コーヤン流三間飛車の快勝譜 中田功vs勝又清和 2009年 C級1組順位戦

2024年01月12日 | 将棋・名局

 中田功のさばきと来たら、まったく官能的なのである。

 振り飛車のさばきといえば、まず最初に出てくるのは「さばきのアーティスト」こと久保利明九段だが、将棋界にはまだまだ腕に覚えのある達人というのはいるもの。

 中でも玄人の職人といえば「コーヤン」こと中田功八段にとどめを刺す。

 中田八段の得意とする「コーヤン流三間飛車」は、その独自性ありすぎなため、だれもマネできないと言われているが、そのさばきのエッセンスは見ているだけで楽しい。

 前回はNKH杯戦で見せた、見事な指しまわしを紹介したが、今回もマネしたくなる振り飛車を。

 


 2009年C級1組順位戦。中田功七段と勝又清和六段の一戦。

 中田の三間飛車に、勝又は急戦で挑む。

 5筋と4筋から仕掛けて、先手の勝又が▲24歩と突いたところ。

 

 

 


 定番の突き捨てで、△同歩と取るのがふつうだが、振り飛車党なら手抜いてさばく手順も考えたい。

 なら△44角もあるかなというところだが、マイスター中田功はもっと軽快に行く。

 

 

 

 

 


 △44飛といくのが、振り飛車の感覚。

 子供のころ、中飛車が向かい合った形から△55歩▲同歩△同飛と行って、▲同角△同角飛車香両取りという手順に感動した記憶があるが、その原体験がある人は、すぐさま飛車を振るべきであろう。

 ▲44同角△同角から暴れまくられそうだから、勝又は渋く▲56歩と打つ。

 ▲23歩成△48飛成から△55角という、大さばきを警戒した手だが、これなら振り飛車がやれそうだ。

 すかさず△57歩と「手裏剣」を飛ばして、▲59金△58銀と露骨に打ちこんでいく。

 ▲同金△同歩成▲同金△75歩

 

 

 


 玉頭に手をつけて、陣形の差も大きく振り飛車がさばけている形。

 とにかく、先手の▲24歩を間に合わせてないところがねらい通りで、飛車が動けば角交換も確定だから、いかようにも、さばきまくれそうなのだ。

 少し進んで、この局面。

 

 

 

 先手は△33角ラインがうっとうしいので、▲25桂と使って、なんとかそれをどかそうとする。

 角を逃げると飛車タダなので、いよいよここで△48飛成から△55角の大刀さばきが発動するのかと思いきや、「マイスター」の腕はそのさらにを行くのである。

 

 

 

 

 

 

 △46飛と浮くのが、摩訶不思議な手。

 だが、指されてみると「おお!」という。

 ▲同角とは取れないし、次に△56飛と土台のをはらわれると、▲55がブラになるうえに飛車が一気に玉頭をおびやかしてくる。

 先手は▲33桂不成と、懸案だったをようやく除去するが、かまわず△56飛がきびしい。

 

 

 完全に後ろを取った形で、角取り△76歩玉頭攻めや、△58歩成もあって攻めは選り取り見取り。

 ▲66銀と投入して、なんとかねばろうとするも、急所の△76歩を利かして、▲86玉と追いこんでから△55飛とさわやかに飛車を捨ててしまう。

 ▲63銀成△同銀▲55銀△88角できれいに寄り。

 ▲22飛△72金と締まって、ここで勝又は投了。 

 

 

 先手玉は詰めろで、△55角成とする筋もあり、受けても一手一手である。

 最後は木村美濃を完成させて勝つという手順の妙がシブい。

 攻防ともに、最低限の駒だけで仕上げている感じが、いかにも達人のという感じがする。

 コーヤン流というと穴熊退治のイメージが強いが、やはりさばきは急戦のときこそ威力を発揮する。

 いやあ、見事なもんですわ。

 


(中田功の芸術的な三間飛車はこちら

(小倉久史の「下町流三間飛車」はこちら

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