昨日は終戦記念日だった。
あるお年寄りに「今日は終戦記念日ですね」と言うと、彼は苦笑いでこう答えた。
「敗戦記念日だよ」
彼にとってはそうなのであろう。
敗戦の記念日だった。
またあるお年寄りに聞いた。
「終戦記念日はどんな天気でした?」
「今日みたいな、雲一つない暑い日でした。うちにはラジオがなくて、近くの家に行き、天皇陛下の声を聞いたけど、あまりラジオが聞こえなくて良く分からなかった・・・」
そして、こう続いた。
「これから何がどうなるか、まったく分からずに大人たちは毎日話し合っていた。男は捕虜にされ、女はさらわれると言うことをみんな考えては脅えていたり、米がまだ青かったがたくさん実った米を食べれなくなるのではないかと馬にその米を食べさせたりしていた。
大人たちは何もせず、一週間ぐらいはただ集まり無気力に話し合っていた・・・」
「学校はいつから始まりました?」
「9月15日には始まったけど、今までの教科書を黒くなるだけの日々が続いた。もう教科書は真っ黒になったよ。それから半年後ぐらいに新しい教科書が出来たんだ」
「今の日本をその頃想像は出来なかったでしょうね。その頃と比べて、今はどうですか?」
「やっぱり、今が良いですよ。今の世の中の方が豊かで良いです」彼は笑って答えた。
彼の身体は半身不随であるが、笑顔で今の方が良いと答えた。
平和な今の方が良いと笑って答えた。
この自分たちを包み込む世のなかであれ、より良くなろうとする自己実現のなかにあるのではないかと思えてならなかった。