海上撮影家が見た上海2

上海で撮影活動をしている海原修平のBlog。「海上」とは上海の逆で、新しい上海という意味。更新は不定期。

GFXのセンサーでケラレが発生しない35mm用オールドレンズ

2019-09-19 | GFX+オールドレンズ

 

GFXのセンサーをカバーする35mm用オールドレンズ

 

GFXで使えるフィルム時代のレンズの問い合わせが時々メールで来るので、GFXの44x33mmセンサーでケラレが発生しないレンズのみを並べてみた。検証方法は、ピントを無限大にして最小絞りで検証し、フィルターとフードは装着したままの状態。ここに並べたレンズは、35mmフィルムカメラ用に設計されたレンズで、デジタルカメラ用に設計された現代のレンズではない。ペンタックスのFA以外は前世紀に設計製造された物で、全部自己所有し現在も使っているレンズ。GFXの44x33mmセンサーで無理やり使っているので、画面の四隅が厳しいレンズもあるが、そんな場合は絞りを絞ればほどんど解決。今までの経験から35mm用広角レンズは44x33センサーで使うとケラレが発生するという思い込みがあるが、これは実際に検証してみないとわからない事もある。例えば、ここには登場させてないが、Canon FD 35mm f2もケラレは発生しないレンズだ。画像のトップから順に簡単な説明をするが、レンズの描写については細かく書かない。理由は、当然中古での購入がほとんどなので、当時の性能が100%出ている訳ではないのと、フィルム用に設計されたレンズを最新のデジカメで使うという荒技だからだ。ただ、私は現代のデジタルに対応した、あまりにもシャープ過ぎて無機質で無個性な描写のレンズより、収差が残っているレンズの描写が好きなのと、コンパクトさが気に入っている。GFX専用レンズも2本所有しているが、依頼撮影以外ではほとんど出番がない状態。

● MC Rokkor-PF58mm f1.4 (OH済)  一眼レフ用レンズの50mmが作れなかった時代のレンズ。開放ではとても軟らかい描写をしてくれるので手放せないレンズ。有名なのはf1.2の方だが、大きさと重さを考えるとこちらの方が私は好き。GFXの標準レンズが63mmなので、標準レンズとして使っても問題ない。ロッコールの100mm f2.5も使った事があるが、これもケラレなく素晴らしい描写をするが重いのが難点。

● MD Rokkor 45mm f2 (OH済)  いわゆるパンケーキタイプと呼ばれているレンズで、普通はテッサータイプが多いなか5群6枚というダブルガウスを採用している珍しいレンズ。ただ、MDタイプになり積極的にプラスティックを使って作られたているのでレンズの前枠などガタがある個体が多く必ずOHした方が無難。私のレンズもOHして使っているが、開放での優しい描写と絞ればとてもシャープな描写をしてくれる万能レンズだと思っている。それにとても軽いのでGFXで使っても楽。

● MC W.Rokkor 28mm f2.8  私が知っている限り28mmで唯一周辺ケラレが発生しないレンズ。描写も他のロッコールと同じでバランスのとれた使いやすいレンズ。同じ焦点距離でf2もあるようだが未テスト。

● SMC Pentax-FA 43mm f1.9 (OH済)  同じFA77mmと同様に一番出番が多いレンズだ。ペンタックスのレンズは、ペンタックスユーザーしか知らないのが残念。FAシリーズは今世紀に入ってから作られたフィルム用レンズだが、とてもバランスが良く軟らかい描写はペンタックスを代表するレンズだと思って良い。今も販売中の息の長いレンズでお勧めだよ。

● SMC Pentax-FA 77mm f1.8 (新品)  75mmという焦点距離が好きで、以前はコシナのHeliar75mm f1.8を使っていたが、このペンタックスFA77mmに惚れ込みHeliarを手放した経緯がある。このレンズは全長が短くコンパクトで軽い。描写は開放で軟らかくディストーションがほとんど無い。絞り込むにしたがって画像が引き締まるのでとても楽しめる。FA43mmとこの77mmは必ず持ち出す常用レンズで、買って後悔しないレンズだ。FA43mmとFA77mmは、同一設計者。

