多々良島ふたたび 井上慶太vs久保利明 2009年 第67期B級1組順位戦 その2

2023年05月30日 | 将棋・名局

 前回の続き。

 A級から落ちて10年目の2009年

 第67期B級1組順位戦で、昇級のチャンスをむかえた45歳井上慶太八段

 ここまで、ラストの2局で1つでも勝てばA級復帰というパターンを2度も逃がし、今回も2敗をキープしながらラス前で、勝てば昇級という一番を森下卓九段相手に勝ちきれない。

 正直「またか……」とファンは、いやだれより本人こそがそう思ったことだろうが、最終戦が久保利明棋王という超難敵であったことがかえって良かったというのだから、勝負というのはわからない。

 タイトルホルダーが相手とあって、なかば「あきらめていた」という気楽さから、先日紹介した米長邦雄九段のように、井上はかえって内容のいい将棋を見せることになる。

  
 
 
 

 ▲72とと引いたのに△63角と打ったのが、井上自慢の切り返し。

 と金に当てながら、△41にもヒモをつけ、攻めては△27角成から△49馬のねらいもあるという、まさに八方にらみだ。

 将棋はこれで井上が優勢、いや勝勢といっていい流れに。

  
 

 

 しかし、ここから「勝ち切る」となると、これまた大変なのは皆様もご存じの通り。

 しかも相手は、ねばり強さに定評のある、いや、ありすぎる久保利明である。
 
 


 「正直ここで投了されるか……」



 
 
 などという甘すぎる期待なんかに、応えてくれるはずもないのだ。

 

 


 
 
 
 
 
 
 
 ▲79銀打が「ねばりもアーティスト」な久保利明、根性の受け。
 
 銀取りを受けただけで、しかも貴重な持駒も投入しているという、夢も希望もないがんばりだが、こういう大差の将棋が次第にアヤシクなるというのは、よく見る光景。
 
 


 「どう指しても勝ちなのでかえって迷ってしまった」



 
 
 井上も反省するように、ここから苦労を強いられるのだが、「どう指しても勝ち」という局面が結構危ないというのは、本当にその通りなのだ。
 
 井上もこれといった悪手を指しているわけでもないのに、いくつか決定機を逃しただけで、もうわけがわからない。
 
 それでも、なんとか先手玉に迫り、△57歩成となったところで、ようやっと後手は勝ちを確信
 
 
 

 
 ▲29銀を取っても、△58とから詰みで受けもない。
 
 ホッとしたところだが、井上は次の手が見えていなかった。

 

 

 


 
 
 
 
 ▲45飛と打つのが、しぶとい攻防手。
 
 受けなしはずの先手玉だったが、王手しながら飛車4筋に利かしたことで、必至がほどけてしまった。
 
 そこからさらに、玉の逃げ方を間違えたせいで盤上は泥仕合の様相を呈する。
 
 それでもまだ後手優勢だろうが、大差でむかえた9回2死ツーストライクから、どんどん点差を縮められては、気分的にはもう余裕など吹っ飛んでいる。
 
 現に井上も、対局前は「よい将棋をさせれば」と殊勝な面持ちで盤に向かっていたが、このあたりでは
 
 
 


 「どんな内容でもいいから勝たせてください」



 
 
 泣きたくなっていたというから、本当に人の心はままならず、将棋はおもしろい。


 
 
 
  
 最終盤、▲96角が入ったところでは、双方1分将棋ということもあって、もうなにが起こってもおかしくないが、ここから△65玉とかわしたのが冷静な手だった。
 
 ▲69香の食いつきに、△37とと補充して、▲同玉△67桂と止めたのが最後の決め手。

 

 駒がゴチャゴチャしてわかりにくいが、これで後手玉に寄りはない(らしい)。

 以下、久保も▲78桂から死に物狂いの食いつきを見せるが、最後は盤上の駒がすべて働くピッタリした詰みがあって、かろうじて井上が逃げ切った。
 
 これで井上は日程の関係で、一足早く8勝4敗でフィニッシュ。
 
 同時に3敗首位を走っていた杉本昌隆七段が敗れたため、ここで井上の昇級が決まった。
 
 このとき稲葉陽四段菅井竜也三段船江恒平三段井上門下生が応援に来ており昇級を一緒に喜んだそうだが、このあたり好人物井上の人柄がしのばれるところ。

 

 

 


 
 もっとも、最終盤では師匠の乱れっぷりに、みなパニックに陥っていたそうですが(笑)。
 
 こうして井上は10年ぶりのA級復帰を決めた。
 
 45歳にして、タイトルホルダーの久保利明や渡辺明、上り調子の山崎隆之などをおさえての昇級となれば、これはなかなかの快挙と言えるのではあるまいか。

 

 (その他の将棋記事はこちらからどうぞ)

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故郷はA級 井上慶太vs久保利明 2009年 第67期B級1組順位戦

2023年05月29日 | 将棋・名局

 井上慶太のA級での戦いぶりは、実にドラマチックであった。
 
 ということで、前回はA級で見事な戦いぶりを見せた、若き日の井上慶太九段の将棋を紹介した。
 
 特にラス前の米長邦雄九段と、最終戦の島朗八段は結果だけでなく、負ければお終いという恐怖の中ひるむことなく、のびのびとした将棋を見せたことも評価されるべきだろう。
 
 こうして一躍名をあげた井上だったが、A級のはなかなかきびしく、翌期には2勝6敗の成績で降級してしまう。
 
 ここからも試練が続き、出直しとなったB1では7勝2敗の好成績でトップを走るも、残り2局のうち、どちらかを勝てば1期でのA級復帰というところから2連敗
 
 4期目にもやはり7勝2敗で、残り2局のどちらかを勝てばいいところを、またも2連敗してしまう。
 
 この時期の井上は妙に勝負弱く、本人もふがいなく思っていたそうだが、その後は平凡な成績が続くことになる。

 このままB1に定着してしまうのかと思いきや、陥落10年目の2009年にみたびのチャンスがおとずれるのだから、腐らずにがんばってみるものである。
 
 といっても、これは井上にとって思いもよらなかったことらしく、45歳という年齢にくわえ、この年は開幕前の成績が3勝15敗という絶不調におちいっていたからだ。
 
 それが不思議と順位戦には星が集まり、7勝3敗で残り2戦
 
 ここで首位に立って自力昇級の権利を手に入れるが、ラス前で森下卓九段に敗れ、またも土壇場で勝負弱さを発揮してしまう。

 それでもまだ昇級の可能性は残していたが、最終戦が久保利明棋王という大強敵とあって、本人的にはほとんどあきらめていたのだそうだ。
 
 ただ、その気楽さがかえってよかったか、井上はここでいい将棋を見せることになる。
 
 3敗4敗直接対決の大一番は、久保が先手で石田流に。
 
 
 
 
 
 ▲76歩△34歩▲75歩△85歩に、早速▲74歩と突くのが、このころ流行っていた形。
 
 △同歩▲同飛△88角成▲同銀△65角▲56角と打ち返すのが「升田幸三賞」も受賞した鈴木大介九段の新手
 
 
 
 
 

 なにやらすごい形だが、ここから△74角▲同角と進んで、先手は▲55角から2枚角でゆさぶり、後手は自陣飛車を打って2枚飛車でそれを押さえるという、むずかしい戦いに。
 
 そこからゴチャゴチャやり合って、この局面。

 

 

 形勢はわからないが、久保が優勢にする手を逃したという評判で、井上自身も自分がやれるのではと感じていた。
 
 とここで、久保が軽妙な手を発する。
 

 

 


 
 
 
 
 
 ▲73歩成△同金▲72歩が好手順。
 
 久保の左手が舞う光景が見えるような、きれいな攻め筋だが、これが井上の意表を突いた。

 飛車角が、それぞれの位置から後手玉をスナイプしており、金でも銀でも取れないのだ。
 
 まったく見えてなかったことから、ガックリきてしまったそうだが、ここで35分とまとまった時間を投入してを落ち着けられたのは幸運だったよう。
 
 あらためて読み直してみると、いかにも決まっているような歩打ちだが、意外に耐えているのではと△84飛と取る。
 
 先手は当然▲71歩成。一回△42玉と逃げだすが、▲72とと追撃されて困っているように見える。
 
 
 
 
 
 
 △同金▲53歩成△同玉▲41飛成で先手が優勢。
 
 決まったようだが、ここで井上も会心の切り返しを見せる。

 

 

 


 
 
 
 
 
 
 △63角が「私好み」と自賛するピッタリの受け。
 
 と金取りにしながら△41にもヒモをつけ、またどこかで△27角成と飛び込めれば、△57と連動して、すこぶるきびしい手になる。
 
 先手は飛車を渡すと△69飛の一撃で即死するので、も取れないのだ。
 
 見事なしのぎで、将棋はそのまま井上の必勝形に。

   
 

 

 しかも持ち時間も久保が5分なのに、自分は30分以上も残している。
 
 「勝てる……」と、ここでようやっと優勢を意識した井上だが、その瞬間にヨレ出すというのは将棋のお約束でもある。


 (続く) 

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解散MAT 脱出TAC お遊びZAT 全滅MAC とりあえずシェルターに謝って編

2023年05月26日 | オタク・サブカル

 前回に続いて、「トーマス・ヨハンソン世代」が中心のオタク談義。
 
 特撮にくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂ったエピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、

 
 「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
 
 
 すっかり疑心暗鬼に。
 
 そりゃまあ、

 

 「正義のヒーローの必殺技に《シルバーめくら手裏剣》というのがある」

 

 なんて言われても、「え? それネタやろ?」としか思いませんわな。
 
 では、まずは登場人物。
 
 
 1.ベットウ
 
 後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。

 好きなマヌケ怪獣はビーコン
 
 
   
 2.ワカバヤシ

 元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。

 好きなマヌケ怪獣は特になし。
 
 
  
 3.カネダ先輩

 SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。

 好きなマヌケ怪獣はキングカッパー

 
 
 4.

