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共感できず・・・。『さくら』by西加奈子

2020年03月09日 | 小説レビュー
『さくら』by西加奈子

~スーパースターのような存在だった兄は、ある事故に巻き込まれ、自殺した。誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後、内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。僕も実家を離れ東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾に桜の花びらをつけていたことから「サクラ」となづけられた年老いた犬が一匹だけ――。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、何かに衝き動かされるように、年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を置き去りにして、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていた――。「内容紹介」より

とても評判の高い作品であり、『さくら』というタイトルしか知らず、何の先入観もなく読み始めました。

『著者からのコメント』
「さくら」は、ある家族の物語です。
彼らは少し風変わりな五人と優しい一匹。色とりどりの春と、屈託のない夏と、センチメンタルな秋と、静かな冬、彼らに巡ってくる、そして誰にでも巡ってくる季節の、そしてその中で起こった小さな、でも、かけねの無いある「奇跡」の物語です。
だからこれはあなたの物語であり、私の物語であり、どこかで眠ってる誰かの物語でもあります。
これを読んでくれたあなたが、恋人に会いたくなったり、お母さんに手紙を書いたり、友達の肩を叩いたり、そう、いつもより少し優しくて、暖かい気持ちになってくれたなら、私はとても幸せです。



とありますが・・・、「ならんね!少なくとも俺はならんよ!」と言いたいです。

西加奈子さんの作品というか、人物描写などは好きな方なんですが、今回はテーマが重い上に、「キャラが立っている」、「個性的」なんていう表現を通り越して、「狂人の域」というか・・・。
長谷川家の家族以外にも、とても強烈なキャラクターが登場しますが、それぞれがトンガリ過ぎていて、一冊の本の中に納まりきらないような感じがしました。

妹が最愛の兄にしてしまったことは、まさに「取り返しのつかへん罪」ですし、壊れていく家族のもとを黙って去っていった父親が、数年後にひょっこり戻ってきても何の波風も立たない家族の雰囲気にも違和感を感じました。

家族の全員が何か重大なことを心の中に隠していながら、またそれに家族も気付いていながら、普通に暮らして笑っていられるというのはおかしいですし、共感できませんでした。

西加奈子さんの文章は読みやすいので、スラスラと読みましたが、あまり「良かった」とは言えません。
愛犬の「サクラ」が出てくる場面だけが、心温まるシーンであり、それ以外は救いようがない感じです。

★★☆2.5です。