悩み相談というのはむずかしい。
私もたまに後輩などから話を聞かされることもあるが、そんな悩める子羊のために、新聞や雑誌にはたいてい
「お悩みうけたまわります」
といったコーナーがある。
それでまず思い浮かべるのは、やはり中島らもさんの『明るい悩み相談室』であり、
「鮭の切り身の北枕はどちらなのでしょうか」
といったアクロバティックな質問に、らもさんが当意即妙に答えていくというもので爆笑必至。
そんな、普通の悩み相談ではなく変化球で対応する相談ページというのは結構あり、自身も悩み相談を連載していた大槻ケンヂさんはその例をエッセイなどで、いくつかあげている。
まずは、北尾光司の人生相談。
北尾といえば、相撲の世界で横綱にまで昇進しながら、暴力事件やプロレス八百長発言、さらには、
「付き人がRPGのセーブデータを消したからぶん殴った」
などなどで物議を醸した愉快……もとい話題に事欠かなかった人だが、そんな問題児がここに人生相談デビュー。
「誰が相談するねん」という、まっとうすぎるつっこみは置いておくとして、なによりもすばらしいのが、その連載時のタイトル。それはズバリ
「綱に聞け!」
見事すぎるセンスである。このタイトルだけでごっつぁんですだ。
相談内容とか、もはやどうでもいい。考えた編集者は天才かもしれない。
グレーゾーンの人生相談といえば、「三浦和義のアナーキー人生相談」というのもあった。
アナーキーすぎる気もするというか、この人に聞きたいことといえばひとつしかないと思うのだが。
まあ「ロス疑惑」など、今のヤングにはなんのこっちゃかもしれないが。
余談だが、先日知人がロサンジェルスに行った話をしたところ、
「ロス? あーLAのことっすか。てゆうか、いまどきロスって……」
なんてメチャクチャにバカにされたものだった。昭和は遠くなりにけり。
受験の悩みには、まだ政治家になる前の田中康夫さんが答えていた。
その窓口である『大学受験講座』では、受験勉強で悶々とする若者に、今ならステマを疑われるであろうほどに異様なる情熱を持って、なぜか駿台文庫の『基本英文700選』を推薦し、さらには
「下手に偏差値の高い大学に行くよりも、甲南大学へ行け」
そうアドバイス。
神戸の女の子はかわいいし、なにより甲南はブランドイメージがあってモテモテだ。だから、甲南を受験しろ!
などと、くりかえし力説。後年、甲南の学生に、
「オレ、あんたの言うこと信じて、関関同立蹴って甲南行ったのに、ちっともモテないッスよ、田中さん!」
とか詰め寄られていた。いい話である。
そういえば、これら愉快な物件を紹介していたオーケンも銀杏BOYZの峯田和伸君に、
「大槻さんが、バンドやったらモテるっていうからミュージシャンになったのに、全然モテないじゃないッスか!」
やはり詰め寄られていた。勉強課外活動問わず、ボンクラ少年はだいたいどこも同じようなことを、やったりいったりしているものらしい。
康夫ちゃんはさらに、
「甲南に行けないヤツは芦屋大学に行け! あそこは金持ちのボンクラばかりだから、勘違いした姉ちゃんが寄ってくる。それに、キャンパスでボンボンとコネをつけたら、将来出世だ!」
とも主張していたが、おそらくは同じように芦屋BOYZに胸ぐらつかまれていたであろうことは想像に難くない。負けるな、受験生。
(次回、北方謙三編に続く→こちら)