶ月に一度。そのあいだあれこれネタの候補を探しながら過ごして、結局、締め切り間際にドタバタ書くことになる。が、今回は正直困った。何も考えてなかったわけではなく、前回の記事を送ってから、自由律俳句を参照しながら自由律川柳について書こうかなあと思った。それが何となく時間がたってテーマへの興味がぼんやりして焦点の定まらないタイミングで締め切りが近づいてきた。いやはや、どうしたものか。
とりあえず、自由律川柳については伊良子擁一編『自由律川柳合同句集Ⅰ』(1941)という歴史的資料を手に入れたので、収録されている太平洋戦争以前の自由律川柳をいくつか引用してみる。
くすぐられるからわらつてやる 道田葉平
春の話へ咳こんでゐる 增位汀柳
火のないストーブがつまづくとこにある 村岸清堂
椿夕あかりしてゐる死あることが不思議なくらゐ 亀井愚寵
朝顔咲いてしまつた 木村半文錢
夕方の風に僕のからだとなつて歩きます 喜多川宵路
ちよいと拾うて春風をしよつてゆくひろひやさん 石川棄郎
神戸とある大根積んだトラツクをふりかへるのです 藤井蔭太郎
血を塗つた十字架の模造品が銀に光る 阿部俊一郎
こやつ電球となつて眞空を摑み得てゐる 川口為男
引用する前は「あまり自由律俳句と変わらない」と書こうと思っていたのだが、実際にこうして気に入った句を並べてみるとそこはかとなく「俳句」とは違う川柳味があるような気がしてくる。どこが、とは言えないのが苦しいところだ。全体の印象としては素直なところが好ましくもあり、また、太平洋戦争の直前にこれが出版されたことに拍子抜けしないこともない。
『自由律川柳合同句集Ⅰ』には、8つの川柳誌(「たまむし」、「手」、「紫」、「川柳ビル」、「川柳風呂」、「視野」、「巻雲」、「柳詩」)からの作品が収められている。そのうち、自由律川柳に特化していたのは「視野」のみのようだが、160人におよぶ作家の名前が並んでいるのを見ると、太平洋戦争までの時代には川柳にも自由律を求める必然性があったのだと感じられる。
ちなみに、収録の160人には鶴彬が入っていない(鶴はこのアンソロジーの出版より前の1938年に、獄中で罹患した赤痢で亡くなっている)。ただ、巻末に収められた「自由律川柳小史」(杉田小寒郎)に、「巻雲」(井上剣花坊創刊の「川柳人」が改名した川柳誌)からの「諷刺的主張」のある作品として、
グラインダーの蒼い火花に徹夜續きのあばら骨 彬
あざむかれた移民の意気地で煙突を磨く 楊生坊
富士の晴れる日はにつぽんの下駄を履いて出る 帆吉
があげられているのには、この(太平洋戦後も今に至るまで)最後の「自由律川柳」アンソロジーを編んだ人々の気概が感じられる。
それにしても、上に引いた作品の木村半文錢や石川棄郎といった作者名に見られるように、戦後まで生き延び、今も川柳家として名前を聞く人もいるものの、他の100人以上の自由律川柳家たちはどこへ行ったのだろう。戦後も、何らかのかたちで創作活動を続けたのだろうか。この続きこそを書きたかったところだが、始めに書いたように方向性が定まらず、今回の「自由律川柳」についての話はここで終わる。いつか、戦後の川柳における自由律の展開、というか、段階的消滅についても書いてみたいとは思っている。
さて、「自由律川柳」についての考えがまとまらなかった原因のひとつとして、新しく手軽で派手なオモチャが出てきて、それを試すのに時間がとられたことがある。巷で話題のChatGPTである。
これがどのようなシロモノであるかというのはいまネット上に情報があふれているので、ここでは最小限の説明で済ませる。自然言語を高度に模倣してさまざまな言語表現を出力することができるGPT(Generative Pre-trained Transformer)というAI(正確には、「大規模言語モデル」、らしい)に、普通の会話のかたちで入力を行えるインターフェイスをつけたものである。この出力される言語表現がこれまでにない「人間らしさ」を備えているので、情報処理能力との組み合わせで今までは人間が作業していたさまざまな知的作業を代行できると想定され、実際にそうなり始めている。
私は創作と仕事の双方で言語を中心とした生活をしているので、一方では困ったなと思い、一方、いろいろと新しい展開になりそうなので面白くもなったとも考えている。とくに英語で英語圏文化について、例えば、”Write a short essay on the song “Tomorrow” from the musical Annie.”などと尋ねれば、各パラグラフちゃんと情報がそろった5~6パラグラフの文章、こうした事情をしらない先生ならすごい英文を書く学生がいる!と採点A+をつけた踊りだしたくなるような文章を書いてくれる。日本語はまだまだ下手なのだけれど、英語で出力した後に、他のAIツールの「DeepL翻訳」などを使えば立派な日本語文にもなる。