 特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。

 好きなマヌケ怪獣はデットン

 

 

■前回は『ウルトラマンタロウ』のZATの楽しさについて語っていましたが、どうもそこにモノ申したいときもあるようで……。

 

ワカバヤシ「なんか、みんなで楽しくツッコミ入れたくなるほど変なんだ、タロウとZATって」

ベットウ「一言で言えば、呑気なんですよ」
 
「有名なところでは、おにぎり食べながら会議してるとか」
 
カネダ「怪獣出現の連絡を受けて、出動する隊員の選ばれた理由が【昨日、カレーを食べたから】」
 
ベットウ「自衛隊が、災害派遣のメンバーをそれで選んでたら、間違いなく炎上ですよね」
 
ワカバヤシMATとかTACとは全然違うんだね」

「でも、それはそれで問題でやな。オレ、こないだたまたまシェルターの回見たんやけど、アレはひどかったなあ」
 
ベットウ「はいはい。第13話《怪獣の虫歯が痛い!》」
 
ワカバヤシ「虫歯……。なんか、タイトルからしてアレだよね」
 
「そもそも、シェルターって虫歯やないねん。ZATが訓練で打った水中ロケットが、歯にはさまってるだけっていう」
 
ワカバヤシ「ゲ、それ、すごい痛そう」
 
ベットウ「痛いですよ。マブチモーターが歯にはさまるようなもんですもん」

ワカバヤシ「いや、その例えはよくわかんないけど」
 
「で、痛くて暴れるから、ZATがその歯を抜こうとして、スカイホエールっていう変な戦闘機に糸付けて……」

ワカバヤシ「あー、子供が乳歯抜くときの感じね」

東光太郎(ウルトラマンタロウ)が行くんやけど、なんとそこで、関係ない健康な歯を抜いてまう!」
 
ワカバヤシ「えー! それはダメだよ!」
 
「そう。麻酔もなしで、いきなり歯を引っこ抜かれるんやから、ひどすぎるねん」
 
カネダ「『マラソンマン』や」
 
ベットウ「あの映画史に残る、残酷なナチの拷問をZATが(笑)」
 
「で、激痛に耐えかねて、シェルターが火を吐いて大暴れするもんやから、宮崎県が壊滅状態に」
 
ワカバヤシ「蛙亭のイワクラさんが泣くなあ」

 

 

 

ZATの大型戦闘機スカイホエールを使って、シェルターの歯から強引に水中ロケットを抜こうとするところ。
ここで東光太郎隊員(シェルターにロケットを打ちこんだ張本人)が間違えて(!)健康な歯を抜いてしまう。
ZAT隊員たちのアホ面(としか言いようがない)があるせいでコメディーチックになっているが、ちょっとヒドイ話である。


 


「もうこれだけで、ZATの責任問題は尋常じゃないけどさ」
 
ベットウ「とりあえず、光太郎はクビですよね」

「結局ZATがやっつけるねんけど、シェルターなんも悪いことしてへんやん!」

カネダ「ちなみにシェルターは、タロウのストリウム光線が効かない強敵」
 
ワカバヤシ「平和に暮らしてたら、いきなり歯にロケット打ちこまれて、泣きながら(本当に涙を流している)痛い痛いって暴れたら、健康な歯を麻酔なしで抜かれて、あげくに殺されて、宮崎県民にはきっと恨まれて」
 
ベットウ「光太郎も最後、一応あやまってましたけどね」
 
カネダごめんですんだら警察いらんって、こういうときのための言葉なんやなあ」

カネダぺスターに発砲して工業地帯を壊滅させたイデ隊員以上かもしれん」

「あれもすごい。全身に原油をためこんでる【油獣】相手に《絶対に発砲するなよ》いう命令のはずが……」

ベットウ「あせって、思わず撃ってまうんですよね。ほんでドッカン」

ワカバヤシ「なんだか、《押すなよ、絶対押すなよ》みたいなノリだねえ」

カネダ「笑いごとやない。それで京浜工業地帯の石油コンビナートが全滅するんやから」

ワカバヤシ「え! 大事じゃないですか!」

ベットウ「大事も大事。職員さんに、《こんな状況で撃ったら、素人でもどうなるかわかるやん!》てマジギレされて」

カネダ「ほんで、イデ隊員が《ボク、科特隊辞めます》いうのをムラマツキャップが止めて、なんか感動のシーンぽいけど」

「絶対、そんなもんでゆるされる被害やなかったよ」

ワカバヤシ「どの組織も、身内には甘いんだよ」

カネダ「でも、あの被害状況は見てて結構、陰惨な気分になるねん」

ベットウ「今やったら暴露系ユーチューバーに《犯人コイツ》って、顔さらされますね、きっと」

「まあ、特撮がすごかったから、オレはゆるすけど」

ワカバヤシ「そういう問題なの?」

ベットウ「この人は、そういう人なんです。たぶん、シリアルキラーがおっても特撮が上手かったら裁判で無罪に投票するんんです」

ワカバヤシ「そのエピソードは問題だけど、聞いてたら、タロウってちょっとおもしろそうなんだけど」
 
ベットウ「そう、今見るとおもしろいんですよ」
 
「子供は逆に背伸びしてハードなもんが見たいわけ。だから、子供とか出して媚びられると、冷めるねん」
 
カネダ「変っていうのも、良い言い方すれば【新しいことに挑戦してる】ってことやしな」
 
ベットウ「そうそう。酔っぱらい怪獣に水ぶっかけたりとか、そう見せかけて、変にダークなエピソードとか、シュールな回とかあったり」
 
「家族がキノコ人間になってるラストはおぼえてるなあ」
 
カネダ「映画『悪い種子』みたいな話もあったりとか」

ベットウ「かと思えば、食いしん坊怪獣モットクレロンなんて、センス爆発な怪獣もいるし」
 
「仲間同士で、一杯やりながらワイワイ見るのが最高。特撮もいいし」
 
ベットウ「良くも悪くも、平和ですよね、タロウは」

 

 (『ウルトラマンレオ』MAC編に続く)
 

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勇気ある戦い 井上慶太vs島朗 1998年 第56期A級順位戦

2023年05月23日 | 将棋・名局

 前回の続き。

 1998年の第56期A級順位戦

 ラス前で、米長邦雄九段との3勝同士の血戦を制したのは井上慶太八段だった。

 これで4勝目を挙げると同時に井上は、最終戦を自力残留の権利を持って戦えることになった。

 ここで残留できるか、それとも降級して「日帰り、お疲れ様でした」となるかは後の井上のキャリアにとって、とてつもなく大きなとなる。

 最後の試練に待ち受けるのは、竜王のタイトルも経験している島朗八段
 
 ここに勝てば文句なしでA級残留となるが、敗れると米長が勝って4勝で並ばれた場合、順位の差で降級となってしまう。
 
 井上からすれば、自身の勝負もさることながら、人気棋士で名人経験もある米長が陥落となれば「現役引退」もあり得るところから、


 
 「米長がんばれ!」


 
 という世論の声とも戦わなければならず、そのプレッシャーは大変なものだったろう。

 そんな井上が決戦に用意してきた作戦は、得意の矢倉ではなく、横歩取りだった。
 
 前年、中座真四段がはじめて披露し、野月浩貴四段がその優秀性に気づいた「△85飛車戦法」だ。

 
 
 

 


 井上自身、なんと公式戦で指すのははじめてだったそうで、そもそもこの「中座飛車」自体、まださほど市民権を得るほどには知られていなかった。
 
 そこをこのシビれる一番にぶつけてきたということで、この選択は当時話題になったが、未知の新戦法を井上は見事に乗りこなして戦う。

 とその前に、ちょっと競争相手である米長の将棋も見てみたい。

 順位戦というもののおもしろいところは、こういう「勝てば残留(もしくは昇級)」というケースに加えて、星や順位の差によって

 

 「自分が負けても、ライバルが負ければ残留(昇級)」

 

 また逆に自分が勝っても、相手にも勝たれたら報われないなどあり、この場合は前者井上後者米長だが、こういうところに心理のアヤがある。

 今回の場合、米長は勝たないとどうしようもないが「他力」であるため、なかば覚悟を決めているところもあるだろう。

 ただそれが、かえって開き直りを生んで、手が伸びて戦えるということもあり、実際この将棋の米長はそんな感じだったのだ。

 

 

 

 「他力」で戦う米長は、加藤一二三九段と対決。

 両者おなじみの相矢倉から、米長が前局に続き果敢な踏みこみを見せる。

 

 

 

 

 

 ▲75銀と出るのが、勢いのいいぶつけ。

 △同銀でタダに見えるが、そこで▲76歩と打って取り返せる。

 そこから、△34歩▲75歩△54金▲74歩△72歩と、あやまらせて好調子。

 さらに▲55歩△45金として、角取りにかまわず▲54歩が勢いある手で、米長の優勢がハッキリしてきた。

 

 

 

 加藤も再度△52歩と辛抱しチャンスを待つが、▲53歩成が軽妙な手で、△同歩角筋を2重に止めてから▲57角と転進。

 △65歩▲37桂と気持ちよく活用し、△55金▲84角と角までさばいて、△63飛▲25桂と華麗な跳躍。

 

 

 