● Super-Takumar 55mm f1.8 (OH済)  昨年Takumar 50mm f1.4(アトム)と共にOHしたレンズ。この55mm f1.8は、かなりの数が市場に出回っているので、綺麗な個体でも3000円くらいで売っていた時期もあった。値段の安さゆえ敬遠されがちだが、優秀なレンズで隠れた名玉と私は思っている。OHは買ったレンズの値段より高くなるが、その価値はあると私は思っている。同じタクマーの50mm f1.4はGFXでケラレが発生する。

● Oreston 50mm f1.8 (OH済)  私が所有する暴れボケのレンズは、このOrestonとTelemegor 180mm f5.5のみ。時々思い立ったように使いたくなるレンズで、特に上海の夜を開放付近で常用するレンズ。

● Pancolar 50mm f2  西も東もツァイスのレンズは今まで手を出さなかったが、値段が安いのでイエナ製のレンズのみ手を出した最初のレンズ。絞り開放時の周辺画像の描写の曖昧さが、怪しい夜の上海にはぴったりのレンズ。もちろん絞ればキリリと引き締まる描写になる。

● Pancolar 50mm f1.8(アトムレンズ)  アトムレンズは以前何本も所有していた時期があり現在は3本のみになったが、その一本がこれ。絞り開放からシャープだが絞りを絞ってもあまり画質が変化しない不思議なレンズ。ペンタックスのタクマーは、紫外線照射器でほとんど黄変が抜けるが、このレンズは相当頑固で諦めたレンズ。イエナのレンズは、Flektogon 35mm f2.4という素晴らしいレンズがあり、一時期所有していた。この35mm f2.4もGFXのセンサーで使ってケラレは発生しないお勧めレンズだが、この35mmはPC-Nikkor35mmに座を譲ったのでアシスタントの元へ。

● PC Nikkor 35mm f2.8(OH済)  シフトレンズなのでケラレが無いのは当たり前だが、結構使い勝手は良い。GFXで上海の街を撮る時には手放せないレンズ。すでにニコンのサービスセンターでは修理を受け付けてないので、ニコンのOBが集まった大井のキートスでOH。

● Summicron-R 50mm f2(後期型)  GFXで使うオールドレンズの50mmの中ではピカイチのレンズで、どんな状況でも安定感のある描写をしてくれる素晴らしいレンズ。GFXに取り付け絞り開放で覗くと画面の四隅が極端に落ちるが、これはケラレではなく周辺光量落ちだ。これは、少し絞れば解消される。ずっとズミルックスR50mm f1.4(前期型)を使って来たのだが、GFXのセンサーではケラレが発生するので元アシスタントのところへ嫁入り。同じR型ズミクロンの初期型は未テスト。

● Elmar 65mm f3.5 Viso  ビゾフレックス用のレンズだが、GFXで使える優秀レンズ。焦点距離もGFXの標準に近いのでとても使いやすい。このビゾシステムのヘリコイドを流用して、エルマリート90mm f2.8やテレエルマー135mm f4とヘクトール135mm f4.5の前玉を外して手軽に使えるのは便利。これら、M型ライカ用レンズをオリジナル鏡胴のままGFXに使うと、鏡胴が細いのとレンズ部分がレンズ鏡胴の前面にあり鏡胴ケラレが発生するのでビゾシステムを使うしか方法はない。これらどのレンズも素晴らしい描写をしてくれるので手放せないレンズだ。

★ 他にもGFXのセンサーをカバーして使えるレンズはあり、比較的焦点距離が長いレンズは大丈夫だと思っている人も多いようだが、大事なのは鏡胴のデザインと構成レンズの位置だ。後玉付近にフレアーカッターが付いているレンズはまずダメだと思った方が良い。

★ レンズ描写の評価というのは、とても難しく自分で基準を設定して判断するしかない。良いレンズとは何か?と様々な人に聞いても答えも様々なので、他人の言っている事はあまり当てにならないと思った方が良い。レンズの最終判断は、モニターで判断せず必ずプリントして判断した方が良い。それは、モニターで拡大して見るとアラばかりに目が向くからだ。それと、プロの写真家でさえ、古いレンズは高画素のセンサーでは解像しないという人がいるが、35mmフィルムカメラ用レンズは、24x36mmという小さなフォーマットに像を結像させ拡大プリントする為に、昔の中判や大判レンズより解像度を高く設定して設計しているので、今の高画素センサーでも十分耐えるレンズは沢山ある事は知っておいた方がイイネ。また、職業写真家の中には、わざと昔のゼラチンフィルターを数枚入れて画質を落とし現代のデジタル用レンズでポートレート撮影している人もいるんだよ。

