スターリンのオルガン 岡崎洋vs大野八一雄 1997年 第55期C級2組順位戦

2024年01月30日 | 将棋・名局

 将棋界で、もっともやりきれない「やらかし」は順位戦でのそれであろう。

 人間がやる以上どうしてもミスは出るもので、それ自体はしょうがないけど、時と場所によっては、取り返しのつかない陰惨さを醸し出すこともある。

 それが順位戦の世界。

 このあたりのアヤを語るときよく出るのは、タイトル戦に敗れたものには、

 

 「残念だったね、また来年がんばろう」

 「切り替えよう、この経験は次に生きるよ」

 

 なんて、はげましの声をかけられるが、順位戦で昇級の一番を逃したり、降級した棋士には、だれも声をかけようもないという。

 今回はそういう、なんともやりきれない深夜のドラマを見ていただきたい。

 


 1997年、第55期C級2組順位戦の最終戦。

 大野八一雄六段と、岡崎洋四段の一戦。

 この期の岡崎はここまで8勝1敗の好成績で、この一局に勝てばC1昇級が決まるという大一番。

 相矢倉から、後手の岡崎が角の打ち場所に工夫を見せるが、それがよくなかったようで、大野がペースを握る。

 

 

 

 ▲65歩と突くのが、いかにも好感覚で、それはその後の手順を観れば一目瞭然。

 岡崎は△38馬とし、▲17飛△73桂と活用。

 △65桂を取れれば、△44歩を殺せるのだが、その直前に▲66角と打つのが、強烈すぎる一手となった。

 

 

 

 ▲45の銀▲25の桂が目一杯利いて、この単純な王手を受ける形がない。

 とりあえず△33桂とするが、▲同桂成△同金直▲25桂のおかわりが、よくある攻め筋。

 

 

 

 

 歩があれば△44歩で受かるが、無い袖は振れない。

 やむを得ず、△25同銀と喰いちぎり、▲同歩△65桂一歩を手に入れるが、そこで▲35歩が急所中のド急所

 

 

 

 

 待望の△44歩にも、▲34歩と取りこまれて銀が殺せず、どこまでいっても、後手の手が1手ずつ遅れているのが、おわかりであろう。

 △34同金右▲同銀と取って、△同金▲45銀

 

 

 

 後手も必死にダムを作るが、▲66から流れてくる洪水は止まる気配もない。

 せめて△33玉と、上部脱出に望みをかけるが、▲34銀と取って、△同玉▲39金を殺されては、すでに勝負あった。

 

 

 

 岡崎も手を尽くして受けているはずが、▲66にあるから発射されるのスリングショットがおもしろいように着弾し、矢倉の城壁は跡形もない。

 昇級の一番を、序盤から大差に持っていかれた岡崎だが、投げるに投げられず、ひたすらに指し続ける。

 手順だけ見れば、ただ「投げない」というだけで、棋譜としての価値はなく、人によっては「未練がましい」と思われるかもしれないが、その言葉を投げつけるものはだれもない。

 順位戦で昇級をかけ、必敗の将棋をねばっている者に、

 

 「早く投げろよ」

 

 なんて、たとえ将棋の神様でさえも言えるはずなどないのだ。

 その後も岡崎は、万にひとつも逆転しない将棋を179手まで指し続けた。

 

 

 

 この残骸のような投了図を見れば、岡崎の無念さが伝わってくる。

 岡崎は翌年、8勝2敗で昇級を果たすことになる。

 


(村田智弘がC1昇級を逃した将棋はこちら

(井上慶太がC1昇級を逃した将棋はこちら

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「英語コンプレックス」解消には第二外国語学習がオススメ

2024年01月27日 | 海外旅行

 「英語コンプレックスがある人は、第二外国語をやるのがいい」


 
 というのは、結構まじめに感じていることであり、前回はスペイン語を勉強中という話をしたが、今回も外国語についての話題を。

 日本人には「英語コンプレックス」があるとは、よく言われることである。
 
 そのためわれわれは、やれ小学生から英語学習をとか、TOEICで何点とか、第二公用語にしようとか議論に明け暮れることになる。
 
 こういう劣等感とまではいわないが、引け目のようなものを解消する方法は、大枠で2種類あり、ひとつは「がんばって克服する」。
 
 もうひとつは「あきらめて、それはそれで楽しく生きる」。
 
 太っているなら努力してやせるか、そこは無視して他人になにを言われても、好きなものを食べて生きるか。
 
 勉強が苦手なら学習量を増やすか、偏差値は低いなりにノンキに過ごすのか。
 
 これはどっちが正解とかはないので、各人好みで選ぶとして、他にも変化球的対応もないことはなく、太っているなら「トンガに移住」とか、学業不振には「裏口入学」のようなカラメ手があるように、語学でもそれを考えてみたいわけだ。
 
 それが「英語以外の外国語学習」。

 もともと私は、英語コンプレックスのようなものは少ない方ではあり、それは、日本人がウズベク語アルメニア語をしゃべれないことをなんとも思わないように、


 
 「母国語でなく外国語を話せないという、しごく普通の状態に悩む理由がない」
 


 というだけのことで、そこを悩むのも、ちょっとだなーとなるわけだ。
 
 それに加えて私の場合、英語以外の言語を学んだことが大きかった。
 
 学生時代、ドイツ文学科に所属し、それなりにドイツ語をマジメに学んだ身には、またバックパッカーとして数多の国を駆け巡り、色々な文化言語に触れた経験からも、


 
 「英語というのは、数ある外国語のうちのひとつでしかない」


 
 ということが理解できるから。
 
 日本人には何となく、英語に対してのイメージがあると思われるが、現在のところ世界で英語が「共通語」的なあつかいになっているのは、別に英語がすぐれた言語だとか、果ては「しゃべれるとオシャレ」みたいなものではない。

 単に大英帝国が世界に植民地を作りまくり、アメリカが各地で戦争しまくるなど、そういった「帝国主義の成れの果て」。

 ソ連があったときは東欧中央アジアロシア語が必修だったとか、「大東亜共栄圏」では日本語教育が推奨されたとか、それと同じ。
 
 別に英語や英語人をくさすつもりはないけど、要するに


 
 ケンカの強いヤツの意見が通っている」


 
 だけの話にしか見えないのだ。 

 時代の流れだから、それに逆らうつもりもないけど、過剰に崇拝したり「ありがたがる」気も起こらない。
 
 第2外国語をやると、そういうフィルターが、はずれる効果があるわけだ。
 
 つまるところ、英語ドイツ語ビルマ語アムハラ語も。
 
 ギリシャ語アラビア語アゼルバイジャン語グロンギ語も、そのすべてが等価の存在。
 
 それぞれに等しい価値があり、それぞれに伝達のための1ツールにすぎないという当たり前のことが、本当によくわかる。
 
 日本人の中で、いや今では世界で英語の存在は圧倒的なのは事実だ。
 
 でも、そこだけにとらわれていると、他にもたくさんある「宝の山」に気づかない可能性がある。
 
 映画が好きな人にとって、


 
 「映画が大好きだけど、ハリウッド映画しか観ない」


 
 という人がいたら、「もったいない」と感じるとはず。
 
 ボリウッド韓国映画フランス映画にもちろん我らが日本映画など色とりどりの作品について語りたいという気持ちが、わきあがってくるはず。

 ハリウッドだけが映画じゃないよという気にもなるわけで、語学もそれと同じことなのだ。

 ……ということが言いたいんだけど、これは体験してない人に言葉だけでわかってもらうのは、なかなかムズかしいかも。

 あ、ちなみに私は「世界共通語はマレー語にすべし派」です、ハイ。

  

 (インド英語編に続く)

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「1分将棋の神様」も木から落ちる 加藤一二三vs島朗 1991年 第50期B級1組順位戦

2024年01月24日 | 将棋・名局

 「わたしの将棋は逆転負けが多いんですよ」

 

 インタビューなどでよくそう言うのは、「ひふみん」こと加藤一二三九段である。

 将棋は終盤のドラマが多く、「逆転のゲーム」と呼ばれるほどだが、時間の使い方が独特で、常に秒読みに追われて戦っていた加藤九段は、どうしてもそのリスクが高くなってしまう。

 もっとも、加藤一二三といえば「1分将棋の神様」の異名を持つ人なので(クリスチャンの加藤はこのネーミングを気に入っていないそうだが)、そのピンチを見事に全クリしてしまい、

 

 「やはり、加藤一二三は天才だ」

 

 と感嘆さしめるが(昔の観戦記にはこのフレーズがよく出てきます)、さすが「神武以来の天才」も100%というわけにはいかず、ときには木から落ちてしまうこともあるのだ。


 1991年の、第50期B級1組順位戦

 加藤一二三九段島朗七段の一戦。

 相矢倉から後手の島が、相手の駒を呼びこむ強気な指し方で加藤を迎え撃つ。

 中央で駒がぶつかり合って、むかえたこの局面。

 


 
 

 後手玉はかなり危ないが、まだ一撃で決まることはない。

 一方、先手玉は次に、△67成桂と寄られると受けがむずかしいし、なにかのときに千日手に逃げられそうな恐れもあるが、ここで手筋がある。

 

 

 

 

 

 一回、▲49歩と打診するのが、ぜひ覚えておきたい感覚。

 △同飛成は、手順に△67成桂とする筋が消えて、先手陣がかなり楽になる。

 そうはさせじと、島は△58飛成とひっくり返って、なんとか△67成桂を実現させようとするが、さらに▲59歩の追い打ちが好手。

 やはり、△同竜とは取れないから、△69竜ともぐって、三度△67成桂をねらうが、ここが先手にとっての分岐点であった。

 

 

 

 

 後手の攻めが緩和されたこの一瞬で、寄せに出るか、それとももう少し受けにまわるか。

 手堅くいくなら、▲79金打と先手で固めて、△59竜▲11金と取っておく。

 次に、▲75香から、押しつぶしにかかるわけだ。

 これだと安全ではあるが、を一枚手放してしまっているのが問題点。

 後手玉を寄せるときに、戦力がやや頼りないかもしれず、ここは迷いどころ。

 時間のない中での決断は、読み切れないとなれば、自らの棋風にしたがうことが多いのではないか。

 「負けない将棋」の永瀬拓矢九段なら、ガッチリ▲79金打としそうだし、終盤の切れ味で勝負する斎藤慎太郎八段なら、かまわず踏みこんでいきそう。

 加藤一二三は、踏みこむほうを選んだ。▲52と

 だがこれは危険な手だった。

 正解は▲79金打で、ここで今度は島にチャンスボールが来た。

 △86歩と突くのが、「筋中の筋」。

 

 

 

 ▲同歩は、△87歩が一発効くから▲同銀だが、先手陣はこれで相当に薄くなった。

 すかさず△68成桂

 かなりせまられているが、▲同金と取って、△同竜に▲78金としかりつける。

 この合駒を先手で打てるのが、加藤の自慢だ。

 ななめ駒があれば、ここで△79角や銀で簡単に詰みだが、駒台にあるのはあいにくの

 △69竜とゆるんだところに、▲11金

 

 

 

 

 今度こそ、▲75香や▲51馬がきびしいが、ここで島がねらっていた強烈な一打がある。

 

 

 

 

 

 △77歩が、またも指におぼえさせておきたい、筋中の筋という軽打。

 ここでは△86飛、▲同歩、△87歩という攻め方もあるが、▲77玉と逃げたとき、飛車を渡してしまっているため、寄らないとヒドイことになる。

 で攻められるときは、それを通すに越したことはない。

 この「焦点の歩」に先手も取る形がなく、▲同桂△89金で詰むし、▲同金は重く△79金で、ほとんど受けなし。

 ▲同玉△89竜と取られて、次に△86飛と切る筋があり、▲同歩は△85桂から詰むから、これまた受ける形がない。

 消去法で▲同銀だが、すかさず△87飛成(!)と飛びこんで、先手陣は危なすぎるどころか、詰んでいてもおかしくない。

 ▲同玉の一手に、△89竜と底をさらって、▲88銀△86歩とタタく。

 ▲77玉△87金と打ちこんで、▲同銀は簡単に詰みだから、▲同金△同歩成に▲同銀、△67金、▲同玉に△87竜

 