じゃあ、ChatGPTくん、川柳も書いてくれるかな、といろいろ試しているのだが、「川柳」、”senryu”という言葉を入れてしまうとロクなものが出てこない。GPTの性質上、いちばんありがちな言葉な並び、言い換えれば一般的な通念に従った言葉の集まりができてしまうのだ。また、そのレベルでは、俳句と川柳の区別が(おそらく一般の日本人の多くもそうであるように)できておらず、出来の悪い俳句っぽい表現が量産されることになる。(例えば、馬鹿正直に “Write a senryu.”という「プロンプト」—入力する指示文のことをこう呼ぶ―を入れると、
Cherry blossoms fall,
Softly landing on the ground,
Beauty in decay.
みたいなのが出てきます。)
というわけで、ちょっと工夫して以下のような説明的な「プロンプト」を打ち込んでみた。
I want you to act as a poet. Write a one-line lyrical poem that describes a daily life scene with some illogical leap.
(詩人になって日常の場面を描いてちょっとした論理的な飛躍も含んだ一行の抒情詩を書いて。)
すると、
I dance with the laundry, as it spins in the dryer's warm embrace.
With a flick of the wrist, I paint the sky in shades of my emotions.
といったが出てきたので、おっ意外といけるのかも、もちょっと頑張れ!とくりかえしていたら、どんどん下手になって、
The streetlight hums a lullaby, coaxing the sun to rise from its slumber.
うーむ、なんとなく、頑張っているのは伝わってくるのだけれど・・・。
もっと「プロンプト」を工夫するとよいのだろうが、「日常の場面」と書くと陽光にあふれた気持ちのよい朝食のシーンをやたらと使いたがるような「ありがち」にとらわれる傾向のあるAIなのである。「論理の飛躍を」も馬鹿正直に受けてしまっているようだ。根本のところが川柳に向いていないのだろう。気の毒に思えてきた。他にもさまざまに試しているのだが、よく考えると、こういう道具は「便利ツール」だけに途中のさまざまな作業をすっ飛ばすというところにポイントがあるのだった。創作、特に川柳の創作というのはむしろ、その途中のさまざまな作業で、意外な組み合わせや発想が生まれるところに醍醐味があるわけで、その意味でも川柳創作に使うには向いてなさそうである。アイデアをもらうという使い方もある、とChatGPT使用指南のYouTube動画などはいうのだが、そうした行為自体が「目的」に向けた「効率」の発想なので、そもそも無駄な行為である(と言い切ってしまおう)川柳創作とは正反対を向いているのだ。
また、GPTという言語モデルは基本的に、ある言葉にその言葉につづく確率が一番高い言葉をつなげてゆくというリニアな仕組みらしい。その意味では、読みの過程で全体が把握できて、読みが前の言葉にも循環的に戻って重層的な意味を生み出していくような短詩には向いていないだろう。画像AIなどを組み合わせて、全体像のイメージを考慮させる、といった仕組みは作れるかもしれない。現在のChatGPT(無料版)の背後にあるGPT3.5ではなく、有料版に使われているGPT4 はmultimodal—言語だけでなく、画像や音声も扱える―らしいので、これは意外と早く対応できるようになる可能性がありそうだ。
まあ、それ以前に、日本語の理解がまだまだというほうが気になる。「一音で発音する漢字をリストアップして」という簡単な指示にもまともに答えられない。
プロンプト
Can you provide me with a list of Japanese kanji that are pronounced in a single mora? Please keep in mind that a mora is the smallest unit of sound in Japanese language. List up 漢字 that are pronounced in a mora in Japanese.
