素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

似て非なるもの➁タンポポ

2021年05月08日 | 日記
 イチハツをいただいたNさんは、80代半ばになるが探究心旺盛な方だ。シニア自然大学にも通われていたから本格的である。4年前、枚方山草会は30周年を迎えた。その記念の会誌を発行することになったが、編集の中心となっていた方が着手した直後に脳梗塞で倒れた。そのため秋に発行する予定だった会誌の製作が暗礁に乗り上げた。妻から相談を受け、一肌脱ぐことにした。もともと冊子作りは大好きなので、構成その他すべて一任する。という条件で引き受けた。
 会員各自の山野草をめぐる寄稿がメインになったが、Nさんは「タンポポ」というタイトルであった。
 
 毎年、春の楽しみの一つに、私市にある大阪市大植物園のタンポポに会える事があります。木々が一斉にそれぞれの色に芽吹きます。この景を借景にして大広場一面がタンポポの花で埋め尽くされます。
 太陽の光をいっぱいに浴びたタンポポの広場は明るく希望と勇気をもらえる様に感じられます。
 何年か前に、タンポポ調査に参加しました。その時は在来種のカンサイタンポポと外来種のセイヨウタンポポ、それに交雑が疑われる雑種タンポポの割合を調査するものでした。
 外来種のセイヨウタンポポは、1900年頃北海道で発見されてからたちまち日本全土に広がりました。カンサイタンポポが春、『有性生殖』するのに対してセイヨウタンポポは殆んど1年中『無融合生殖』で種が出来ます。
 両者は交雑しないと思われていましたが、研究が進みDNAでも解析され、はっきりと交雑が確認されました。かなりの割合になっているとの事です。
 カンサイタンポポは、4,5月に、高さ10~15㎝ほどの細い花茎で花を咲かせて種を付けますが、セイヨウタンポポの花は大きくしっかりとした感じで、沢山の種を付けます。
 外見上一番大きな違いは花の下の総苞外片(そうほうがいへん)がカンサイタンポポはしっかりと花を包んでいますが、セイヨウタンポポは大きく反り返っています。雑種は一部反り返ったり、まばらに反り返ったりといろいろですが、ある程度判断できます。
 一面に咲く植物園のタンポポは交雑しているのでしょうか?あちらこちらで総苞外片を確認するのですが、雑種らしき物は見つからず、そんな訳は無いと思いながらDNAなど判らない私には全部がカンサイタンポポに見えます。
 4時半の閉門の頃には「お疲れ様」と静かに花を閉じて見送ってくれます。


 Nさんの原稿を打ち終えるとスペースができた。そこで気を利かせて適当にタンポポの写真を挿入して体裁をと問えて、Nさんに最終チェックをしてもらったら、タンポポの写真にクレームがついた。Nさんはカンサイタンポポを主役にしたいと思って文章を綴ったのに私が使用した写真はセイヨウタンポポだった。そこからNさんのタンポポの違いについての講義を受けた。よく目にするタンポポだが見る人が見れば全部同じではないということがわかった。まさに似て非なるものである。
 2年後にこの記事を夕刊で見つけた時、Nさんの話を思い出し切り抜いて大事に保管している。知らない世界を教えてもらった懐かしい思い出である。
コメント
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