 

 

 
 
 クライマックスは、この場面だった。

 攻め方、受け方、双方が最善を尽くしての追跡劇は、この次の手で決着がついたのだ。

 先手は王手に合駒するしかないが、みなさまも考えてみてください。

 飛車のどれが最善か……。

 加藤は▲77桂と打ったが、これが敗着になった。

 ここは▲77金が正解で、これなら先手が勝ちだったのだ。

 ▲77桂には△75桂と打って、▲同歩に△76銀

 ▲58玉に△78竜と入る筋がある。

 

 

 合駒がなら、この手はなかった。

 以下、▲68桂の合駒に△67銀不成と追って、▲47玉△36金と出る手がピッタリ。

 

 

 

 これまで、僻地でまったく働いていなかった△25△17が、ここへきてまさか千金の輝きを見せようとは。

 これぞまさに、「勝ち将棋、鬼のごとし」で、▲36同玉△26馬以下、簡単な詰みになる。

 この将棋のさらにおもしろいところは、終局後のやり取り。

 投了してすぐ、加藤は「トン死したな」とつぶやき、島は「?」となったそうだ。

 こういう最終盤の、詰むや詰まざるやで気になるのは、対局者がどこで読み切っていたかということ。

 追う方は詰みを確信していたのか、それとも、あやふやなまま追っていたのか。

 それとも、詰みはないとわかっていながら「間違えてくれ」と祈りながら指していたか。

 逃げるほうも、鼻歌を歌いながらの逃避行だったか、それとも詰みはわかっていて、万一の僥倖にかけて罠をはっていたか。

 この場合、島は「詰みあり」と確信していたのだろう。

 だとしたら、もし▲77金とされていたら、その瞬間に真っ青になったことになる。

 一方の加藤は「詰みなし」と見切っており、その判断は正しかったが、最後の最後で指が、悪い方へ行ってしまった。

 時間もないし、運が悪かったとしか言いようがないが、なら時間を残しておけばいいのにというのは、加藤一二三には野暮なアドバイスというものだろうなあ。

 


(「さわやか流」米長邦雄の実戦詰将棋はこちら

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スペイン語学習と「中2マルチリンガル」大作戦

2024年01月21日 | 海外旅行

 スペイン語を勉強している。
 
 スペイン語と言えば「日本人に学びやすい言語」として有名である。
 
 スペルはローマ字読みなうえに、日本語と同じ母音で構成されているため発音しやすく、とっつきの良さはヨーロッパ系言語でナンバーワン。
 
 英語とくらべておぼえる単語の量も少なく、文法は過去形などに進むとむずかしくはなるが、英語などとくらべてリスニングスピーキングの壁が相当に低いなど、これはもうマスターしない手はない……。
 
 ……とここで、おいおいちょっと待て。
 
 おまえはこないだ、今は「フランス語を勉強中」「ドイツ語使って英語人にハッタリかませ」といっていたではないか。
 
 なんで急にスペイン語の話になるのかと言われるかもしれないが、これは別に仏語を挫折したわけではなく、当初からの予定通りなのである。
 
 そもそも私がフランス語をやるのは、あくまで1年限定であった。
 
 その間に「中2英語」レベルの文法語彙を身に付ければ、そこでの言語に移行しようと考えていたのである。
 
 というと、えー、そんな中途半端でいいの?

 せっかく1年やったんなら、もっとがんばってフラ語をレベルアップすればいいのにというのは、たしかに正しい意見である。
 
 しかしだ、私の経験上、外国語というのは仕事で必要とか検定試験を受けたいとかでない限り、旅行とかちょっとしたメッセージを送る程度なら「中2レベル」で、わりとまかなえるのである。
 
 具体的に言えば、英語なら「現在完了形」のまでで「不定詞」は便利だからやった方がいいと思うけど、「動名詞」「受け身」はギリなくても、なんとかなりそう。
 
 フランス語は過去形未来形さわりだけやったところで「第1部・完」としたが、たぶんこれ程度でも、
 

 


 Je deviens le dieu de ce nouveau monde.
(私はこの新しい世界の神になります)

 

 Si vous vous mettez à genoux, elle acceptera sûrement.
(あなたが土下座をすれば、彼女はきっとOKしてくれるでしょう)

 

 Ce qui t'appartient est à moi, et ce qui m'appartient est aussi à moi.
(キミの所有する物は私の物で、私の所有する物もまた私の物なのです)


 

 くらいなら一応意味を取れるのだから、充分すぎるほど役に立つのではないか。
 
 そういうこともあって、私は昔から思っていたわけである。
 
 実戦で、特に海外旅行やちょっとした会話くらいなら、むずかしい英語をあれこれ掘っていくよりも、
 
 
 「世界中のあらゆる言語のさわりの知識」
 
 
 こっちのほうが、よっぽど使えるのではないかと。
 
 日本人はとかく「英語ペラペラ」(軽薄な表現だ)にこだわりがちだが、世界には英語が通じにくい国や地域など山ほどある。
 
 今は知らねど、私がヤングだったころはそれこそフランススペインイタリアと言ったロマンス語圏は英語なんかちっとも通じない(日本人よりヒドイ片言だったりする)。
 
 トルコも観光地はいいとしても、ちょっと普通の街歩きスーパーで買い物するときなど、通じないことが多く困った。
 
 エジプトなんかも、市場などの値段表記がアラビア語で、付け焼刃でから10までのアラビア語数字だけおぼえて行ったら、これがメチャ便利というか、そもそも読めないと値段がわからないから買い物ができない。
 
 他にもチェコハンガリーと言った東欧台湾夜市などなど、やはり通用度は低かった。
 
 いやマジで、観光地しか歩かないならいいかもしれないけど、われわれのようなバックパッカーは地元の市場商店のお世話になるのだから、「現在完了進行形」とかよりも
 
 
 「スロバキア語のあいさつ」
 
 「トルコ語の【good】のジェスチャー」(「チョクチョク」でおぼえやすい)
 