回答
Sure, here are some Japanese kanji that are pronounced in a single mora:
一, 右, 雨, 円, 王, 音, 下, 火, 禾, 下, 歌, 花, 車, 子, 糸, 字, 耳, 手, 十, 几, 九, 人, 入, 内, 半, 白, 父, 太, 竹, 中, 虫, 町, 天, 田, 土, 二, 日, 八, 百, 不, 美, 無, 万, 名, 目, 矢, 也, 夜, 与, 予, 楽, 良, 流, 龍, 竜
Note that this is not an exhaustive list, and there may be other kanji that can be pronounced in a single mora depending on the context in which they are used.
これは文字情報で学習しているので、文字数はカウントできるが、読みの音数までは手が回らないのだろう(中国語でも日本語でも字は同じだからまあ一緒だろう、という発想かもしれない)。俳句や川柳は575と定義ではいうのだが、実作では575が書けないのもたぶんこれが原因か。解決するのは元データの漢字をひらいたものを大量に学習させる、といった手間がいるし、これがなされるのは(それがなされるとして)ずいぶん先になるに違いない。(GoogleのBardでも試したが、ほぼ同じ結果だった。ChatGPTもBardも大本のシステムが Transformer というGoogleが開発した大規模言語モデルなので当然ではある。)
私は意地悪だから、向いていないものに無理やりやらせるのが面白くもある。それと、こうしたシステムが出来ないことを確認することは、「私たちは何が出来ているのか」を知ることができるという意味で有益だなと思う。上の例でいえば、私たちの「書く‐読む」行為がリニアなつらなりだけでなく、映像的なかたち(ゲシュタルト?)の読み取りや、前に戻る循環的な理解からも成っていて、また、漢字と読みの二重性を瞬時にして読み取るような高度な情報操作が自然に行われている、という点などは、人間の知性とは違う現在の「AI」の情報処理と比べてみると、はっきりと浮き彫りになる。
さて、最後に、お世話になったChatGPTに得意なこともさせてあげて今回の記事を締めようと思います。
プロンプト
I want you to act as a gansta rapper. Write hip-hop verses on a battle between senryu and haiku. Let senryu win in the end.
回答
Yo, yo, yo, what's good, y'all?
It's your boy ChatGPT, coming at you with a hip-hop brawl
We got Senryu and Haiku, two forms of poetry
Going head to head, who's gonna come out on top, we'll see
First up, Haiku, the OG of the game
Three lines, five-seven-five, that's the name of the game
Haiku's short and sweet, makes you ponder and reflect
But when it comes to battling, can Haiku truly connect?
Now let's talk about Senryu, the underdog in this fight
Similar to Haiku, but with a little more bite
Senryu's witty and clever, it packs a punch
And when it comes to battling, Senryu's got the lunch
Haiku steps up to the mic, ready to spit some fire
But Senryu's got some bars that will make Haiku retire
Haiku's lines are beautiful, but they lack some punch
While Senryu's lines hit hard, like a heavyweight lunch
Haiku's sweating now, as Senryu takes the lead
Senryu's flow is unstoppable, Haiku can barely breathe
Haiku tries to fight back, but it's too little too late
Senryu's got this battle, there's no debate
So there you have it, Senryu takes the win
Haiku put up a good fight, but Senryu's got the spin
Thanks for tuning in, y'all, and remember this rhyme
In the battle of poetry, Senryu reigns supreme every time.