 見事な手順というか、こんなので勝てたら将棋はやめられないのではという、気持ちよすぎる攻め方なのだった。

 この棋譜を並べながら、しみじみと思ったものだ。

 ラス前の「決戦」では暴発となった積極性が、「他力」の将棋だとこんなにも、うまくハマるのだから、まことプレッシャーというものが指し手にあたえる影響のすさまじさよ。

 これで井上は勝つしかなくなった。

 もちろん、井上はそんなこと知るよしもなく、もともと

 「負けて助かるなんて、虫のいいことは考えないぞ」

 とは腹をくくっていたろうが、「もしかしたらワンチャン……」という気も、なかったとはいえないだろう。

 とはいえ、このときの井上は、そんなことを微塵も感じさせない戦いぶりを見せたのだから、立派なものだ。

  
  
 
 

 

 難解なねじり合いから島に一矢あり、井上優勢となっている。

 図は△38歩とタタいたところに、島が▲55角に当てたところだが、ここから井上が怒涛の寄り身を見せる。

 

 


 
 
 
 
 
 
 △46桂と打つのが、うまい切り返し。
 
 ▲同歩角道を遮断して、飛車取りを解除してから△39歩成と取る。
 
 受けのなくなった島は▲23歩成と攻め合うが、△49と▲29歩△48と▲同玉△75飛▲33歩成△18竜▲28金

 


 
 
 後手玉も相当に危険だが「中原囲い」は、こういう場面から意外と耐久力があるもの。
 
 ここが決め所で、△55飛を取る。
 
 先手は▲43とと詰めろをかけるが、そこで一回△42金と受けるのが落ち着いた手。
 
 これで先手から後続がない。▲同と△同玉▲18金△69角と打って決まった。


  
 
 
 
 先手玉は必至で、後手玉は▲32飛から追っても詰みはない。
 
 以下、いくばくもなく島が投了。井上が初のA級で見事に残留。しかも勝ち越しで決めたのだった。

 降級した米長は、ちょっとめんどくさいやり取り(新聞社の偉い人が頼んでくれば引退しない、みたいな)があった末にフリークラスを宣言。事実上、引退をすることとなる。

 こうして波乱のリーグは終わったが、それにしても井上の戦いぶりは見事だった。
 
 負ければお終いという2局を、下を見る戦いとは思えないほど積極的に戦っていた。
 
 全体的に手が伸びていた。見ていて気持ちの良い棋譜だ。
 
 最高峰のリーグ戦、しかも最大級にプレッシャーがかかる状況でこれだけの将棋が指せたのだから、この2局は井上の棋士人生における、語られるべき傑作と言ってもいいのではあるまいか。
 

 

 (10年後、井上のA級復帰への戦いへ続く)

 (その他の将棋記事はこちらからどうぞ)

 

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解散MAT 謹慎TAC 脱出ZAT 全滅MAC ラビットパンダとウルフ777でZariba編

2023年05月20日 | オタク・サブカル

 前回に続いて、「伊奈祐介世代」が中心のオタク談義。
 
 特撮にくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂ったエピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、

 
 「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
 
 
 すっかり疑心暗鬼に。
 
 そりゃまあ、

 

 「ウルトラマンが敵の超能力をはね返すときに使うのが、ホームセンターとかで売ってるただのこうもり傘

 

 なんて言われても、「え? それネタやろ?」としか思いませんわな。
 
 では、まずは登場人物。
 
 
 1.ベットウ
 
 後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。

 好きな特撮の車はズバッカー
 
 
   
 2.ワカバヤシ

 元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。

 好きな特撮の車は特になし。
 
 
  
 3.カネダ先輩

 SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。

 好きな特撮の車はライジン号

 
 
 4.

 特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。

 好きな特撮の車は流星号
 

 

 ■ZAT編の続きです。 

 

カネダ「タロウはストーリーとか怪獣はあんましおぼえてないけど、ツッコミどころだけは記憶にあるなあ」

ベットウ「ZATはメカもファニーですしね。忘れられんインパクトです」
 
「あー、誤植やったんやろうなっていうペルミダー2世とかね」

 

 

 


 


ベットウ「ベルシダーの【シ】が【ミ】に見えたんでしょうね」

私「日本語を勉強してる外国人に【ツ】と【シ】に【ン】と【ソ】の区別が難しいみたいな」

カネダ「字が汚かったんやろうな」
 
ベットウ「【インド人を右に】みたいなもんですね」

「そもそもあれって、【ベルシダー】やから【ペ】やなくて【ベ】やと思うねんけど」

カネダゲッベルス問題か」

ワカバヤシ「つい【ゲッペルス】って書いてしまうという」

ベットウ「僕もいまだにシンディー・【ローバー】か【ローパー】かわかりませんわ」

カネダ「あー『グーニーズはグッド・イナフ』のねーちゃん」

「【ローバー】ちゃうの? ローパーは『ドルアーガの塔』におるやつやろ」

ワカバヤシ「違うよ。【シンディー・ローパー】が正しいって」

「(スマホで調べて)Cyndi Lauperか。オレも間違っとった。ローバーは美々や」

カネダ「そのその思い出し方も、どうなんや」

ベットウ「だいたいが、ベルシダーの元ネタが『地底世界ペルシダー』やから、ややこしいんですよ」
 
「ZATに戻すと、あと、お約束のラビットパンダ

 

 

 


 


カネダ「あれ乗って、パトロールに行くメンタルの強さ」
 
ワカバヤシ「なるほど、つっこまれるねえ」

「硬派な特撮ファンはホントに嫌がるんよな、この車」

カネダ山口県の公用車も、これやったら全然ゆるしてくれたんちゃうか」

ベットウ「そういや昔、よっちゃん食品の社長が世界に数台の希少なロールス・ロイスのボディに【よっちゃんイカ】って書かせて走ってましたね」

「あれ、中島らもの本で読んだけど、ホンマなんや。おもしろ都市伝説やと思うてた」

カネダ「あれマジやで。オレ、写真見たことあるもん。ご丁寧に、金色に塗ってるからね」

ワカバヤシ「いいセンスだなあ。高級車の乗り方の《正解》って感じがするよ」

「じゃあ、ロールス・ロイス側が《お願いやからやめてください!》て、土下座して頼んできたのもホンマなんですね」

カネダ「土下座は知らんけど、本気で抗議してきたのは事実」

 

 

 

 

ワカバヤシ「これはスゴイねえ。そりゃ、やめてと言いたくもなる」

ベットウシャネルから《イメージ下がるから、アンタ着んといて》って言われた泉ピン子みたいですなあ」
 
「でも、ZATもラビットパンダだけやない。地味やけど、ウルフ777も捨てがたいですぜ」
 
カネダ「パチンコ屋みたいなネーミング」

 

 

 


 

 

ワカバヤシ「これで怪獣と戦うんだ」
 
「それこそ、地震や台風で困ってるとき、こんな車来られても、困るかも」
 
ベットウ「完全に、大喜利の【こんな正義の組織はイヤだ】でしょ」
 
カネダ「ZATはこのメカで、変な戦い方するしね」
 
「怪獣にコショウ振りかけて、くしゃみさせたり」
 
ベットウライブキングに飲みこまれた、東光太郎救出作戦」
 
ワカバヤシ「え? もしかして、ハーックション! て、体内から吐き出させるの?」
 
ベットウ「そうです」
 
ワカバヤシ「なんか、童話にそんな話あったような」
 
ベットウ「あー、でもタロウはそういう感じです。童話というか、ファンタジー」
 
「月からモチ食べに来た杵怪獣と、相撲で親交を深めたあと、その杵使って月星人と、ウルトラの父とで餅つき大会するし」
 
ワカバヤシ「え? それどういう意味?」
 
ベットウ「だから、そのままです。月からモチ食べに来た杵怪獣と、相撲で親交を深めたあと、その杵使って月星人と、ウルトラの父とで餅つき大会する
 
ワカバヤシ「全然、ついていけてないんだけど……」
 
カネダ「坂口良子が怪獣とバレーボールしたり」
 
ワカバヤシ「はあ?」
 
ベットウ「バレーボールで金メダル取った、ミュンヘン・オリンピックの流れですね」

カネダ「『犬神家の一族』の良子はかわいかったなあ」

ベットウ「まあ、こういう時事ネタを入れるのは、特撮のノリみたいなもんですよね」

「ゴモラザウルスと大阪万博とか、サイケ宇宙人ペロリンガ星人とか」

カネダ「今やったら、大谷翔平と野球するやろな」

ベットウ羽生結弦とスケートとか」

藤井(聡太)君と将棋もマストやね」

ワカバヤシ「M−1優勝したウエストランドに出てもらって、漫才のネタにしてもらったら、おもしろそうだねえ」

カネダ「もしくは、さや香で《免許返納せえ!》って言うてもらうかやな」


 (続く
 

 

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怪獣無法地帯 井上慶太vs米長邦雄 1998年 第56期A級順位戦

2023年05月17日 | 将棋・名局

 井上慶太のA級での戦いぶりは、実にドラマチックであった。
 
 前回は井上がC2時代に昇級の一番で、まさかの大ポカをしてしまった将棋を紹介したが、そこで苦労したものの、一回抜けてしまえばあとは一気だった。

 C1こそ9勝1敗の頭ハネ(9割勝って上がれないって、どんなリーグだよ)などで4期かかったもののB22期B11期抜けで34歳にしてついにA級に到達したのだ。
 
 棋士のだれもがあこがれる舞台に立ち、「夢と希望に胸をふくらませていた」という井上は初戦で、中原誠永世十段を破るという好スタートを切る。
 
 2回戦こそ加藤一二三九段(58歳!)に敗れるも、3回戦では前期まで名人だった羽生善治四冠を撃破。
 
 続く高橋道雄九段戦も制して3勝1敗と快走し、羽生や森下卓八段佐藤康光八段らと並んでトップを走ることに。

 ここまではまさに「夢と希望」の展開だが、A級はそんな甘いところではなく、ここからが地獄のはじまりだった。
 
 続く5回戦の森下戦を落とすと、そこから佐藤康光戦、森内俊之八段戦と3連敗
 
 これで井上はトップグループから、一気に9位の成績に転落。
 
 それどころか、次の米長邦雄九段との3勝同士の直接対決に敗れると、最終戦に仮に勝っても、同じ3勝の森内と加藤の2人ともが2連敗してくれないと落ちてしまうのだ。
 
 双方、負ければほぼお終いの鬼勝負は、後手番の米長が意表の陽動振り飛車に。
 
 井上は5筋の位を取ると、4筋から金銀を盛り上げて仕掛けて行く。

 
 