 「クメール語の【迷子になりました】」
 
 
 とかの方が100万倍武器になる。
 
 もちろん数字マスト。1から10言えるだけで、メチャ能力値アップは間違いなし。
 
 というわけで、私は現在「中2語学マルチリンガル」計画を立てて、実際に実行している。
 
 この「シュリーマン作戦」によれば、1年フランス語(1日10分)をやった次にスペイン語
 
 フランス語とスペイン語はもとは同じ言語なので共通項も多く(facileとかdifficileなど同じ、また似た単語が多い)、移行はスムーズにいくのではないか。

 一応、まだはじめて数か月だけど、

 


 Él no está comiendo ramen, sino información.
(彼はラーメンではなく情報を食べているのです)

 

 Haz un contrato conmigo y conviértete en una chica mágica, por favor.
(ボクと契約して魔法少女になってください)

 

 Ese payaso parece que, cuando se divierte, termina matando a alguien.
(あのピエロは楽しくなると、ついやってしまうようです)


 

 

 みたいな頻出フレーズをコツコツ読んでいくのは充実感がある。

 次にドイツ語をやり直して、アラビア語中国語ロシア語くらいまで行ければ、もう白地図は相当に塗りつぶせそう。
 
 あとは、昔から興味があったフィンランド語とか、トルコ語ソルブ語なんかもやってみたいなあ。

 

 (英語コンプレックス克服編に続く)

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コーヤン流 居飛車穴熊白糸バラシ 中田功vs先崎学 1992年 第51期C級2組順位戦

2024年01月18日 | 将棋・名局

 中田功といえば穴熊退治である。
 
 振り飛車天敵といえば、これはもう居飛車穴熊にとどめをさすわけで、特に時間の短い将棋や切れ負けのルールでは、無類の強さ(勝ちやすさ)を発揮する。
 
 これを対抗するには「藤井システム」や、今だと耀龍四間飛車振り飛車ミレニアムなどもあるが、中田功のあざやかな太刀筋も大いに参考になるところ。

 まずは角筋を生かしてから殺到する「コーヤン流」(島朗九段命名の「中田功XP」という呼び名もある)。 


 
 中田功流の対穴熊戦。破壊力は抜群だが、玉が少々うすいのがタマにキズ。
 

 
 また、こういった速効型でなく、ふつうに組んでさばいていく指し方もすばらしいものがある。

 前回までは急戦に対するさばきをみていただいたが、今回はその切れ味鋭い穴熊退治を見ていただきたい。
 


 
 1992年の第51期C級2組順位戦
 
 中田功五段と先崎学五段の一戦。
 
 ここまで先崎は4勝1敗で中田は3勝2敗という直接対決で、中盤戦の大一番。
 
 特に先崎よりも順位がなうえに、この後に深浦康市四段真田圭一四段という強敵との対戦を残す中田には絶対に負けられない戦いだ。
 
 将棋は中田おなじみの三間飛車に、先崎はこれまたおなじみの居飛車穴熊

 

 

 


 後手がきれいな「真部流」に組んで、ここから戦いが始まる。
 
 △55歩▲24歩△同歩▲55歩△56歩
 
 
 
 

 

 イビアナ相手に、この5筋タレ歩はよく出る筋。
 
 駒が片寄っているのをついて、堂々と5筋にと金を作り、それで穴熊の硬い装甲をけずっていければ理想的な展開だ。
 
 先手は▲54歩と手筋の突き出しに、後手もこれまた


 
 争点に飛車を回る」


 
 という振り飛車の鉄則で△52飛
 
 そこから▲37桂△54飛▲58歩△35歩▲同角△45歩▲22歩△55角


 
 
 

 

 コーヤン流の穴熊さばきといえば、この△55角は必修の手。
 
 ▲22歩と、先手の飛車先が重くなったところで飛び出すのが呼吸か。
 
 かまわず▲21歩成△37角成と飛びこんで、▲24飛△同飛▲同角と飛車交換になったところで、△55馬
 


 
 


 を取らずにを手厚く使うのが、これまた見習いたい手。
 
 後手は△95歩と突いていないので、お得意の端攻めこそないが、
 
 
 「後手三間の一手遅れてる感じが好み」
 
 
 という中田功だから、そのあたりは織りこみ済みなのであろう。
 
 先手が▲31飛と打ちこんだところ、△57歩成を一回入れて、▲同歩△85桂とこっちも利かして、▲68銀△29飛
 
 ▲33角成△同馬▲同飛成に、再度△55角と飛車取りで好所に据え、先手は▲44角と打ち返す。
 
 


 
 
 さあ、ここである。
 
 派手な大駒の振り替わりがあったが、駒の損得もなく形勢は互角だろう。
 
 並なら△44同角▲同竜△55角で、それでも悪くなさそうだが、中田は果敢に踏みこんでいった。

 

 


 
 
 
 
 
 △88角成▲同角△95桂▲78金右△69銀
 
 を切り飛ばして、端歩を突いていないのを生かし桂馬を急所に設置して、さらにのフックでからんでいく。
 
 駒損ではあるが、攻め駒がことごとく急所に配置されており、穴熊としても相当にイヤな形。
 
 潜在的に△87桂不成で吊るされる形がプレッシャーであり、一撃で終わってしまう可能性もあるのだから。
 
 先崎は▲86角攻防に利かす。中田は△19飛成で駒を補充。そこで▲56桂
 
 
 
 
 きびしい反撃で、△73銀と逃げるようだと、▲55角飛車取りから、▲63竜△同銀▲73角成△同玉▲64銀みたいな殺到をねらっている。
 
 そうなると「ゼット」に近い穴熊ペースで、一気に持っていかれてしまう。
 
 とはいえ、後手も穴熊を沈めるのに、香一本ではまだ戦力不足のようにも見えたが、次の手が必殺の一撃だった。

 

 


 
 
 
 
 
 △77香が、固くて深いはずの穴熊の肺腑をえぐるキリの一突き。
 
 取る駒が5個もある「焦点の歩」ならぬ香打ちだが、なんとどれを選んでも先手玉は仕留められているというのだから2度ビックリ。
 
 ▲同金△同桂成▲同銀(角引)は△87桂不成で詰み。
 
 
 
 


 
 ▲77同金△同桂成▲同角上と▲88に空気穴を開けて取っても△87桂不成▲88玉△79桂成から崩壊。
  
 ▲77同角引△78銀成▲同金△77桂成▲同角△69角で寄り。


 


