フランシス・フォード・コッポラ『カンバセーション…盗聴…』でフシアナ東京

2024年07月17日 | 映画

 フシアナトーキョー! フーゥ!!」

 

 奇声をあげて、思わず踊りだしたくなったのは、

 

 カンバセーション盗聴…』

 

 という映画の、2度目を見終えたときのことであった。

 『カンバセーション…盗聴…』(以下『盗聴』)はフランシスフォードコッポラ監督、ジーンハックマン主演のサスペンス映画。

 コッポラといえば言うまでもなく

 

 『ゴッドファーザー』

 『地獄の黙示録』

 

 で歴史に名を残す大監督だが、両作の合間に撮影されたこの『盗聴』も、地味ながらなかなかの佳作に仕上がっている。

 今回は話の都合上、オチにふれないといけないので、ストーリーを全部語っちゃいますが、主人公ジーン・ハックマン演ずるのは盗聴プロという設定。

 

 


 浮気調査から産業スパイまで、なんでもござれのスゴ腕で業界内での評価も高いが、本人は自分が盗聴屋のくせに(だから?)他人から盗聴されることを異様に警戒し、プライバシーにふれられることを嫌う

 その様は偏執的ともいえるほど気むずかしく、

 

 「あなたのことを知りたい」

 

 と求める恋人切り捨て、唯一の趣味は部屋で大音量のジャズを流し、あたかも、そのバンドに参加しているかのようにサックスを吹くこと。

 いわば、友達のいない人が、家で「一人カラオケ」をするようなもので、コミュ障というか、仕事以外は精神的なひきこもりともいえる、複雑な人間なのだった。

 そんなジーンがある日、大企業の重役から依頼を受ける。

 なんてことないカップルのデートを盗み聴きするのだが、そこに不穏な言葉が飛びこんでくる。

 どうも、2人がだれかにをねらわれているとか、そういう内容のようなのだ。

 確証こそないが、どうしても気になるジーンは録音テープの提出を拒否する。

 彼は過去に自分の盗聴がきっかけとなって、殺人事件を引き起こしてしまったことが、あったから。

 ジーン自体に罪はないが、良心の呵責からは逃れられず、大きなトラウマになっているのだ。

 ここからジーンは、明らかにトラブルに巻きこまれたようで、

 


 「黙ってテープを渡して、これ以上首をつっこむな」


 

 そう脅されたり、またテープにこだわるあまり、相棒ケンカしてしまったり。

 ジーンの仕事ぶりに嫉妬する同業者から、いたずらの盗聴を仕掛けられ激怒したりと、だんだんと精神の安定を失っていく。

 ついにはにかけられ依頼主にテープを奪われてしまうが、真相をどうしてもたしかめたくなったジーンは、盗聴内容をヒントに「現場」となりそうなホテルに潜入することを決意。

 そこからはさらに謎がを呼び、すべてがジーンの妄想なのかといったサイコサスペンス的解釈も残しながら、ヒッチコックをイメージしたようなシーンもあってと、盛りだくさんな内容。

 いやー、どうなるねんやろー、とハラハラドキドキしながら、ラストではすべての謎が明かされるわけだが、そのことにショックを受けたジーンに追い打ちをかけるよう、自宅の電話が鳴る。

 その声は静かに、

 


 「事件のことはなにもしゃべるな。盗聴してるからな」


 

 の危険のみならず、自らがもっとも怖れていたプライバシーにまで踏みこまれ、ジーンは半狂乱に。

 盗聴器を探し出すべく、家じゅうのものをひっくり返し、テレビも電話もすべて解体

 装飾品を破壊し、壁紙をすべてはがし、床板も全部めくりあげる。

 それでも見つけられなかった彼は、ひとり呆然サキソフォンを吹き続けるのだった……。

 

 ……てのが大まかなストーリー。

 1回目に見たときは、何にも考えずに

 

 「はー、おもしろかったなー」

 

 と満足してたんだけど、先日2回目の鑑賞をしたとき、ひとつだけ気をつけてみようと、思っていたことがあったのだ。

 で、結局ラストで盗聴器どこに仕掛けられてたの?

 最初はどっちでもいいというか、ジーン・ハックマンが自宅の盗聴器を発見できなかったことは、相手側のウソというかハッタリではないにしても(電話の相手に録音された盗聴の内容を流されていた)

 

 「彼ほどのプロが見つけられないほど巧妙にしかけられており、その底知れぬ絶望感を表現している」

 

 くらいに思っていたのだが、今回もう一回見直してみると、割とこの映画は論理的に作ってるような気もするので、もしかしたら、

 

 「盗聴器、ココだよ」

 

 というヒントを作中でさりげなく、示唆しているのではないか、と読んだわけだ。

 さすがは私。こういうところにアンテナが反応するとは、まさに映画玄人である。

 で、再見の際ラストを目を皿のようにして見ていたのだが、やはりこれといった答えも見いだせず

 まあ、そこは謎というか、あえて結末を明示しない「開いた物語」みたいなもんかもなあ。

 と、おさまっていたのだが、これがとんだ! であったのだから、映画というのは奥深いものである。


 (続く

 

 

 

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