というわけで、thanx my homie ChatGPT!!!
とりあえず、自由律川柳については伊良子擁一編『自由律川柳合同句集Ⅰ』(1941)という歴史的資料を手に入れたので、収録されている太平洋戦争以前の自由律川柳をいくつか引用してみる。
くすぐられるからわらつてやる 道田葉平
春の話へ咳こんでゐる 增位汀柳
火のないストーブがつまづくとこにある 村岸清堂
椿夕あかりしてゐる死あることが不思議なくらゐ 亀井愚寵
朝顔咲いてしまつた 木村半文錢
夕方の風に僕のからだとなつて歩きます 喜多川宵路
ちよいと拾うて春風をしよつてゆくひろひやさん 石川棄郎
神戸とある大根積んだトラツクをふりかへるのです 藤井蔭太郎
血を塗つた十字架の模造品が銀に光る 阿部俊一郎
こやつ電球となつて眞空を摑み得てゐる 川口為男
引用する前は「あまり自由律俳句と変わらない」と書こうと思っていたのだが、実際にこうして気に入った句を並べてみるとそこはかとなく「俳句」とは違う川柳味があるような気がしてくる。どこが、とは言えないのが苦しいところだ。全体の印象としては素直なところが好ましくもあり、また、太平洋戦争の直前にこれが出版されたことに拍子抜けしないこともない。
『自由律川柳合同句集Ⅰ』には、8つの川柳誌(「たまむし」、「手」、「紫」、「川柳ビル」、「川柳風呂」、「視野」、「巻雲」、「柳詩」)からの作品が収められている。そのうち、自由律川柳に特化していたのは「視野」のみのようだが、160人におよぶ作家の名前が並んでいるのを見ると、太平洋戦争までの時代には川柳にも自由律を求める必然性があったのだと感じられる。
ちなみに、収録の160人には鶴彬が入っていない(鶴はこのアンソロジーの出版より前の1938年に、獄中で罹患した赤痢で亡くなっている)。ただ、巻末に収められた「自由律川柳小史」(杉田小寒郎)に、「巻雲」(井上剣花坊創刊の「川柳人」が改名した川柳誌)からの「諷刺的主張」のある作品として、
グラインダーの蒼い火花に徹夜續きのあばら骨 彬
あざむかれた移民の意気地で煙突を磨く 楊生坊
富士の晴れる日はにつぽんの下駄を履いて出る 帆吉
があげられているのには、この(太平洋戦後も今に至るまで)最後の「自由律川柳」アンソロジーを編んだ人々の気概が感じられる。
それにしても、上に引いた作品の木村半文錢や石川棄郎といった作者名に見られるように、戦後まで生き延び、今も川柳家として名前を聞く人もいるものの、他の100人以上の自由律川柳家たちはどこへ行ったのだろう。戦後も、何らかのかたちで創作活動を続けたのだろうか。この続きこそを書きたかったところだが、始めに書いたように方向性が定まらず、今回の「自由律川柳」についての話はここで終わる。いつか、戦後の川柳における自由律の展開、というか、段階的消滅についても書いてみたいとは思っている。
さて、「自由律川柳」についての考えがまとまらなかった原因のひとつとして、新しく手軽で派手なオモチャが出てきて、それを試すのに時間がとられたことがある。巷で話題のChatGPTである。
これがどのようなシロモノであるかというのはいまネット上に情報があふれているので、ここでは最小限の説明で済ませる。自然言語を高度に模倣してさまざまな言語表現を出力することができるGPT(Generative Pre-trained Transformer)というAI(正確には、「大規模言語モデル」、らしい)に、普通の会話のかたちで入力を行えるインターフェイスをつけたものである。この出力される言語表現がこれまでにない「人間らしさ」を備えているので、情報処理能力との組み合わせで今までは人間が作業していたさまざまな知的作業を代行できると想定され、実際にそうなり始めている。
私は創作と仕事の双方で言語を中心とした生活をしているので、一方では困ったなと思い、一方、いろいろと新しい展開になりそうなので面白くもなったとも考えている。とくに英語で英語圏文化について、例えば、”Write a short essay on the song “Tomorrow” from the musical Annie.”などと尋ねれば、各パラグラフちゃんと情報がそろった5~6パラグラフの文章、こうした事情をしらない先生ならすごい英文を書く学生がいる!と採点A+をつけた踊りだしたくなるような文章を書いてくれる。日本語はまだまだ下手なのだけれど、英語で出力した後に、他のAIツールの「DeepL翻訳」などを使えば立派な日本語文にもなる。