 
 
 どう応じても、どこかで△87が飛び込んでくる筋があって、どうにも受ける形がないのだ。
 
 本譜は▲同銀としたが、△78銀成▲同金△77桂成▲同角上△79金まで後手勝ち。

 


 
 ▲同金でも▲88金でも、やはり△87桂不成の筋をからめて行けば簡単に寄る。
 
 まさに一瞬の出来事で、先崎に何か見落としがあったようだが、それ以上に中田功の駒さばきをほめるべきだろう。
 
 思い出すのは昭和の少年マンガ『包丁人味平』のこのシーン。

 


 
 


 
 


 まさに穴熊の宝分け「白糸バラシ」一丁上がり。
 


(コーヤン流穴熊くずしはこちら

(森内俊之による居飛車穴熊への圧勝劇はこちら

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「英語話せる?」には「キミはドイツ語を話せるの?」のカウンター

2024年01月15日 | 海外旅行

 フランス語を勉強している。
 
 その理由が、留学でもなく観光でもなく、
 
 
 フランス語なまりを身に付ければ、英語人(主にアメリカ人)へのハッタリになる」
 
 
 という斜め上が過ぎるもので、友人からは絶対にホメていないと確信できる
 
 「お前、すげーなー」
 
 という言葉を各所でいただいている。
 
 そもそも、われわれ日本人が英語、特に英会話苦手意識があるのは、学校教育の受験英語への偏りや、日本語と英語の言語的距離などとともに、
 
 
 「中高6年間(人によっては小大もプラス)も勉強したのに、自分たちはロクに英語も話せない」
 
 
 というメンタル的要素も大きいと思われる。
 
 自分の母語でもない言語に劣等感を持つなど意味不明だし、プラスなこともまったくないので、私としてはまず、


 
 「英語ができないから恥ずかしい」


 
 という不必要な気後れをなくすべく工夫すべきと考えているわけだ。

 しかも、できるだけインスタントでお手軽なもので。
 
 そこで以前、私が使っていたのが外国人に
 
 
 「ユースピーク、イングリッシュ?」
 
 
 と尋ねられたときの返し技。
 
 たいていの日本人はこう来られると、あわててしまい「ノー」とか、せいぜい「リトル」とか答えるけど、なんせ英会話になれていないものだから、そこで口をついて次の言葉が出てこない。
 
 そこで「ダメだ……」と落ち込んでしまうわけだが、私はそういわれると、「ア、リトル」と答えた後に、こう続けるのだ。
 
 
 「Sprechen Sie Deutsch?」
 
 
 シュプレッヒェンジードイチュ
 
 和訳すれば「ドイツ語が話せますか?
 
 前回も書いたが、私は学生時代ドイツ文学を専攻しており、わりとまじめにドイツ語を勉強していた。
 
 といっても、過去の話でかなり忘れているし、あくまで「文学」専攻なので、「読む」に偏って会話などはうまくないが、それでも「中2独語」くらいならなんとかなったもので、

 


 Gewalt löst tatsächlich alles.
(やはり暴力はすべてを解決します)

 

 Er ist der Schwächste unter den Vier Königen.
(彼は四天王の中でもっとも弱いです)

 

 Der Vorgesetzte sagte: 'Du solltest nach Hause gehen, denn du hast 39 Grad Fieber.
(その上司は「90度の熱があるのだから、故郷に帰るべきだ」と言った)


 

 くらいなら辞書アリでなら読めるもの。
 
 そこで逆襲である。
 
 
 「英語話せる?」
 
 「少しね。で、キミの方はドイツ語を話せるかい?」

 
 当然、答えは「ノー」であろう。それには「あー、そっかー」とつぶやき、少し考えてからニッコリと、
 
 
 「OK,English please」
 
 
 こうすれば英語こそ苦手だが、あたかもドイツ語なら流暢であるという印象をあたえることができる。
 
 そこからも、こちらがうまく英語が出てこないときには困ったように、
 
 
 「Also……(えーっと)」
 
 「Wie sagt……auf Englisch?……(それ、英語だとなんて言うんだっけ)」
 
 
 などと、ところどころドイツ語をはさみこみ、たまに、
 
 
 「残念だね。キミがドイツ語を話せれば、もっと会話が弾んだのにね。でも、キミのせいじゃないよ。英語がうまくない、ボク悪いんだ」
 
 
 とでも言いたげな、困った笑みを浮かべれば完璧である。
 
 これがいつもの
 

 「ユースピーク、イングリッシュ?(最初のDoは省略されることが多い)」
 
 「ノー」
 
 
 だと、まるで英語のできない、こちらだけに責任があるように見えるが、
 
 
 「英語話せる?」
 
 「少しだけどね。キミはドイツ語を話せるかい?」
 
 「ノー」
 
 
 だと、「どっちもアナタの言葉が話せない」ことになり、ドローに持ちこめる。
 
 いやむしろ、むこうのドイツ語はゼロなのに、こっちは「中2英語」くらいは使えなくもないので、ポイント総数では私の方が勝利しているとも言えるのだ。
 
 これにより、私の英語力は据え置のままにもかかわらず、ずいぶんとこちら側の劣等感が緩和され、かなり対等などころか、むしろこっちが「上から目線」なメンタルで会話することすら、できるわけだ。

 もっとも、この「ミラーガール作戦」の弱点として、「ドイツ語話せる?」のカウンターに元気よく返ってくることもある。
 
 
 「Ja,Natürlich!(もちろんさ!)」
 
 

 失敗の巻である。

 ドイツ語は第2外国語の中でもメジャーなので、ときおりこいういうことがある。

 なので、「It’s all Greek to me.」(「それは私にとってギリシャ語だ」=「チンプンカンプン」の意)という言葉もあるように、よりなじみのないマイナー言語を押さえておくのがいいかもしれない。

 みなさまも、ドイツ語に限らず他の言語の発音のさわりだけ学んで、
 
 
 「キミがブルガリア語を話せないのは残念だ」
 
 「ベンガル語同士だったら、もっと深い話ができたのにね」
 
 
 などと「話せないキミを責めないよ」というスタンスで「両成敗」に持って行き、ポジショニング争いを制してほしい。

 

 (スペイン語学習編に続く)
 

 

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コーヤン流三間飛車の快勝譜 中田功vs勝又清和 2009年 C級1組順位戦

2024年01月12日 | 将棋・名局

 中田功のさばきと来たら、まったく官能的なのである。

 振り飛車のさばきといえば、まず最初に出てくるのは「さばきのアーティスト」こと久保利明九段だが、将棋界にはまだまだ腕に覚えのある達人というのはいるもの。

 中でも玄人の職人といえば「コーヤン」こと中田功八段にとどめを刺す。

 中田八段の得意とする「コーヤン流三間飛車」は、その独自性ありすぎなため、だれもマネできないと言われているが、そのさばきのエッセンスは見ているだけで楽しい。

 前回はNKH杯戦で見せた、見事な指しまわしを紹介したが、今回もマネしたくなる振り飛車を。

 


 2009年C級1組順位戦。中田功七段と勝又清和六段の一戦。

 中田の三間飛車に、勝又は急戦で挑む。

 5筋と4筋から仕掛けて、先手の勝又が▲24歩と突いたところ。

 

 

 


 定番の突き捨てで、△同歩と取るのがふつうだが、振り飛車党なら手抜いてさばく手順も考えたい。

 なら△44角もあるかなというところだが、マイスター中田功はもっと軽快に行く。

 

 

 

 

 


 △44飛といくのが、振り飛車の感覚。

 子供のころ、中飛車が向かい合った形から△55歩▲同歩△同飛と行って、▲同角△同角飛車香両取りという手順に感動した記憶があるが、その原体験がある人は、すぐさま飛車を振るべきであろう。

 ▲44同角△同角から暴れまくられそうだから、勝又は渋く▲56歩と打つ。

 ▲23歩成△48飛成から△55角という、大さばきを警戒した手だが、これなら振り飛車がやれそうだ。

 すかさず△57歩と「手裏剣」を飛ばして、▲59金△58銀と露骨に打ちこんでいく。

 ▲同金△同歩成▲同金△75歩

 

 

 


 玉頭に手をつけて、陣形の差も大きく振り飛車がさばけている形。

 とにかく、先手の▲24歩を間に合わせてないところがねらい通りで、飛車が動けば角交換も確定だから、いかようにも、さばきまくれそうなのだ。

 少し進んで、この局面。

 

 

 

 先手は△33角ラインがうっとうしいので、▲25桂と使って、なんとかそれをどかそうとする。

 角を逃げると飛車タダなので、いよいよここで△48飛成から△55角の大刀さばきが発動するのかと思いきや、「マイスター」の腕はそのさらにを行くのである。

 

 

 

 

 

 

 △46飛と浮くのが、摩訶不思議な手。

 だが、指されてみると「おお!」という。

 ▲同角とは取れないし、次に△56飛と土台のをはらわれると、▲55がブラになるうえに飛車が一気に玉頭をおびやかしてくる。

 先手は▲33桂不成と、懸案だったをようやく除去するが、かまわず△56飛がきびしい。

 

 

 完全に後ろを取った形で、角取り△76歩玉頭攻めや、△58歩成もあって攻めは選り取り見取り。

 ▲66銀と投入して、なんとかねばろうとするも、急所の△76歩を利かして、▲86玉と追いこんでから△55飛とさわやかに飛車を捨ててしまう。

 ▲63銀成△同銀▲55銀△88角できれいに寄り。

 ▲22飛△72金と締まって、ここで勝又は投了。 

 

 

 先手玉は詰めろで、△55角成とする筋もあり、受けても一手一手である。

 最後は木村美濃を完成させて勝つという手順の妙がシブい。

 攻防ともに、最低限の駒だけで仕上げている感じが、いかにも達人のという感じがする。

 コーヤン流というと穴熊退治のイメージが強いが、やはりさばきは急戦のときこそ威力を発揮する。

 いやあ、見事なもんですわ。

 


(中田功の芸術的な三間飛車はこちら

(小倉久史の「下町流三間飛車」はこちら

(その他の将棋記事はこちらからどうぞ

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語学はハッタリ 「おフランス語なまり」でアメリカ人に一発カマせ!

2024年01月09日 | 海外旅行

 フランス語を勉強している。
 
 1日に10分ほど語学アプリで遊んだり、YouTubeで初級講座を見る程度と能天気なものだが、こんなんでも1年続けるとなかなかのもの。
 

 Alors,ce n'est pas des cornflakes.
(だとしたら、それはコーンフレークではありません)
 
 Maintenant, vous allez vous entretuer un peu.
(今から、ちょっと殺し合いをしてもらいます)

 Tournez l'Indien à droite là-bas.
(そこでインド人を右に回してください)

 
 
 といった、われわれもよく使うような仏語フレーズを言ったり聴いたりできるようにはなったから、継続というのはバカにならないものだ。
 
 といっても、そもそものところフランス語を学ぼうなんていう、殊勝な心はまったくなかった
 
 私がフランス語に手をつけたのは、それ自体ではなく「フランスなまり」をマスターするためだったのだ。
 
 順を追って説明すると、私はこう見えて、ザックひとつで海外を旅行するのが好きな「バックパッカー」という人種である。
 
 そうなるとよく訊かれるのが、
 
 
 「言葉はどうしてるの? もしかして英語ペラペラだったりして」
 
 
 もちろん、私のマカロンくらいの大きさの脳みそでそんな芸当などできるわけないが、一応大学受験のときの知識が残っていたり。
 
 あと、講師の大杉正明先生目当てに浪人時代から2年間ラジオ英会話を聴いていたので、いわゆる「中2英語」くらいはキープできていたりもした。
 
 また、意外と誤解されがちだが、世界には英語なんか通じないところも普通に多く、現地語あいさつと、数字と「5W1H」的なものをおぼえていったほうが、全然実戦的だったりするのだ。
 
 なもので、中2英語で困ることはなかったが、さすがにネイティブ相手だとちょっと無理があった。
 
 これは「バックパッカーあるある」だが、「非英語圏の人が話す英語」は案外通じるが、ネイティブには相当英語ができる人でも大苦戦
 
 まあ、こちとら旅行で

 