 図は▲46歩、△同歩、▲同銀と進撃したところだが、ここで米長の見せた手が激しかった。
 
 
 
 
 
 △55銀(!)、▲同銀△49飛成
 
 なんと、銀損で飛車を侵入させるという猛攻を仕掛けてきたのだ。
 
 先手の玉形が不安定なところをついてのことだろうが、一回▲59歩底歩が効くのが強味で、一気には決まらない。
 
 首のかかった一番にもかかわらずというか、だからこそというべきか、米長のみならず井上もこの将棋は積極的で、△49飛成▲59歩△54歩▲45桂とダイブ。
 
 
 たしかに、銀を逃げる手は指せないが、それにしても激しい。
 
 順位戦の大勝負はどちらもが慎重になりすぎて、まったく局面が動かないことも多いが、
 
 「フルえてはイカン!」
 
 とばかりに意識しすぎて単調な攻め合いになったり、過剰なたたき合いになったりすることもあり、この一局もそうなのかもしれない。
 
 ▲45桂には△55歩と取って、▲53銀、△72玉、▲33桂不成△56歩▲41桂成と、足を止めての打ち合い。いや、激しい。

 


 形勢は大きな駒得となった井上優勢と見られていたが、まだ、むずかしいところもあるという声も。
 
 米長としてはどこかで一回、△54金のように受けに回っておけば戦えたようだが、一度走り出した列車は止まらない。

 一気の攻め合いに持って行き、それが結果的には敗着となる。
 
 

 △67歩がきびしい一打のようだが、この将棋の井上はどこまでも前向きだった。


 
 
 
 ▲55角と出るのが、この激戦を制した勇者の一手。
 
 △68歩成とボロッとを取られるが、▲同飛と手順に、飛車を急所の位置に設置できるのがピッタリの返し技。

 これで後手玉に受けはなく、井上が大一番を制す。

 4勝目を挙げた井上は最終戦を勝てば、文句なしの残留という権利を獲得。

 一方の米長は勝っても、井上の結果次第で26年連続(名人1期ふくむ)で守ったA級の地位を失うという、崖っぷちに立たされることとなったのだ。
 

 (続く
 
 

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解散MAT 脱出TAC お遊びZAT 全滅MAC カレーとおにぎり食べて怪獣退治 編

2023年05月14日 | オタク・サブカル

 こないだに続いて、「堀口一史座世代」が中心のオタク談義。
 
 特撮にくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂ったエピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、

 
 「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
 
 
 すっかり疑心暗鬼に。
 
 そりゃまあ、
 
 
 「ロボットが突然、質量保存則とか無視して巨大化するのを【正義の力だ】でゴリ押しする」 
 
 
 なんて言われても、「え? それネタやろ?」としか思いませんわな。
 
 では、まずは登場人物。
 
 
 1.ベットウ
 
 後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。
 
 好きな『ウルトラマンタロウ』の怪獣はデッパラス
 
   
 2.ワカバヤシ

 元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
 
 好きな『ウルトラマンタロウ』の怪獣は特になし。
 
  
 3.カネダ先輩

 SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。

 好きな『ウルトラマンタロウ』の怪獣はサメクジラ
 
 
 4.

 特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。
 
 好きな『ウルトラマンタロウ』の怪獣はコスモリキッド
 


ベットウ「というわけで、TACは《就職したくない地球防衛組織》で、結構上の方に行くんですよ」

ワカバヤシ「まあ、言いたいことはわかんなくもないけどねえ」

「でも切断は良いから、『ウルトラマンA』見ようね!」

ベットウQ歯科と久里虫太郎もヨロシク!」

カネダ「ついでに、ZATも行こうか」

ベットウ「【Zariba of All Territory】を略して。ZAT。『ウルトラマンタロウ』に出てきた地球防衛チーム」

ワカバヤシ「ふーん。で、【Zariba】ってなに?」

「ん?」

ワカバヤシ「ほら、ここまでは【Monster Attack Team】【Terrible - monster Attacking Crew】とか、チーム名の意味はわかるじゃん。英語として正しいかは知らないけど」

ベットウ「【Terrible - monster】で超獣は絶対ちがうでしょうね」

カネダ「つーか、【Terrible - monster】って、ふつうに「恐ろしい怪物」っていう一般名詞やろ」

ワカバヤシ「でもこの【Zariba】って、聞いたことないんだけど、どういう意味?」

「あー、はいはい」

ベットウ「【Zariba】問題ですね」

ワカバヤシ「問題って、そんな大層なハナシなの?」

ベットウ「これがパッと見、意味がわからんて、特撮ファンでも思うんですよ」

ワカバヤシ「そうなんだ。よかった、ボクがバカなのかと思った」

カネダ「つーか、ワカバヤシが知らん時点で、だいぶ変な単語やってわかるよな(注・ワカバヤシ君は学生時代、とっても偏差値の高かった人なのです)」

「で、まあ調べるわけよ。みんな」

ワカバヤシ「あ、調べるんだ」

ベットウ「そりゃまあ」

カネダ「調べるよ、そんなん。知りたいやん」

ワカバヤシ「偉いねえ。オタクの鏡だ」

「特撮ファンは2種類に分かれる。Zaribaを辞書で調べる者と、そうでない者」

ワカバヤシ「今、名言っぽく、どうでもいいことを言った」

カネダ「調べないやつは、ぶったるんどる!」

ベットウ「ちょっと、特撮を語る資格ないっスよね」

「フ、ド素人が」

ワカバヤシ「嗚呼、この人たちは排他的な悪いオタクだ」

ベットウウェブスターに載ってないって言われてましたよね」

カネダ「だれが言うたんやろ」

「載ってたよね、ふつうの辞書に」

ベットウ「うんうん」

「学校で買わされた英和辞典に、載ってた記憶あるもん」

ワカバヤシ「で、どういう意味なの?」

カネダ「なんかねえ、【防護柵】みたいなもんらしい」

ワカバヤシ「なるほど。それで『全地域の防護柵』で、まあ地球とか宇宙全体を守ってると」

「でも、その【防護柵】が変でねえ」

カネダ「なんか、アフリカで家畜を囲い込むのに使う柵かなんかで」

ワカバヤシ「なにそれ?」

「なにそれって、なんか、そんなんやねん」

ベットウ「写真見たら、小学校の飼育小屋の柵みたいなやつなんですよ」

カネダ「全然、【地球防衛】のイメージとちやうねん」

「あんなヘナヘナな柵、子供でも乗り越えられるわ!」

ワカバヤシ「(ウィキペディアを見て)あー、これはないねー」

 

 

Wikipediaより「zariba」の画像。こんなもんで宇宙からの侵略をどうしようと。

 

「ないやろ」

ベットウ「絶対、おかしいですよ。しかもなんか、スーダンかどっかの俗語らしい」

カネダ「現地語表記だと、絶対にZじゃないよな」

「逆に、ウェブスターに載ってないのも納得や」

ワカバヤシ「なんで、そんなことになってんの?」

カネダ「特撮ファンの予想では、そもそもZATっていう語感は決まってたけど、後付けでZを探したら、なかなか見つからずに、やむをえずっていうのが有力」

ベットウ「それ、調べたらホンマらしいですよ」

「そうなんや」

ベットウ満田かずほ(『ウルトラマン』「謎の恐竜基地」や『ウルトラセブン』「アンドロイド0指令」などを監督)さんが、インタビューで答えてました」

カネダ「まあ、そうやわな」

ベットウ「自然な推理ですもんねえ」

ワカバヤシ「で、その【Zariba】はどんな組織なの?」

「ZATは別名【お遊びZAT】」

ベットウ「あるいは【脱出ZAT】」

ワカバヤシ「脱出は、TACと同じなのかな」

ベットウ「基本はそうですけど、ZATはそもそも基地自体が脱出できるからという説も」

ワカバヤシ「それ、すごいね」

カネダ「基地ごと浮かんで逃げれるっていうね」

「MACも、そうできてたらねえ」

 

 

 

今にも自重で崩れ落ちそうなZAT基地。いざとなったら足を捨てて空を飛び「脱出」できる。絶対に騒音問題でもめてそうな立地。
ちなみに住所は東京都千代田区1-1-1。

 

ベットウ「実際、逃げたことあったかなあ」

カネダ「第1話で、なかったっけ?」

「あったかなー」

ワカバヤシ「なんか、急に歯切れが悪いんだけど」

ベットウ「タロウは、あんま見てないから、おぼえてないところも多いんですよね」

 

 (続く

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谷川浩司名人の手紙 井上慶太vs木下浩一 1989年 第47期C級2組順位戦