★ ここで紹介したレンズは、手持ちのレンズでGFXに取り付けてもケラレが出ないレンズを取り上げたが、世の中にある全てのレンズをテストした訳ではないので、探せば他にも様々なレンズがあるだろう。現代のレンズを使って画像処理でオールドレンズ風に仕上げる事はある程度可能だが、だったら最初から古いレンズを使った方が早いのと、画像処理でそれをやるとわざとらしさが前面に出すぎるので私は嫌い。

★ GFXのボディ側はNovoflex製のGFX-Leica-Mマウントを基本マウントにして、ビゾ用レンズ以外は、それぞれLeica-Mマウント(K&F製)を付けっ放しにしている。このK&F Conceptのマウントアダプターは全く問題ないのだが、なぜかMDのマウントのみガタがある。また、K&F Conceptもkiponも中国製なのに上海で買うと日本より値段が高いのが七不思議のひとつ。

★ 私にとってのGFX50Rは、65x24と1x1がメインフォーマットで、時々44x33という使い方。なので上記以外のレンズも良く使うが、還暦過ぎのクソオヤジに突入したので、少しでも軽くコンパクトなレンズをどうしても選びがちになってしまう。なので、GF63mm f2.8はまだしもGF32-64mm f4(ボンレスハム)は、見ただけで腰が引けてしまうのだ。そういう意味でも、今月発売されるGF50mm f3.5は魅力あるレンズかもしれない。

☆この記事の追記を2023年9月17日掲載→コレ

★ トップの画像で使ったカメラは、X-H1とSuper-Takumar 50mm f1.4(アトム) 絞りはf2で撮影。 このレンズも好きなレンズ。
 
★光源は、私のブランド039のLED Sh50Pro-V(スマホで光量調節可能タイプ)
 

 

 

 

 

 

 


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4 コメント

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Unknown (Futu)
2020-07-30 19:31:29
こんにちは。GFXの記事を参考にさせてもらっています。FA43 F1.9を検討しているのですが、アダプターはどのメーカーを使っていらっしゃいますか?
また、お使いのレンズの中で、光に1番敏感というか、モノクロや陰影描写でお気に入りのレンズがあったら教えてください。
いつも楽しみにしています!
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アダプター (かいはら)
2020-07-31 10:08:10
Futuさん
コメントありがとうございます。
私が使っているGFXのマウントアダプターは、基本NOVOFLEXのGFXライカMマウントを付けっぱなしにしていて、各社レンズはすべてK&F製のライカMマウント変換を使用してます。
つまり、古いレンズすべてをライカMマウントで使えるようにしてます。
「モノクロでの陰影描写・・」の件ですが、コントラストの低いモノコート時代のレンズがモノクロに向いていると思います。
個人的な好みで、あえてブランド名を出せばライカ・ミノルタ・ペンタックスの順ですね。
FA43mm f1.9は、77mmも含めお勧めレンズです。
もし、これらレンズが製造中止になるなら予備で買ってしまうでしょうね。
GFX純正レンズも2本所有しているのですが、最近ほとんど出番がありません。
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Unknown (まこっちゃん)
2020-08-22 14:44:31
ミノルタのレンズはどちらでオーバーホールされてますか?
ペンタックスのレンズは自分もレンズ工房さんでオーバーホールしました。
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ロッコール (かいはら)
2020-08-22 15:07:46
まこっちゃん
コメントありがとうございます。
ペンタックスとライカ以外のレンズは品川のカメラ屋にてオーバーホールしてましたが、今は受け付けてくれるかどうかわかりません。

ロッコールレンズを安心して買える店が大阪にあり、色々と聞いてみようと思い、今年の一月に行ったら、何と日曜日が定休日。元々、ミノルタ発祥の地元なので、聞いてみると良いと思います。ココ→ http://www.yamagen-camera.co.jp/

私は今コロナ問題で日本に戻れないので、日本に帰国したら聞いてみようと思っていたところです。



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