素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

久しぶりに畑村洋太郎・東大名誉教授が登場

2021年09月09日 | 日記
 今日の毎日新聞・夕刊の《特集・ワイド》は、畑村洋太郎・東大名誉教授へのインタビューだった。失敗の原因を究明して次に生かす「失敗学」を提唱した畑村さんの話は目からウロコ!という感じで、現役時代の実践に参考になった。特に、岩波書店から出版された『直観でわかる数学』『続・直観でわかる数学』は痛快だった。今でも時々読み返す愛読書である。
 その畑村さんに、コロナ対策「失敗」に学ぶというテーマでのインタビューはタイムリーであった。畑村さんは、日本では明治維新のころから一貫して成功や成長をとにかく重視し、逆に失敗を軽視する文化、風潮が根強いと常々言ってきている。第二次大戦の敗戦後こそ失敗を直視する好機だったが、その後の急速な経済成長に浮かれてしまい結局、失敗を隠し、失敗から目をそらす文化、風潮が連綿と続いてしまったと指摘する。
 東京電力福島原発事故で政府が設置した第三者機関の事故調査・検証委員会委員長や消費者庁消費者安全調査委員会委員長を務めた畑村さんが、今でも経済政策の検証がなされないことや原発事故の根本的な原因の核心部分はいまだに不明なのにあっさりと見過ごされることが問題であると指摘しているが、とても説得力がある。
 菅首相が今日記者会見をやっと開いたが、失敗を認めない姿勢は相変わらずだった。やっと医療体制を構築できなかったことは反省するといったが、おざなりでなぜを深く追求しているとは思えなかった。
 横浜港に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で集団感染が判明したのが2020年2月、それから1年半未知のウイルスとの闘いでの失敗をしっかり検証しないと与野党問わず政権が代わっても駄目なんじゃないかと思う。
 先にあげた『直観でわかる数学』『続・直観でわかる数学』で畑村さんは『伝える』『わかる』ということを熱く語っている。
 コロナ禍においても、政府は「伝えれば伝わる」と誤解していると手厳しい。「伝える」ということは、一方的に情報やメッセージを発信する行為に過ぎない。一方、『伝わる』というのは、渡された情報やメッセージが双方の間で一致して認識されている状態のことである。と説く。この状態に至るには、受け取る側の人間が、伝える側がいったい何を伝えようとしているのかと、主体的に考えるプロセスが不可欠だが、今これが失われつつあると危惧する。
 畑村さんの指摘を読んで、オンライン授業の限界が見えたように思えた。対面授業の大切さに気づくべきかと思う。いろいろなことを考えさせられた特集だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする