「東京都青少年健全育成条例」には「作品に表現した芸術性、社会性などの趣旨をくみ取り、慎重に運用すること」などの付帯決議が付いているが、そもそも「慎重に運用」しなければならないような条例は、不完全な条例である。さてどう対応してゆくべきか。東京にいないので遠隔協力だが。……昼夜二公演。いろいろやることが多すぎる。年末進行の連載原稿を仕上げ、諸々連絡し、読まなければならないものを読む。一昨日受賞したばかりの鹿目由紀最新作も読む。彼女はどんどん書ける時期なのだろう。いろいろ感想など伝える。……戌井市郎さんご逝去の報せ。ご冥福をお祈りする。
「東京都青少年健全育成条例」可決に対し、あちらこちらと共に動く。でも私自身は名古屋にいるのでどこかずれてしまう。ともあれ、我々は黙っていないんで、よろしく。……日本人指導者層、世界の動きがわかっていないのか。経済に関する理解はあるのか。インドネシアになぜ海外製の新車があれだけ走っているか。日本とは種類の違う「格差」構造がある。……ともあれ名古屋初日。トヨタ地盤でマツダ賛美の一瞬。演劇に厳しいお客さんも多いが、諸々、笑い飛ばしていただければ、である。
体調いまいち。蓄積疲労。できるかぎり諸々片付けたいが……。「東京都青少年健全育成条例」可決に対し、いろいろな人と連絡取り合う。たいしたことではないと思っている人もいるようだが、保坂展人さんが言うように、「萎縮」「自粛」による規制は出てくるだろう。……日韓演劇交流センターと演出者協会の合同会議。慌てて最終新幹線で名古屋へ。地下鉄も最終ぎりぎり投宿。……ジャカルタで読んだ「エコノミスト」英語版は日の丸に潰される日本人のイラストが表紙。あらゆる媒体が「日本はもうダメだ」大合唱。ウィキリークス報によるシンガポール高官の言「日本は太った敗者」「愚かさと質の悪い指導層、ビジョンの欠如」。今のこの国は、誰も言い返しはしない。
座高円寺1で西山水木演出『烏賊ホテル』。来年に向けての打合せなど挟みながら。座高円寺2では第16回劇作家協会新人戯曲賞、候補作の冒頭十五分ずつのリーディング。そして夜は公開審査。激論の末、平塚直隆『トラックメロウ 』・鹿目由紀『ここまでがユートピア』の同時受賞となる。2作同時受賞はこの賞始まって以来のこと。たいへん盛り上がる。というか、2作の実力あってこそなのだが、こんなご時世だからこそ景気よく!ということでもあるのだ。名古屋勢の完勝に佃典彦審査員も大喜び。賞金は半額ずつ分け合うことになってしまうのだが、受賞のお二人、どうかご容赦を。
劇作家協会による座高円寺でのイベント、まずは3本のドラマリーディング。『嵐が丘』、共有項を持たない作家たちのリレー戯曲は、なかなか難しい。『海待ちノ月』は燐光群メンバーと笹野鈴々音も奮闘、いい上演だった。中山マリの当たり役の一つであろう。無理を言って川村毅に演出してもらった『ハルメリ』は、半分に縮めるカット、ト書きの省略が功を奏し、切れ味のいいものになった。
岡田利規君とのシンポジウムというか対談は、慶應義塾大学藝文学会によるもの。彼は頭が良く話も洗練されている。いつになく明晰な話となる。ここ十数年、催されている秋の対談シリーズとしては、今日が最大動員だったという。活字になるのは半年くらい先。終えて、慶応メンバーたちも交えてお話。……矢内原美邦版『桜の園』に行けるかと思ったら無理だった。残念。……燐光群盛岡公演も、大盛況のうち終わったという。狭い袖対策など可能な準備はして離れたものの、やはり無事終わるとほっとする。
劇作家協会は「東京都青少年の健全な育成に関する条例の再改定案に反対するアピール」を出した(http://www.jpwa.org/main/images/pdf/appeal101206.pdf)。シナリオ作家協会とは別々にアピール文を作ったが、それぞれお互いのアピールに連名しあうという初のケースとなった。都の再改定案では、「非実在青少年」という呆れた文言こそなくなっているが、十八歳未満の青少年対象のみならず、性表現を規制する内容は、実質、温存されたままである。あまりそういうイメージで見られていないようなのだが、私もいろいろと性について描いてきている。規制は御免である。……久しぶりに笈田ヨシさんにご挨拶。今年は年明けまで日本でゆっくり過ごすそうだ。初めてお目にかかった時、私のニューヨーク情報誌での連載を「愛読しています」と言われ、えらく恐縮したことを覚えている。……すっかり書き忘れていたけれど、岡田利規君とのシンポジウム「日本演劇の現在」が 、10日(金)16時30分~18時20分、慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール であります。
昼・夜の二公演。ばたばたと時間が過ぎる。ともあれ、お客さんに満足していただけたことがわかる。……大阪・精華小劇場の来年三月閉鎖が正式に決まったとの連絡。大阪市の横暴に大阪演劇人や、地元の一部の人も非難轟々という。毎日新聞大阪版の依頼で、電話コメント。OMS時代から脈々と続く、お上からの押しつけでない、演劇人たち手作りによる小劇場のあり方が、否定されてはならない。
場当たり、稽古、そして本番。追加座布団席も出すぎっしり満員。密度ある空間での上演の楽しさ。ツアーを終えた大鷹明良さんが足を伸ばして観に来てくださる。……深夜、はしぐちしんさんから連絡。OMS戯曲賞大賞受賞とのこと。おめでとう。受賞作『ムイカ』は、広島の被爆について、作者自身の体験と「演劇とは何か」を入口に迫ってゆく、シンプルだが工夫された戯曲である。
千葉で授業、新幹線、仙台へ。仙台は大都市だがすっきりしていて、地方都市としての良さもある。火曜、水曜と仙台公演。ぜひ観にらして下さい。水曜は昼の部もあります。……バタバタとしているうちに、夜。
劇作家協会による座高円寺でのイベント、12月11・12日、『リーディング・フェスタ2010 戯曲に乾杯!』。11日(土)は、3本のドラマリーディング。『嵐が丘』は、協会会報誌に連載されたリレー戯曲。渡辺美佐子・高橋長英に加え、劇作家も出演。私も部分的に担当。続いて16:30から『海待ちノ月』(作・中澤日菜子)、中山マリ・川中健次郎・猪熊恒和・松岡洋子・鈴木陽介・笹野鈴々音らが出演。夜は07年度新人賞受賞作『ハルメリ』のリーディング(川村毅演出)。12日は、18:30から『劇作家協会新人戯曲賞公開審査会』、事前に最終候補6作品のプレビュー・リーディングあり。今年はケラ氏が審査員に加わる。ぜひご来場下さい。(http://www.jpwa.org/main/content/view/112/)
足利から帰る。へとへとである。溜まった雑務に手を着けるが、ぐったり。それでも力を振り絞り、夜は三田村組『男の一生』へ。やはり美香は二枚目のほうがいい。そして岡山県人会へ。写真家の伊藤和則さん、Pカンパニーの冨士川正美さんが、地元の「桃太郎少年合唱団」にいたことがわかる。一期違いの私と伊藤さんは一緒にウィーン少年合唱団と共演したり、山本直純の『オーケストラがやってきた』に出演したりしていた仲間であったのだ。けっこう西日本のいろんなところへ行った。演奏会があれば学校に行かなくていいのが嬉しかったものだ。小学校時代、三十六年前の記憶が蘇る。
大阪始発新幹線に乗るが大雨、特に小田原辺りの状況がひどく、1時間半強遅れ関東着。品川から四度乗り継ぎ、足利へ。場当たり、部分稽古。本番。見切れ席などを除いて予定していた客席は完全に埋まる満席。「あしかが燐光群を観る会」の皆さまのご尽力のたまものである。ありがたいことだ。移動だらけの四日間の蓄積疲労でいささか朦朧としながらも、多くのお客さんが残って下さった竹下景子さんとのロビートーク、そして幸せな交流会。足利でも珍しいという「空っ風以上の強風」に見舞われつつ、幸福な『3分間の女の一生』ツアー、スタート。
午前中、ラジオに出て、母校である岡山芳泉高校へ表敬訪問。埋め立て地で、周りに何もなかった三十年前に比べ、臨港鉄道もなくなり、すっかり風景が変わっている。初めて行く床屋に飛び込みで入るが、耳の不自由なご夫婦がやっていて、どうやら「耳にかかるくらい」という注文を「耳にかからないで」と聞いたようで、えらくさっぱりとした髪型になる。テレビの生放送に出演。雑誌と新聞の取材。大阪へ移動、やはり記者会見。小堀純さん、AI HALLの皆さんらと話し込む。
宿を6時に出る。盛岡から仙台まで新幹線。仙台空港から福岡まで飛び、会見・テレビ収録。岡山への新幹線車内で原稿を仕上げる。新聞取材。岡山の皆さんとお話。岡山にもこういう人がいたのだ、と愉快な出会い。久しぶりに岡山名物ばら寿司をいただく。……海老蔵事件、そんなに騒がないでもっと心配することが世の中にはいっぱいあるだろうと言いたいが、酔って裸になったけれど暴力沙汰のなかった草彅剛くんがあれだけ反省しなければならなかったのだから、そう簡単には復帰できないだろう。