2023年05月11日 | 将棋・ポカ ウッカリ トン死

 将棋界でもっともやりきれない「やらかし」は順位戦でのそれであろう。

 人間だれしもミスはするものだが、そのときと場所によっては取り返しがつかないことがある。

 将棋の世界では「大内▲71角」のような、名人位を取り損ねたという悔やんでも悔やみきれない失策もあるが、それと同じくらい、いや場合によってはそれ以上にダメージがあるのが順位戦でのそれではないか。

 今ではそうでもないらしいが、昭和の順位戦というは相当にかたよった棋戦で給料対局料、シード権から、その他連盟内の政治的立場まであらゆるところで、クラスの差がモノをいったという。

 若手時代の森下卓九段は勝ちまくっていた自分より、平凡な成績なのにクラスが上の中堅棋士のほうが何倍もの対局料をもらっていたことを知っておどろいたという。

 また先崎学九段の本でも、その年の勝率一位の棋士より、その年ほとんど勝てなかった上位棋士のほうが年収だったというエピソードが紹介されていた。

 当時の有名な言葉に、こんなのがあって、

 

 「順位戦の1局は新聞棋戦の20局分だ!」

 

 新聞棋戦とは今は使う人はいないが、要するに棋王戦とか新人王戦のような「順位戦以外の棋戦」のこと。

 いやいや順位戦も別に新聞社主催しているんだから、随分とおかしな言葉であるけど、それもあながち極論ともいえなかったほど、この棋戦には良くも悪くも特別感があった。

 それはまさに、のちにA級にまで昇ることになる森下、先崎の両者がC2時代のことを「地獄の日々だった」と回想することからも伝わってくる。

 「Cクラスから上がれない」

 これは金や地位に名誉だけでなく、閉塞感、憤懣、非条理、不公平、自虐や自己嫌悪などをまぜこぜにしたような、もっと大きな精神的負荷を棋士たちにあたえるのだ。

 

 1989年、第47期C級2組順位戦井上慶太五段8勝1敗の好成績で最終局をむかえた。

 デビュー当時から期待されていた井上だが、この順位戦ではなかなか爆発できず、初参加から7-38-26-46-47-3と好成績を残すも昇級までは結びつかなかった。

 とはいえ、もともと力はあるわけで、この年も1敗をキープし2位につけ自力の権利を持ったまま快走。

 最終戦の木下浩一四段に勝てば、文句なしにC1昇級が決まるところまでこぎつけた。

 将棋の方は、木下が先手で相掛かり。井上が攻めを強く呼びこみ、激しいたたき合いに。

 猛攻が一段落したところから、井上が反撃に出て終盤を優勢に進める。

 

 

 

 ▲84角の攻防手に△56歩と突くのが急所中のド急所で、▲88壁金も痛く、一目後手の攻めがに入っている形。

 ▲同歩△57銀と打ちこんで、▲79玉△48銀不成飛車を取る。

 ▲78金と壁を解消して手数を伸ばそうとするが、△69銀

 

 「玉の腹から銀を打て」

 

 の格言通り。

 

 

 

 こういう教科書通りの手がスムーズに入っていくというのは、すでに局面が決定的という証拠。

 ▲68金△58飛と打って、先手玉は受けなしだ。

 手段に窮した木下は▲62角成と切って、△同玉に▲82竜と王手。

 

 

 

 いわゆる「最後のお願い」という手だが、ここではハッキリ後手勝勢で、先手のラッシュは「形作り」の域を出ない。

 ふつうに△63玉とでもかわしておけば、敵は戦力不足なうえに上も抜けていて、これ以上の攻めはない。

 一方、先手玉は放っておけば△68飛成と取って、▲同玉に△78金まで。

 ▲69金を取っても△88金で詰み。

 ▲69玉と取っても、△59飛成▲78玉△79金から△68竜と王手しながらボロボロ駒を取っていけばいい。

 見事な寄せで、1枠は決まりと皆が確信したところで事件が起こった。

 竜の王手に、井上が△72金と打って合駒したのだ。

 

 

 をしかりつけて自然な手に見える。▲73を打っても詰みはなく、竜が逃げれば△68飛成でおしまい。

 ところがこれが、9分9厘手中におさめていたはずの、C1行きの切符を失うウルトラ大悪手だった。

 よく見るとこの局面、完全に後手がすっぽ抜けている。

 なんと、を手放したばっかりに……。

 
 
 

 


 ▲73角△52玉に、ここで▲58金と取れるのを井上はウッカリした。

 △72を使ってしまったばっかりに、ここで後手の攻めがまったく頓挫している。

 いうまでもなく、を手持ちにさえしておけば、△78頭金で詰みだ。

 頭がまっしろになったろう井上は△46角と打つが、▲69玉△82金▲62飛から王手の連続でこのをはずされて勝ちはない。

 まさかの大逆転で、井上は昇級を逃してしまう。

 この期のC2は波乱のリーグで、トップの森下卓五段こそ最終戦を勝ったが、2番手の井上、3番手の沼春雄五段、キャンセル待ち1番手の石川陽生四段と立て続けに敗れたのだ。

 その結果、上位2敗の日浦市郎五段佐藤康光四段が大逆転で昇級

 のち新人王戦で優勝する日浦もさることながら、名人にまで登り詰めた佐藤康光にとっては、結果的に見て、とんでもなく大きな幸運となった。

 この逆転劇には後日談がある。

 大一番をまさかの「一手バッタリ」で落としてしまった井上は、その後浴びるようにを飲み、ただ泣いて暮らした。

 本人によると「将棋をやめよう」と本気で考えるほどに、思いつめたという。

 そこに一通の手紙が届いた。差出人は兄弟子である谷川浩司名人だった。

 そこには、こう書かれていたという。

 


 残念な結果になってしまったけど、報われない努力というのはないと思う。決して悲観する事はない。自信を持って臨めば来期は絶対上がれる。


 

 この手紙の文面は有名で、よく

 

 「谷川は井上に【報われない努力はない】とはげまし」

 

 と紹介されていることが多いが、私が目を引かれたのは、そこに続く「思う」というフレーズだ。 

 大人になれば、いや、ならなくても別にわかることだが、世の中には「報われない努力」なんて山ほどある。

 谷川だってそんなことは承知だ。だから報われない努力はない「と思う」と書いたのだろう。

 ここは文脈的には「報われない努力はない」と断言する方が自然であり(実際その次の井上の未来については、この確実であるはずないものを「絶対上がれる」と書いている)、その弟弟子をはげましたいという気持ちも伝わるのではないか。

 そこを、そうしなかったところこそ、まだ10代だった私は胸を打たれた。

 世間に伝わりやすい、ときに【感動】も呼びやすい「報われない努力はない」よりも、

 

 「報われない努力はないと思う」

 

 この歯切れの悪さこそに、きびしい淘汰の世界に生きる、谷川浩司の精一杯の誠実さを見た気がしたからだ。

 あふれる涙をぬぐいながら、井上慶太はこの手紙を何度も読み返したという。

 次の年、井上は8勝2敗の成績で昇級を決め、7年目にしてようやくC2脱出。

 その後、C1でも9勝1敗の頭ハネをくらうなどで4期かかったものの、B22期B11期抜けで、A級まで昇りつめるのである。

 


 (井上のA級での戦いに続く)

 (郷田真隆のA級昇級の一番での大ポカはこちら

 (先崎学の泥沼C2時代の大ポカはこちら

 (その他の将棋記事はこちらからどうぞ)

 

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解散MAT 脱出TAC お遊びZAT 全滅MAC Q歯科の待合室で、久里虫太郎の劇画を読もう編

2023年05月08日 | オタク・サブカル

 前回に続いて、「矢倉規広世代」が中心のオタク談義。
 
 特撮にくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂ったエピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、

 
 「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
 
 
 すっかり疑心暗鬼に。

 『ウルトラマンA』の防衛組織TACのブラックな労働環境について話していたところから、今回は『A』の魅力(?)について語っているようですが……。


 

「というわけで、TACはあんまり働きたくない防衛チームやねん」

ベットウ「全体的に、イヤな気分になるんすよネ」
 
ワカバヤシ「ネガティブだなあ。じゃあ、Aのいいところはどこなのよ」
 
ベットウ「あ、切断はいいっスよ」
 
「切断はいいね」
 
カネダAといえば切断やなあ」

ワカバヤシ「文字通り、話の脈絡をぶった切られた気がするけど」

ベットウ「(気にせず)みんなは、どの切断が好きっスか?」

「まあ、基本はメトロンに、ドラゴリー

カネダバキシムの首が、ウルトラスラッシュが通過する前に、ゴロンと落ちるところところがええな」

ベットウ「バキシムとガランは、デザインも空割って出るところも、最高ッスね!」

 

 

空をパリンと割って(!)登場するバキシム。このインパクトだけでも『A』は見る価値あり!

 

 

カネダ「あと、バッドバアロンとか」

ベットウ「マイナーやけど、バッドバアロンもいい! バーチカルギロチン!」

「うん。あれは良い切断だ」

ワカバヤシ「人生で、まず使うことないボキャブラリーだろうね。【良い切断】」

「あと、Q歯科な」

カネダ「あれは最高。絶対に行きたくない歯医者」

 

 

 

 

 こういう歯医者です。

 

 

「これはもう、ぜひリンク先から動画を見てほしいけど、ここに虫歯の治療をゆだねる北斗のソリッドなセンスに脱帽や」

カネダ「たぶん、北斗の特殊な性癖やな」

ベットウ「いいッスよねえ。ゾクゾクします。あんな店あったら、僕通いますわー」

ワカバヤシ「あんな店って、どんな店を想像してるのやら」

「あと、久里虫太郎もナイス」

カネダ「あー、アイツはええねー。インパクトあるわー」

 

 

 

売れっ子怪奇作家の久里虫太郎先生。
ヤプールにあたえられた能力により、マンガで描く通りに超獣ガランをあやつることができるようになる。

 

 

ベットウ「中学生のころ、TACの美川隊員にラブレター送ったら封も開けずに突き返されて、そのことがトラウマになってるマンガ家」

ワカバヤシ「あれま、かわいそう」

「で、そのときのことが忘れられずに、美川隊員を呼び出して、軟禁して、ムリヤリ結婚を迫ると」

ベットウ「しかも、逃げたらアーチェリーで攻撃してくる」

ワカバヤシ「超アブナイやつじゃん!」

カネダ「そのラブレターを大人になっても保管してるというのが、またな」

ワカバヤシ「こじらせてるなあ」

ベットウ「で、そのラブレターには恋する気持ちと一緒に、自分が考えたオリジナルの超獣ガランの絵が描いてあるという」

 

 

 

学校一の秀才でもある美少女に、ラブレターとともにこれを渡そうとしたコミュ障劣等生の久里少年。
そら、美川隊員の態度にも責められんところはあります。もらって、どないせえと。


 

3日、学校を休んで描いたというね」

ワカバヤシ「なんか、すごいツライ気分になってきたよ……」

ベットウ「この人、絶対にマンガの中で美川隊員そっくりの女の人出して、殺すか、エロいことさせてたでしょうね」

「創作って、そういうドロドロしたものを【作品】に昇華するもんやからな。それは健全な行為よ」

カネダ「そらフラれるわいう話やけど、ここまでせんにしても、まあ男ってこういうヘマやるよな」

「好きな子の誕生日に、ハインライン『夏への扉』フレドリック・ブラウン『火星人ゴーホーム』をプレゼント包装してもらって渡しました」

ベットウ「はじめて女の子に告白するとき、『カサブランカ』ハンフリー・ボガートのセリフをマネしたら、アッサリ無視されました」

カネダ「オレも、好きになった子に彼氏がおっただけでもショックやのに、そいつがまたスーパーさわやかイケメン君で、なんか『ゲーメスト』読んでゲーセンばっか通ってた自分が、恥ずかしくて死にそうになったで」

ワカバヤシ「そういやボクも……て、なんでこんな流れになってるんですか。元気出しましょうよ」

「おいおい、なにげにスルーしようとすなよ。ワカバヤシはどんな思い出があったんや?」

ワカバヤシ「クラスのイケイケの女子から陰で《第三身分》って呼ばれてた、とか……」

カネダ「みんな、いろいろあるなあ」

ベットウ「思春期はみんな心の中に、小さい久里虫太郎を飼ってるんですよ」

「ただ、ひとつ言いたいのは、アイツ、初犯やないところな」

ベットウ「あー、あれはあきませんよね」

カネダ「たしか、美川隊員が別の女のミイラを見せられて、《意地はりすぎて、この人みたいにならないでね》とか言うんやっけ」

「そうです、そうです。あれでガッカリでしょ。オマエ、美川隊員に一途やなかったんか、と」

ベットウ「結構、いろんな女に行っとるやんけ、と」

カネダ「仁義にもとるな」

「アカンよ、あれは。モテへん男は、せめて一途であれと」

ワカバヤシ「なんか、それも哀しいねえ」

 

 

 

久里虫太郎先生の次回作に期待だ!

 

 (楽しいZAT編に続く)

 

 

 

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解散MAT 謹慎TAC 脱出ZAT 全滅MAC 「ぶったるんどる」テリブルなブラック組織 編

2023年05月07日 | オタク・サブカル

 前回に続いて、「矢倉規広世代」が中心のオタク談義。
 
 特撮にくわしくない友人ワカバヤシ君が、昭和の狂ったエピソードを聞いて、そのあまりのハイセンスな内容に、

 
 「ボクをだまして、からかってるんだろ?」
 
 
 すっかり疑心暗鬼に。
 
 そりゃまあ、
 
 
 「ウルトラマンが怪獣を倒す必殺技に【ウルトラ観音光線】というのがある」 
 
 
 なんて言われても、「え? それネタやろ?」としか思いませんわな。

 前回は上層部から「解散、解散」と詰められまくっていた可哀想な怪獣攻撃隊MATの活躍を語りましたが、今回はブラックと評判のあの組織で……。


 
 では、まずは登場人物。
 
 
 1.ベットウ
 
 後輩。戦隊ヒーロー、アニメ、マンガ、プロレスが得意ジャンル。
 
 好きな超獣はファイアーモンス
  
  
 2.ワカバヤシ

 元関東人。オタクではなく、映画、文学、哲学などにくわしいインテリ。
 
 好きな超獣は特になし。
 
  
 3.カネダ先輩

 SF、ミステリ、映画、ゲームなどが専門。

 好きな超獣はドラゴリー
 
 
 4.

 特撮、SF、ミステリ、映画あたりが専門。
 
 好きな超獣はオイルドリンカー
 


 
ワカバヤシ「なるほどねえ。それで【解散MAT】なんだ」
 
ベットウ「下っ端はツライっすよねえ」
 
カネダ「次は『ウルトラマンA』のTAC行こか」
 
「【Terrible-monster Attacking Crew】略してTAC。《超獣攻撃隊》」
 
ワカバヤシ「ふーん、で、この【ちょうじゅう】ってなに?」
 
カネダ「おいおい、なんちゅう質問や?」
 
「え? 日本に超獣知らん人って、存在するんですか?」
 
ベットウ「戦争中は、こういう人のことを【非国民】って呼んだんですね」

ワカバヤシ「あれ、なんかすごい勢いでカーストが下がる音が聞こえる」

 

 

 

放射能の雨の中、大暴れする超獣バラバ。
「怪獣よりも驚異的なモンスター」とのテコ入れで「超獣」だが、イマイチ定着せずその後はふたたび「怪獣」に戻った。

見ての通り、ムチやハンマーなどギミックが多めで子供ウケするデザインだが、硬派な特撮オタクにはやや不評。

 


 
カネダ「んで、このTACやけど」 
 
「【脱出TAC】」
 
ベットウ「もしくは【謹慎TAC】」
 
ワカバヤシ「まあ、脱出の方は、なんとなく想像はつくけど。あれでしょ?」
 
カネダ「そう、アレ」
 
ワカバヤシ「カッコよく出撃した戦闘機が、怪獣に……」
 
「【超獣】な」
 
ワカバヤシ「(どっちでもいいって言ったら、殺されるんだろうな)とにかく超獣に撃ち落とされて……」
 
ベットウ脱出!」
 
ワカバヤシ「だよねえ」
 
カネダ「いや、そりゃ脱出はええよ。人命第一やし」
 
ベットウ「でも、なんかメチャクチャ安易に考えてるんですよね、脱出シーンを」
 
「戦闘機なんて、買ったらウン千万するのに」
 
カネダ「円じゃなくてドル建てでな」
 
ベットウ「たぶん、米軍のおさがりか不良品を買わされてるんでしょうケド」
 
「それをアータ、そんな豪快にスクラップにしてええのかと」
 
ベットウ「しかも、街中でも平気で墜落させますからね」
 
「もっと人のおらんところで爆発させるよう、努力してほしい」
 
カネダ「でもまあ、TACにそこまで期待してもなあ」
 
ワカバヤシ「結構、言われてるんだね」
 
カネダ「いやまあ、TACはちょっと、なんというのか……」
 
ベットウ好感度が、少々低い組織なんです」
 
ワカバヤシ「あー、【謹慎】に関係あるのかな」
 
カネダ「まあ、これはしゃあない部分があるというか、すれ違いもあるねんけど」
 
ベットウ「ほら、ウルトラマンって人間と違うやないですか、基本的に」
 
ワカバヤシ「まあ、宇宙から来た超人だよね」
 
ベットウ「そう。それゆえに、人間には感知できない超獣のオーラとか鳴き声とか、宇宙からの有害電波とかをキャッチできたりするんですよ」
 
ワカバヤシ「あるだろうね。ウルトラマンだし」
 
「でもそれって、ウチらみたいな凡夫に言われても、困るわけやん」

カネダ「そらウルトラ能力持ってるやつって、わかってればいいけど、そこいらのアンちゃんが《超獣がいます》《あいつは人間に化けた宇宙人です》言うても、気ちがいかと思うわな」

ベットウ「でも、TACの面々も、信じひんすぎですけどね」
 
「北斗隊員(ウルトラマンA)がなに言うても、《バカな》《そんなことあるもんか》」
 
カネダ「《ぶったるんどる!》とかな」
 
ベットウ山中隊員ですね。なんか、すごいイヤな気分にさせる人で……。体育会系のノリというか、キツいんスよ、当たりが」
 
「このあたりは、ステキなまとめ動画があるので、どうぞ」

 

 

 

「ぶったるんどる!」が持ちギャグ(?)の山中隊員。たぶん、防衛組織の隊員で一番人気がない。
リメイクするならダイアン津田さんを使ってみてはどうか。

 

 

カネダ「しっかし、ヤプールや超獣がおる世界で、怪奇現象を《夢でも見たんじゃないのか?》で一蹴とか、基本的なところで問題あるよな」
 
ベットウ「ジャムおじさんが《パンがしゃべるわけないだろ》とか言うくらい、呑気な発言ですよ」
 
今野隊員とセットになって、バカにしまくるのよ。まあ、北斗星司が言うてる、いうのもあるんかもしれんけど」

 

 

 

防衛組織の隊員で2番目に人気がない(たぶん)今野隊員。
悪い人ではないんだろうけど、少々ガサツなところがある模様。
リメイクするなら内山君に演じてもらうのがいいか。

 


