雪月花 季節を感じて

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りんどう忌

2011年09月09日 | 本の森
 
 九月七日は英治忌でした。
 さわやかな秋晴れとなったこの日、志野流(茶道)社中の方々の案内で東京の梅の郷・青梅にあります吉川英治記念館を訪ねました。山懐の緑に抱かれた記念館はひっそりとしたたたずまい。四季折々の訪問者をあたたかく迎えてくれます。

 英治忌にのみ公開される苑内の草思堂にてお仏壇に手を合わせ、お茶を一服いただきました。草思堂は吉川英治氏とご家族の疎開先で、一家は昭和19年からおよそ十年の歳月をすごし、青梅郷の人々と心安く親交しました。

 昭和25年にこの地で大作『新・平家物語』の執筆を始めます。古典の中でも平曲を愛するわたしは、来年のNHK大河ドラマ「平清盛」(主演:松山ケンイチ)をこころ待ちにしながら、友人の影響もあってすこし前から『新・平家物語』(講談社文庫全十六巻)に取り組んでいます。

 ようやく三巻目まで読みすすめ、ゆかりの地にて貴重なお道具や遺愛の品々を拝見する機会にめぐまれたことは望外のよろこびです。挿画を担当していた杉本健吉氏筆「(英治)涅槃図」、親交のあった白洲正子さん直筆の書簡等々から、英治氏の高潔で愛情深い人となりを偲びました。


 母おもいで子煩悩だった吉川英治は「‥ひっそりと野に咲く可憐な花、なかでも、りんどうは、その青紫の花弁の初々しさと、清楚なたたずまいを、ことのほか愛でていたようでございます。」(故・文子夫人談) 命日も、りんどうの花咲くころです。

記念館からすこし離れた、多摩川渓谷にかかる橋のそばに「紅梅苑」があります。故・文子夫人のお店だったそうで、青梅産の梅や柚子をつかったお菓子が美味。写真はカステラ饅頭「紅梅饅頭」と柚子饅頭の「柚子篭」。夏期はゼリーやシャーベットもおすすめです。


 菊一花天を載せたるたわわ哉 (英治)

 九月九日は「菊の節句」ですね。