将棋 この絶妙手がすごい! 丸山忠久の「成香冠」と名人位を引き寄せた桂打ち

2019年02月06日 | 将棋・好手 妙手
 前回の郷田真隆編(→こちら)に続いて、今回も将棋の妙手の話。
 
 将棋の勝ち方には、その人の特徴が出るといわれる。
 
 終盤、勝勢になった局面で、どう決めるかだが、これは谷川浩司九段のように、
 
 
 「詰みがある場面では、長手順でも詰ますのがプロ」
 
 
 という人もいれば、
 
 
 「長い詰みより短い必至」
 
 
 の格言通り、リスクの少ない順を選ぶ人もいて、プロアマ問わず基本的にはこれが現実派で、おそらくは「正解」だろうが、中には大山康晴十五世名人のような、
 
 「いかに相手に敗北のダメージを残すか」
 
 を重視した勝ち方をする人もいて、その思想は様々である。
 
 だがときに、
 
 「え? そんな収束の仕方、アンタしかしませんで!」
 
 おどろかされる人がいて、その代表格といえば私にとっては丸山忠久九段
 
 丸山といえば、名人2期に棋王1期、全日本プロトーナメント(今の朝日杯)やNHK杯優勝(全日プロで見せた「激辛流」は→こちら)、公式戦24連勝
 
 などなど、様々なビッグタイトルや栄誉を得ているが、強さとともに語られるのが、そのキャラクターだった。
 
 私生活をほとんど語らないスタイルのようだが、かといって偏屈というわけではなく、いつも笑顔で「ニコニコ流」などと呼ばれている。
 
 そのさりげない、やさしさや気づかいで、女流棋士をはじめ女性人気も上々。
 
 そんな、とらえどころのない人柄だが、それ以上に個性的だったのが将棋。
 
 特に若いときは、序盤から入玉を視野に入れた独特の指し方をしたり、終盤は
 
 
 「激辛流」
 
 「友だちをなくす手」
 
 
 といわれるような、冷たいとどめの刺しかたに定評があった。 
 
 有名なのがこの将棋。
 
 1991年に行われた、大島映二六段との王位戦。
 
 
 
 
 
 相矢倉での中盤戦。
 
 △94▲98の差で、後手がやや指しやすそうにに見えるが、ここでの丸山の指し手が、いかにもというものだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 △15歩と裏口から手をつけるが、若手時代のマルちゃん流。
 
 先手の方から、▲15歩と端攻めするなら普通だが、そのを行くのが丸山将棋だ。
 
 以下、当然の▲同歩に△同銀と、掟破りの「逆棒銀
 
 ▲同香に△同香端を破って(いや、おかしい、おかしい!)、そのねらい(?)はここから60手以上戦ったところで、はっきりする。
 
 
 
 
 
 
 終盤のこの局面。
 
 一目おかしな駒があるのが、おわかりだろうか。
 
 そう、△23にある成香だ。
 
 普通、この位置にはか、せいぜいが▲23歩とたたかれて△同金がいるものだが、そこに謎の成香
 
 なぜ、そこに成駒が。
 
 そう、なにをかくそう、この成香こそが△15歩と突いて走ったなのだ。
 
 以下、△17香成と成って、△16△15△14△13と一段ずつ後ろ歩きし、ついには堂々、王様の守備隊長に任命されたわけだ。
 
 こうなってみると、盤面の右側は先手の駒がほとんどなく、完全に制圧されている。
 
 後手玉を、どう攻略していいかわからないし、上部に逃げ出されても止める形がない。
 
 実戦も、△23の成香が、絶大な守備力を発揮して圧勝
 
 敗れた大島六段も、さぞやグッタリさせられたことだろう。
 
 そんなマルちゃん流の集大成といえるのが、やはり名人位を獲得した、あの強烈なインパクトを残す一局ではないだろうか。
 
 
 
 (続く→こちら
 
 

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