 
カネダ「あー、Aのあつかいが微妙なんは、ちょっとあの人の責任でもあるよな」 
 
ベットウ「熱血キャラゆえにか、なんかバカっぽいんですよねえ」
 
「友達におったら、うっとうしいよな」
 
カネダ「人徳ないというか」
 
ワカバヤシ「あの……主人公なんだよね?」

 

 

 

ウルトラマンAに変身する北斗星司隊員。
言ってることが全然信じてもらえない可哀想人だが、見ているこちらに「北斗やからしゃあない」と思わせるところも、また不憫。
リメイクするならパンサー尾形さんが適役。


 
ベットウ「だから最終回のアレも、ちょっと冷めるというか」
 
「北斗が言うと、素直に聞かれへん」
 
 
 やさしさを失わないでくれ。
  
 弱いものをいたわり、互いに助け合い、どこの国の人たちとも友達になろうとする気持ちを失わないでくれ。
  
 例えその気持ちが何百回裏切られようと。
 
 それが私の最後の願いだ。 
  
  
 
ワカバヤシ「いい言葉じゃん」
 
ベットウ「アレ、絶対どっかからのコピペっすよ」
 
「なー。北斗のキャラと合ってないねん。ダライ・ラマとかからパクってるやろ」
 
ベットウ「夕子さんが、書いてくれたんじゃないですか?」
 
ワカバヤシ「みんな、北斗隊員に親でも殺されたの?」
 
「そんな北斗に、山中、今野の3人のやり取りは、ホンマに聞いてられへん」
 
ワカバヤシ「それでハブられて、謹慎なんだ。ヒドイ話だなあ」
 
ベットウ「大丈夫。どうせ、北斗は謹慎なんて守りませんから」
 
ワカバヤシ「ダメじゃん」
 
カネダ「街中で銃乱射してるし、一般人の女も殴ってるし」
 
ワカバヤシ「え? それ、今だと大問題だよね」
 
「だから、当時でも謹慎してるよ」
 
ワカバヤシ「謹慎で、すまないよ!」
 
「まあ、人なぐったウルトラヒーローと言えば、北斗だけやないけど」
 
ベットウ「今さらっと、触れていはいけないところ行きましたね」
 
カネダ「あれこそ、謹慎ではすまん話やわな。しれっと復活したのもビックリやけど」
 
ベットウ「やっぱ、ウルトラマンは謹慎期間を守らないんですよ」
 
「そんな感じでTACは、あんまり働きたくない、ブラック組織として名をはせている」

ベットウ「まあ、リアルな軍隊組織なんて、そんなもんかもしれませんけどね」
 

 (Q歯科、久里虫太郎編に続く)
 

 

 

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「世紀末四間飛車」の荒さばきと大ポカ 櫛田陽一vs森下卓 1988年 王位リーグ

2023年05月04日 | 将棋・ポカ ウッカリ トン死

 櫛田陽一がトップ棋士にならなかったのが、いまだ不思議である。

 アマ強豪として鳴らした実績もある無頼派棋士であり、その才能を大いに期待された男。

 1987年にデビューしてすぐ、初参加の全日本プロトーナメント(今の朝日杯)で決勝に進出。

 谷川浩司王位に敗れて、優勝こそならなかったものの、翌年のNHK杯でも決勝まで勝ち上がる。

 そこでも島朗前竜王(当時は名人と竜王を失って無冠になった棋士を「名人」「竜王」と呼ぶトホホな風習があった)に快勝して、いきなりビッグトーナメントを制する快挙を達成。

 若手時代からジャイアントキリングを連発し、大きな大会の決勝で戦ったところなど、今でいえば糸谷哲郎菅井竜也のような勝ちっぷりではないか。

 その本格的で、力強い振り飛車は「世紀末四間飛車」と恐れられたものだった。

 そんな、トップ棋士としての将来を約束されたような櫛田だったが、ある時期から成績が落ちはじめ、デビュー時の勢いを失っていく。

 いやそれどころか、まだ30歳の時点で早々とフリークラス宣言をして、事実上現役を退いてしまうのだ。

 これには驚かされたが、櫛田によると佐藤康光森内俊之といったライバルに追い抜かれたこと。

 また、自身が努力をおこたっていたことを自覚したショックで、私生活が乱れてしまったことが原因だという。

 「羽生世代」の登場は序盤戦術の進歩を生み、これまでは「才能」「経験」「人間力」としか語られなかった様々な技術を「言語化」し、棋士のイメージもスマートなものにした。

 それとともに、将棋に対するストイックな姿勢をつらぬくことによって、こういう「無頼派」な生き方を駆逐してしまったことも将棋史的には大きかったかもしれない。

 そこで今回は、そんな「昭和の魅力」にあふれた櫛田の将棋を紹介したい。

 これは櫛田の持つ独特の腕力と、終盤のアッという展開も合わせて、当時とても話題になった一局である。

 


 1988年王位リーグ

 櫛田は森下卓五段と対戦する。

 先手の櫛田が三間飛車を振ると、後手の森下は△64銀型の急戦で対抗。

 櫛田は▲75歩の位を取っての▲76銀型からさばこうとするが、森下は得意の金銀をくり出す押さえこみを披露し、ジワジワとせまってくる。

 むかえたこの局面。

 



 中央の金銀が先手の大駒2枚を封じて、飛車のさばけるメドも立っており、後手が指せそうに見える。

 ふつうは▲86歩だが、飛車を引くくらいで△67歩成が受けにくく、下手すると完封されそう。

 なにか手を作っていかないといけない局面だが、ここから櫛田が見せる指しまわしがパワフルなのだ。

 

 

 

 

 ▲65歩、△同金、▲77桂がすごいさばき。

 たしかにダイレクトで△89飛成と取られるわけにはいかないが、それにしてもひねり出したものだ。

 ただ、いかにも薄いというか、森下もあわてることなく△87飛成とし、▲65桂△76竜と飛車を取っておく。

 これが、「駒得は裏切らない」の森下流。

 飛車を失ってこれがまた▲65桂取りにもなるのだから、やはり先手がいそがしいが、ここからがまたすごいのだ。

 

 

 

 

 

 ▲53桂成(!)、△同金、▲45桂

 取られそうなを捨ててをつり出し、もう一枚のを使う。

 なんだか、あまりにもふくみがないというか、いかにも、われわれのようなアマチュアが指しそうな手順だが、そう。

 これこそが「アマ強豪」出身の櫛田の力強さでもあるのだ。

 とはいえ櫛田によると、ここは△87飛成を見落とした苦しまぎれではあるそうだが。

 以下、△52金▲53歩とたたいて、△42金▲52金と、あくまで直接手で食いついていく。

 ただどうにも単調で、こういう攻めでは堅実さを身上とする森下には通じないとしたものだが、ここでは△51歩と打つのが、おぼえておきたい手筋

 

 

 ▲同金と金を引きずりおろして威力を弱めてから、△44歩を取りに行けば後手が優勢だったようだ。

 その代わりに、森下は△44角と出る。

 玉のフトコロを広げながら△53の地点にも利かして、味の良さそうな手に見えたが、これが危ない手だったか。

 ▲42金、△同玉、▲52歩成、△同玉に▲54金と打って、にわかにアヤシイ。

 


 先手の攻めも細いが、次に▲53桂成△同角▲63金打のような筋が受けにくく、なにかのときにを取れる形で、相当に食いついている。

 なんといっても先手の美濃囲いが手つかずで、とにかくメチャクチャでもいいから、攻めさえ切れなければ勝てるという穴熊のようなパターンに入っており、後手が怖すぎる局面なのだ。

 ただし、相手は森下卓である。

 当時の森下は優勝やタイトル戦にはまだ縁がなかったが(決勝で勝ち運がなく「準優勝男」と呼ばれていた)、実力では谷川浩司羽生善治に次ぐナンバー3と見られていたほどの男。

 このピンチも森下にかかれば、なんということもないはずと、さらなる熱戦が期待されたが、なんとこの将棋はここから、わずか3手で終わってしまう。

 結論から言えば櫛田が大ポカを指してしまうのだが、その伏線となる森下の次の手が不可解で、おそらく、ほとんどの人が当てられないのではあるまいか。

 

 

 

 △26角と出るのが、意味不明な手。

 ただ角が逃げただけで、詰めろでもなんでもなく、相手に手番だけを渡した手だ。

 しかも、ここで先手に妙手がある。

 仮に、それを発見できなくても▲53桂成とすれば△同角の一手に▲63金打のような平凡な攻めでも、この角出はまるまる一手パスと同じあつかいになってしまう。

 櫛田もさぞや、おどろいたことだろうが、ここで大事件が起こるのだから将棋というのはわからないものである。

 

 

 


 ▲27歩△37銀まで森下勝ち。

 ▲27歩が一手ばったりの大悪手

 △26角と出た手が詰めろでもなんでもないのだから、受ける必要はなかった。

 いやそれどころか、この歩を打ったばかりに▲27への逃げ道を自らふさいでの大トン死。見事な自殺点である。

 櫛田は歩を打ってからトイレに立ったそうだか、これがポカを生む典型的な「悪手」。
 
 席を立つなら、指す前に行く一手なのだ。

 そこで、用を足すか、手を洗っているときにでも「あ、ヤベ」と気がついて、何事も起こらないのだから。
 
 われわれレベルですら、コレをやるだけで勝率が、1割くらい変わるのではないかというくらいのもの。

 でもこれが、簡単なようでできない。
 
 鍛えの入ったプロですら、「勝った!」と思ったときは、こうなってしまうのだから。

 この歩の代わりには、▲48角と出る手で後手がシビれていた。

 

 

 