 駅はどこですか?」

 「このサンドイッチをひとつください」

 「町の住民が合体して2体の巨人なり戦うユーゴスラビアのお祭りは、いつ開催されますか」

 

 くらいのやりとりでいいので、流暢な英会話は必要ないのだけど、そこで収まってしまうのもおもしろくない。
 
 そこで「フランス語なまり」の出番である。
 
 よく、われわれ日本人は「英語コンプレックス」があると言われているが、ここで逆転の発想。
 
 仮に日本人に「英語コンプレックス」があるとしたら、英語人にだってなんらかの引け目があるのではないか。
 
 英国など他は知らねど、アメリカ在住の知人に訊いてみたところ、アメリカ人はフランス語に苦手意識があるのだそうな。
 
 ならば、そこで勝負である。
 
 もちろん、フランス語自体をマスターするのは大変だが「なまり」だけなら、結構付け焼刃でもなんとかなるのではないか。
 
 たとえば「hotel」を「オテル」(フランス語は「h」を発音しない)と読むとか。
 
 「cat」も「cats」も「キャ(あるいは)」と、複数形単数形同じ発音にしたり(フランス人は語末子音を発音しない)。
 
 あとは鼻母音巻き舌風の「r」や、「black flower」をわざと「flower blacke」と誤記してみたり(仏語の形容詞の多くは名詞の後ろにつき、によって変化もする)。
 
 とどめにはミスヲタなので、かの名探偵エルキュールポアロ(ハヤカワっ子なので「ポワロ」ではない)のように、
 
 
 「mon ami」(わが友)
 
 「Eh bien」(えーと)
 
 「C'est fini」(お終いだ)
 
 
 なんてワードを会話の中に放り込んでいけば(ポアロはベルギー人)、
 
 
 「おお、この人は英語がつたないと思ってたけど、実はフランス語がしゃべれるんだ。スゲー」
 
 
 と思ってもらえるという算段である。
 
 これを思いついたときは「天才あらわる!」と悦に入ったもので、早速それらを学ぶべくデュオリンゴドロップという語学アプリをインストール。
 
 ここに発動された「ヘラクレス作戦」により、せっせと
 
 
 「じゅ、すゅい、ちゅ、え、いる、え、える、え」
 
 
 とかやっていたら、気がついたらドップリとハマってしまった。楽しいやん。
 
 もともと、大学でドイツ文学を学ぶためにガッツリとドイツ語やってた「ガチ勢」だし、海外旅行は好きだし。
 
 外国語エッセイや、そもそも日本語も含めた「言葉自体」が好きなんだろうけど、気がつけば
 


 Je pense que si je travaille, je perds.
(私は働いたら負けだと思っています)
 
 
 なんて会話できたりして、世界は広がる。
 
 それにしても思うのは、今はいろんな情報便利なものがあっていいなあということ。
 
 YouTube観ればかなりマイナー言語でも講座があるし、単語ググれば出てくるし、遊び感覚で勉強できるアプリも山ほど。
 
 私だって、もしフランス語を参考書買ってきてせっせこやるという昔の方式なら、絶対続かなかったことは間違いない。
 
 なにかを学ぶにおいての進化は、確実にあるなあと感じたものだった。今の若い子がうらやましいッス。

 

 (ドイツ語でハッタリ編に続く)

 


 

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「コーヤン流」の極意 中田功vs勝又清和 2006年 NHK杯戦

2024年01月06日 | 将棋・名局

 中田功のさばきと来たら、まったく官能的なのである。

 振り飛車のさばきといえば、まず最初に出てくるのは「さばきのアーティスト」こと久保利明九段だが、将棋界にはまだまだ腕に覚えのある達人というのはいるもの。

 中でも玄人の職人といえば「コーヤン」こと中田功八段にとどめを刺す。

 中田八段の得意とする「コーヤン流三間飛車」は、その独自性が過ぎるため、だれもマネできないと言われているが、そのさばきのエッセンスは見ているだけで楽しい。

 


 2006年NHK杯戦。中田功七段と勝又清和五段の一戦。

 ふだんは三間飛車のイメージがあるコーヤンだが、この日はゴキゲン中飛車を選択。

 勝又が▲36銀とくり出す急戦にすると、中田功も敵の銀2枚をあえて前線に引きつけて、強く反撃していく。

 力戦模様でゴチャゴチャやりあって、むかえたこの局面。

 

 

 

 先手の勝又が▲66桂と打ったところ。

 ▲54成銀ヒモをつけながら、▲74桂という美濃囲いの弱点であるコビンにねらいをさだめている。

 パッと見、ちょっと嫌な感じに見えるが、ここからコーヤンが、さわやかに相手をかわしていくのを見ていただきたい。

 

 

 

 

 

 △84角と出るのが、いかにも好感触のさばき。

 遊んでいたを好所に使いながら、逆に▲66に照準を合わせる。

 ▲74桂が一瞬怖いが、△92玉とでも逃げておいて、の突きこしも大きく、すぐにはつぶれない。

 先手もここで決まらないなら、桂を跳ねてしまうと成銀がブラになるし、のちのち△73歩とかで取り切られたりするとヒドイことになる。

 そこで▲64歩とここから手をつけていくが、後手はシンプルに△66角と切って、▲同金△54飛と取ってサッパリと指す。

 

 

 

 これで収まれば駒得の後手が指せそうだが、ここで先手にはねらいがあった。

 ▲63歩成として、△同銀▲41角が痛烈な一撃。

 

 

 

 教科書のような金銀両取りがかかって、一目先手必勝である。

 だがもちろん、これで投了などプロの将棋ではありえない。

 一連の手順は中田功の読み筋通りで、むしろ先手がハマリ形なのだ。

 私がこの将棋をおぼえているのは、ここで

 

 「なるほど、△32の金を取らせてさばくのが、プロの振り飛車か」

 