じゃあ、ChatGPTくん、川柳も書いてくれるかな、といろいろ試しているのだが、「川柳」、”senryu”という言葉を入れてしまうとロクなものが出てこない。GPTの性質上、いちばんありがちな言葉な並び、言い換えれば一般的な通念に従った言葉の集まりができてしまうのだ。また、そのレベルでは、俳句と川柳の区別が(おそらく一般の日本人の多くもそうであるように)できておらず、出来の悪い俳句っぽい表現が量産されることになる。(例えば、馬鹿正直に “Write a senryu.”という「プロンプト」—入力する指示文のことをこう呼ぶ―を入れると、
Cherry blossoms fall,
Softly landing on the ground,
Beauty in decay.
みたいなのが出てきます。)
というわけで、ちょっと工夫して以下のような説明的な「プロンプト」を打ち込んでみた。
I want you to act as a poet. Write a one-line lyrical poem that describes a daily life scene with some illogical leap.
(詩人になって日常の場面を描いてちょっとした論理的な飛躍も含んだ一行の抒情詩を書いて。)
すると、
I dance with the laundry, as it spins in the dryer's warm embrace.
With a flick of the wrist, I paint the sky in shades of my emotions.
といったが出てきたので、おっ意外といけるのかも、もちょっと頑張れ!とくりかえしていたら、どんどん下手になって、
The streetlight hums a lullaby, coaxing the sun to rise from its slumber.
うーむ、なんとなく、頑張っているのは伝わってくるのだけれど・・・。
もっと「プロンプト」を工夫するとよいのだろうが、「日常の場面」と書くと陽光にあふれた気持ちのよい朝食のシーンをやたらと使いたがるような「ありがち」にとらわれる傾向のあるAIなのである。「論理の飛躍を」も馬鹿正直に受けてしまっているようだ。根本のところが川柳に向いていないのだろう。気の毒に思えてきた。他にもさまざまに試しているのだが、よく考えると、こういう道具は「便利ツール」だけに途中のさまざまな作業をすっ飛ばすというところにポイントがあるのだった。創作、特に川柳の創作というのはむしろ、その途中のさまざまな作業で、意外な組み合わせや発想が生まれるところに醍醐味があるわけで、その意味でも川柳創作に使うには向いてなさそうである。アイデアをもらうという使い方もある、とChatGPT使用指南のYouTube動画などはいうのだが、そうした行為自体が「目的」に向けた「効率」の発想なので、そもそも無駄な行為である(と言い切ってしまおう)川柳創作とは正反対を向いているのだ。
また、GPTという言語モデルは基本的に、ある言葉にその言葉につづく確率が一番高い言葉をつなげてゆくというリニアな仕組みらしい。その意味では、読みの過程で全体が把握できて、読みが前の言葉にも循環的に戻って重層的な意味を生み出していくような短詩には向いていないだろう。画像AIなどを組み合わせて、全体像のイメージを考慮させる、といった仕組みは作れるかもしれない。現在のChatGPT(無料版)の背後にあるGPT3.5ではなく、有料版に使われているGPT4 はmultimodal—言語だけでなく、画像や音声も扱える―らしいので、これは意外と早く対応できるようになる可能性がありそうだ。
まあ、それ以前に、日本語の理解がまだまだというほうが気になる。「一音で発音する漢字をリストアップして」という簡単な指示にもまともに答えられない。
プロンプト
Can you provide me with a list of Japanese kanji that are pronounced in a single mora? Please keep in mind that a mora is the smallest unit of sound in Japanese language. List up 漢字 that are pronounced in a mora in Japanese.