 △同角成は当然▲53桂成で詰みだが、後手もが逃げるようでは話にならない。

 そもそもプロにかぎらず将棋の強い人なら、▲39で隠遁しているをスキあらば活用したいと考えるもの。

 櫛田ほどの棋士が、そのチャンスを逃してしまったというのが、おかしな話だ。

 それこそ、▲48角のようなカウンターは、振り飛車党の大好物っぽいのに。

 それにも増して不可解なのは、やはりその前の△26角だ。

 先も言ったが、これは詰めろでもなんでもない。

 そもそもこの角は、▲44金と取らせて、△同銀で銀を活用しながら△53を受けるという形にしたいのだ。その発想があるから、やはり△26角はちょっと思いつかない。

 先手が▲27歩という、ありえない大悪手を指してくれる以外はすべてヒドイ結果が待っている。

 なぜ森下のような地に足をつけたタイプの棋士が、こんな手を指したのかわからず、さらにはそれが結果的には勝着になるのだから、まったく今並べ直してもわけがわからないのだった。

 

 (森下が名人戦で見せた大ポカはこちら

 (その他の将棋記事はこちらからどうぞ)

 

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解散MAT 脱出TAC お遊びZAT 全滅MAC スパイナーで東京もろともイッタりましょうか編

2023年05月01日 | オタク・サブカル

 前回に続いて『帰ってきたウルトラマン』のお話。

 上の偉い人から「次ダメだったら解散だからな」とイヤごとばかり言われている、怪獣攻撃隊MATの面々。

 グドンツインテールという2大怪獣に苦戦を強いられ、やはり解散をちらつかされるのみならず、小型水爆と同じ威力の破壊兵器を使用して、東京もろとも怪獣を焼き払おうという作戦を聞いてびっくり仰天。

 加藤隊長をはじめ、「そら、いくらなんでも、あんまりだっせ」とあきれ顔ですが、地球防衛庁の岸田長官はもうノリノリで……。 

 



 
カネダ「まあ、このあたりは脚本書いてる上原正三の、沖縄戦の恨みとかもあるから」
 
ベットウ「あの対馬丸に乗ってたんでしたっけ?」
 
カネダ「いや、違うはず。たしか疎開用の船が潜水艦にねらわれんよう、蛇行して逃げ回って数週間漂流したとか、そんな話」
 
ボスタングの元ネタになったエピソード。しかし、連中も子供が乗ってる疎開船を沈めるかぁ?」

ベットウ「戦争に仁義もへったくれもないんですよ。アニメの『対馬丸』は今でもトラウマですわ……」

カネダ「あー夏休みの登校日に見せられるヤツな。ガチやもんな。上原も負けてないけど」

ベットウ「この人の沖縄の情念と、少女好きはマジもんですねえ」
 
「《オマエら沖縄を盾にして、とっとと降伏しやがって! 本土決戦やって、同じ目にあったらよかったんや!》って、本気で思ってる人やから」
 
カネダ「だから『帰マン』初期では異様に東京を破壊するもんな」

「映画の『激動の昭和史 沖縄決戦』観たら、ちょっとは気持ちもわかりますけど」

ベットウ「沖縄の民間人が次々死んでるのに、丹波哲郎とかが、どうやって名誉の自害すべきか延々話し合ってるという、ブラックジョークのようなシーンが」

カネダ「はよ降伏せーよ!」
 
ワカバヤシ「で、結局スナイパーはどうなったの?」
 
「ス【パイ】ナーね。加藤隊長をはじめとするMATの猛反対で、いったん凍結」
 
ワカバヤシ「そらそうだよね」

 

 

 

スパイナー使用阻止のため「もう一度チャンスをください」と願い出る加藤隊長。なぜ「理想の上司ランキング」に登場しないのか不思議。

 

 

ベットウ「兵器の威力を表現するため、ここで原爆で廃墟になった街の写真を挿入するんですよね」

カネダ「あれは怖いよな」

「で、MATは最後のチャンスをくれということで、《ダメだったら解散》と最後の特攻に挑む」
 
ワカバヤシ「燃えるねえ。その作戦は?」
 
「ジープに乗って近づいて、10メートルの至近距離からツインテールに麻酔弾を撃つ」
 
ワカバヤシ「かなり無謀な気がするけど」
 
カネダ「いや、ここは盛り上がるところ」

「ワンダバダバワンダバダバワンダバダバダ!」
 
ベットウ「MATといえば地上戦!」

「怪獣とMATの接近戦が超燃えるんや。100回見ろ!」

ベットウ「ボクが推しの丘隊員もバズーカで戦うし」

「一応、ツインテールの目をつぶして、ウルトラマン勝利のサポートはしたから活躍したよ。がんばってるやん」
 
ベットウ「初期のMATは殺伐としてるけど、加藤隊長とか伊吹隊長とか、南隊員とか、いい人はそろってますし、応援したいです」

 

 

 

郷秀樹(ウルトラマン)の良き理解者である南隊員。射撃の名手。
子供のころいじめられっ子だったためか、弱い者へのやさしさを(同時にきびしさも)忘れない男。
キカイダー01でおなじみだが、もともとはウルトラマン役の候補でもあったらしい。

 

 

 

カネダ「MATは隊長が2人ともいいよな」

「加藤隊長が、郷隊員の妄想(?)を確認するために霧吹山に登るところとか、子供心にもグッときました」

ベットウ「さっきのグドン&ツインテール戦で、隊員が緊張でジープのエンジンをなかなか、かけられへんところとか」

カネダ「静かに【落ち着くんだ】って声をかけるねんな」

「地味なシーンやけど、人柄が伝わる名演技なんです」

ベットウ「伊吹隊長はやっぱ初登場時がカッケーんス」

「《この怪獣は俺が殺る》。超絶飛行テクニックがシブい!」

カネダ根上淳は、もともと航空隊の生き残りやそうやし」

ベットウ「あとはずせないのは、ムルチ戦の【郷、行くんだ!】」

「《怪獣使いと少年》。今のエクストリーム保守の人が見たら、卒倒するような内容」

カネダ「まあ、ウルトラシリーズは基本的には左寄りやろ」

大江健三郎には批判されてましたけど」

ベットウ「それは前も言うた通り、核のあつかいとかは雑でしたからねえ」

「あと心に残ってるのがゼラン星人

ベットウ「あれってやっぱ、メイツ星人に対するアンサーなんですかね」

「宇宙人が、口の聞けない障碍者の少年に化けて、人のやさしさにつけこむって話やもんな」

ワカバヤシ「なんだか、キワドそうなにおいが」

ベットウ「伊吹隊長の娘さんが、その男の子と話をするために手話をおぼえるんスよ」

「美奈子ちゃん、メチャメチャええ子やねん! 親の育て方がよかったんやな」

 

 

家族で休暇中の伊吹隊長の一コマ。隣にいるのが、心やさしき美奈子ちゃん。
ふくれっ面なのは、パパの優先順位が家族旅行よりもMATの仕事の方なため。
隊長、空気読んで!

 

 

ベットウ「で、伊吹親子の信頼を完全に得たゼラン星人は、《社会的弱者であるわたしに手が出せるかな》ってウルトラマンを挑発する」

ワカバヤシ「攻めてるねえ」

カネダ「攻めてるよなあ。《コイツは宇宙人です!》って見破ったはずの郷隊員が、《おまえ……サイテーやん……》て人非人あつかいされて」

「最後、伊吹隊長が自らマットシュートで撃ち殺すけど、その姿が……」

ベットウ「たしか、見た目が少年に化けたままの状態やのに撃つんですよね」

「すごい絵面やねん。大人が子供を撃つねんもん。しかも首筋を」

ワカバヤシ「殺す気満々だ」

カネダ「まあ正体というか、人殺してるところ見たから、それはしゃあないけど」

「で、すべてが終わったあと郷秀樹が《ボクやったら、あの男の子は外国に引っ越したとか言うときますわ》って言うたら」

ベットウ「伊吹隊長は首を振るんスよね。《いや、事実を話すつもりだ》」

「《しょせんは人の腹から生まれた子供だ、天使にはなれんよ》って」

カネダ「大人やなあ」

ベットウ「でも、美奈子ちゃんにはキツいッスよね……」

「相手、小学生や。立派な人って、そういうところが重かったりするからなあ」

カネダ「そこは全然、ウソついてもええのにな」

「黙っとったらええのに、昔の子供番組はこういうとこに容赦せんのですよ」

カネダ「そのガチなところが、昭和特撮の魅力でもあるけどな」

ベットウ「そんなMATなんですけど、劇中では解散、解散言われてかわいそうでした」

ワカバヤシ「よかったね、でも最後まで、解散しなくてすんだんでしょ」
 
ベットウ「でも、そのあとも度々言われてましたよね」
 
カネダ「なんか、お約束のギャグみたいになって。【解散、いただきました!】みたいな」
 
ベットウ「よ、成駒屋!」
 
「さーあ、どうするどうする!」
 
ワカバヤシ「合いの手が古いよ」
 
カネダ「《世論ではMAT不要論もある》とかナレーション入って、どんだけシメられてるねん」
 
「メインライターの一人、市川森一も《あーあ、MATって弱いなあ》って思いながらシナリオ書いてたらしいし」
 
ワカバヤシ「そこまで言われると、いっそ愛しくなるよ」
 
「だから、昔『アメトーーク!』の【元コンビ芸人】やったときさー」
 
ベットウ「あー、あれは特撮ファンみんな思ったでしょうねー」
 
「《次に解散しそうな芸人》でアンジャッシュの名前が挙がってたんやけど……」
 
カネダ「うん、そこは絶対にMATって思ったよな、みんな」

ワカバヤシ「絶対《みんな》ではないと思いますけどね」
 

TAC編に続く


 

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