 なんて感心していたから。

 △52になにか受けて、▲32角成とソッポに行かせてから、△39角とか△84角とか反撃する。

 この呼吸が、振り飛車という戦法の醍醐味ではないか。

 じゃあ△52に打つのはか、ちょっと迷うかもなあ。

 てゆうかこういう金を取らせてさばく手を思いつくオレ様って、マジでセンスあるよなあ。強いわー。アーティストやん。

 なんて一人悦に入っていたのだが、スルドイ人はもうおわかりであろう。

 そう、そんな回りくどいことをしなくても、この両取りは最初から受かっているのだ。

 ヒントは先手玉の位置が……。

 

 

 

 

 

 △23角のレーザービームが、目もあざやかな切り返し。

 王手だから▲56歩と受けるしかないが、これで△32ヒモがついたから、両取りが受かっているどころか、△52銀打で打ったばかりのが死んでいる。

 私の言うように金をタダで取らせるより、こっちの方が、断然いいに決まっているではないか。

 以下、勝又は▲32角成と取って、△同角▲55銀とがんばるが、手持ち遊んでいる△32のを交換するようでは気持ちも萎える。

 △34飛▲35歩△46銀と捨てて、▲同銀△39角で一丁あがり。

 

 

 

 こんなきれいに、決まるもんなんですねえ。

 最後は△32にいたまで△14角と活用させて、先手陣を攻略。

 

 

 すべての駒が見事にさばけて、中田の快勝となった。

 自分が見えなかったから、よけいにそう思うのかもしれないけど、△23角とはカッコイイ手があったもんですねえ。

 


 (中田功の三間飛車編に続く)

 

 

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2024新年日記 水島新司 マドンナ 佐藤賢一 NAMI 塩見味平 ワット=タイラー登場

2024年01月03日 | 日記

 1月 某日 
 
 ある年始の日記。
 
 11時起床。日本は元日から大変なことになっているが、こういうとき一番良くないのが、

 

 「つらい目にあっている人がいるのに、自分は安全な場所で、のうのうとメシを食っている」

 

 という罪悪感に苛まれるとこであるのは、阪神大震災のとき、兵庫に住んでいた友人たちと違い被害にあわなかった私が得た教訓。

 ロンドンのテロ対策と同じ。なにが起ころうがちゃんと寝て、ごはんを食べて、日々の雑務をこなす。

 それでも自責の念が消えないなら、

 

 「窓を開けて換気する」

 「部屋をキレイにする」

 「いつもより少し人に優しくする」

 

 とかやってみる。

 下がってしまった世界の幸福値底上げを少しでもやろうという、不条理に対するささやかな抵抗だ。意味はあるのか、知らんけど。
 
 朝風呂に入って朝食。オレンジジュースとチャイ、ゆで卵、コーンフレークとヨーグルト。

 BGMにマドンナ「アメリカンパイ」「パンツァーリート」『サイボーグ009』OP「誰がために」など。
 
 「誰がために」はこれをBGMに水島新司おはようKジロー』を読んでたから、聴くたびに野球の気分になる。
 
 映画『リベリオン』観る。『1984』+『華氏451度』という

 

 「ぼくのかんがえた、さいきょうのでぃすとぴあだ!」

 

 それプラスで「日本刀カンフー」とかの裾長衣装とか、中2病だけで作ったような映画でとても幸せな気分になれる。男子必見。

 『マトリックス』『キルビル』とか、たぶんこの映画から影響受けてて、どっちもヒットしたときは

 「シュールなオシャレ映画」

 みたいに言われてたけど、その根幹はガンカタや! ボンクラ魂なめんなよ!
 
 なんとなく床をそうじして、昼食。カレーを大量に作って、それをひたすら食う。
 
 午後からはコーヒーを飲みながら、ひたすら読書。

 佐藤賢一ブルボン朝』読み始める。
 
 フランス王朝三部作の完結編。ブルボンはフランス革命とかで良く知られてるけど、カペーヴァロアのマイナーさも楽しい。
 
 佐藤さんは小説よりも歴史講談の方がおもしろいタイプ。『英仏百年戦争』とか。
 
 語学やってると雑談とかでたまに

 

 「英語はフランス語の下位互換

 

 なんてワードが飛び出して、英語人がムッとすることがあるけど、そのあたりのことは、この本を読むと理解できるかも。 
 
 夕方は買い物がてら、少し散歩。『チャレンジャー』とか古いファミコンのチープな音楽を聴きながら、近所を1時間ほど歩く。
 
 夕食は作り置きのカレーに餅とお出汁を入れて雑煮カレー。『包丁人味平』やね。美味。
 
 食後はパソコンを開く。お茶しながら、YouTubeラジオなど。
 
 語学系のYouTubeをあさりながらスペイン語の勉強。AIのおかげで語学も意味もなくなるけど、まあいいのだ。
 
 NAMIさんとかラテスぺとかラテン美女系にぞっこんな私で、なかばそれが目当て。バックパッカー時代、


 
 「南米は美人が多い」


 
 という話は散々聞かされて、行ったことない私は「ヨーロッパ最強はチェコ」と応戦していたが、たしかにラテンYouTuberきれいである。
 
 たしか「3C」とか言って「コスタリカチリコロンビア」だったかな。かわいくてフレンドリーなんだとか。
 
 いいなあ。行ってみたいけど、飛行機で24時間てのがなあ。 飛行機、苦手なのよ。

 寝る前に少しマンガ。新田章あそびあい』。
 
 主人公の心情は切ないけど、


 
 「こういう不幸こそが、最高に楽しいんだよなあ。燃えるわあ」


 
 なんて俯瞰で見てしまうのは大人になったからか。
 
 そういえば、自分も若いときある女の子に「3番目にならない?」と言われたことあるっけ。
 
 1番目が「大人の包容力と経済力」で2番目が「年下のかわいさと、若さゆえの愚かさ」を持っている。
 
 で3番目が「そういう話を、おもしろがって聞いている奇特なヤツ」という対象に想定していたとか。
 
 まあたしかに「オレをなめんな」「それは本当の恋なのか、本当の幸せなのか?」とか、あんまし思わせないタイプだったけどね。

 実際はそんなことないというか、本気で恋するととかなりバグるタイプだけど、このコに関しては、どちらかといえば「好奇心」ベースの好きだったから、「ざけんな!」とはならなかったなあ。

 で、どうなったかといえばとか、昔のことを思い出しながら、そのまま眠ってしまう。
 

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