回答
Sure, here are some Japanese kanji that are pronounced in a single mora:
一, 右, 雨, 円, 王, 音, 下, 火, 禾, 下, 歌, 花, 車, 子, 糸, 字, 耳, 手, 十, 几, 九, 人, 入, 内, 半, 白, 父, 太, 竹, 中, 虫, 町, 天, 田, 土, 二, 日, 八, 百, 不, 美, 無, 万, 名, 目, 矢, 也, 夜, 与, 予, 楽, 良, 流, 龍, 竜
Note that this is not an exhaustive list, and there may be other kanji that can be pronounced in a single mora depending on the context in which they are used.
これは文字情報で学習しているので、文字数はカウントできるが、読みの音数までは手が回らないのだろう(中国語でも日本語でも字は同じだからまあ一緒だろう、という発想かもしれない)。俳句や川柳は575と定義ではいうのだが、実作では575が書けないのもたぶんこれが原因か。解決するのは元データの漢字をひらいたものを大量に学習させる、といった手間がいるし、これがなされるのは(それがなされるとして)ずいぶん先になるに違いない。(GoogleのBardでも試したが、ほぼ同じ結果だった。ChatGPTもBardも大本のシステムが Transformer というGoogleが開発した大規模言語モデルなので当然ではある。)
私は意地悪だから、向いていないものに無理やりやらせるのが面白くもある。それと、こうしたシステムが出来ないことを確認することは、「私たちは何が出来ているのか」を知ることができるという意味で有益だなと思う。上の例でいえば、私たちの「書く‐読む」行為がリニアなつらなりだけでなく、映像的なかたち(ゲシュタルト?)の読み取りや、前に戻る循環的な理解からも成っていて、また、漢字と読みの二重性を瞬時にして読み取るような高度な情報操作が自然に行われている、という点などは、人間の知性とは違う現在の「AI」の情報処理と比べてみると、はっきりと浮き彫りになる。
さて、最後に、お世話になったChatGPTに得意なこともさせてあげて今回の記事を締めようと思います。
プロンプト
I want you to act as a gansta rapper. Write hip-hop verses on a battle between senryu and haiku. Let senryu win in the end.
回答
Yo, yo, yo, what's good, y'all?
It's your boy ChatGPT, coming at you with a hip-hop brawl
We got Senryu and Haiku, two forms of poetry
Going head to head, who's gonna come out on top, we'll see
First up, Haiku, the OG of the game
Three lines, five-seven-five, that's the name of the game
Haiku's short and sweet, makes you ponder and reflect
But when it comes to battling, can Haiku truly connect?
Now let's talk about Senryu, the underdog in this fight
Similar to Haiku, but with a little more bite
Senryu's witty and clever, it packs a punch
And when it comes to battling, Senryu's got the lunch
Haiku steps up to the mic, ready to spit some fire
But Senryu's got some bars that will make Haiku retire
Haiku's lines are beautiful, but they lack some punch
While Senryu's lines hit hard, like a heavyweight lunch
Haiku's sweating now, as Senryu takes the lead
Senryu's flow is unstoppable, Haiku can barely breathe
Haiku tries to fight back, but it's too little too late
Senryu's got this battle, there's no debate
So there you have it, Senryu takes the win
Haiku put up a good fight, but Senryu's got the spin
Thanks for tuning in, y'all, and remember this rhyme
In the battle of poetry, Senryu reigns supreme every time.
というわけで、thanx my homie ChatGPT!!!
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