Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

反戦自衛官・小西誠氏の最新刊『オキナワ島嶼戦争―自衛隊の海峡封鎖作戦』

2016-12-11 | Weblog
かつてベトナム戦争に協力する命令に従わず「反戦自衛官第一号」を名乗った小西誠氏が、半世紀近い時を経て、「新たなる冷戦」の時代に向け、いま、自衛隊の新たな配備による危機状況について、私たちが知るべきことを、一冊の本にまとめた。
この週末から、ついに書店に並んでいる。
本書は、自民党政権や民主党政権下で進められて来た「オキナワ島嶼戦争」の全貌を明らかにするのみならず、メディアが報道せず、「尖閣国有化」や「中国脅威論」によって隠されてきたこの10年余の沖縄の現実を描く。
南西諸島の沖縄自衛隊配備問題・日米政府が密かに進めて来た対中国戦争計画を描く表現としては、三上智恵監督の映画『標的の島 風かたか』が完成、燐光群の劇『天使も嘘をつく』も上演されているが、この書の具体的な記述と考察によって、さらに広く知られ、理解されるべきである。

南西諸島の沖縄自衛隊配備問題は、決して他の場所に住む者たちに関係のない「地域の問題」などではない。
小西誠氏の記すとおり、「2015年国会での、安保関連法制定の目的もここにあったのである」。
以下の記述は、この書の本当に振り出しの部分に過ぎないが、ここまで明解に現状を語る言葉が一冊の本にまとめられていることは、とても重要である。
一人でも多くの人に読んでもらいたい。

「この自衛隊の先島諸島――南西諸島への増強配備こそは、国境線への実戦部隊配置(前線配備)を意味するから、中国への「戦争挑発」として映るだろう。あの中国の尖閣国有化への対応を見れば、これは一見して明らかだ。 今、民衆の知らぬところで進行しているこの事態は、このように恐るべき状況だ。実際、 2015年国会での、安保関連法制定の目的もここにあったのであるが、政府の巧みな世論操作に踊らされ、ほとんどの平和勢力は、これらを問題にさえしないという驚くべき無知をさらけ出してしまった。」
「しかし、これらのメディアや「本土」平和勢力の対応にも拘わらず、与那国島・石垣島・宮 古島・奄美大島の住民たちは、自衛隊新配備の発表以来、驚くべき創意工夫や粘り強さをもっ て、防衛省・自衛隊や地元自治体当局の、配備の実態隠しや、ひどい策略とたたかっているのだ」
「このたたかいの背景にあるのが、現在激しく攻防が続いている高江のたたかいであり、辺野古のたたかいだ。」
「沖縄戦が、沖縄住民への教訓としてもたらしたものは「軍隊は住民を守らない」 という事実だ。」
「現実に、政府・自衛隊は、先島諸島などについて膨大な配備計画や作戦計画(3段階などの戦争計画)を提示しながら、その住民保護のための避難計画は、何ら示そうとしないし、作成するつもりもない。明らかに、自衛隊の想定する島嶼防衛戦争が勃発したとするなら、先島諸島などは「標的の島」となり、相互に何度も繰り返される島嶼上陸・奪回作戦により、まさしく「一木一草」も残らない焦土と化してしまうであろう 」

※     ※     ※


新刊『オキナワ島嶼戦争―自衛隊の海峡封鎖作戦』

小西誠/著
出版元: 社会批評社 
四六判239頁 並製
本体1800円+税ISBN978-4-907127-21-3 C0036
書店発売予定日 2016年12月10日

●あなたは、この恐るべき事実を知っていますか?
メディアが全く報道せず、国民にも知らされない、この島嶼「防衛」戦争=「東シナ海」戦争の実体――ここに書かれていることは、単なる事実とその分析だ。防衛省・自衛隊は、この島嶼「防衛」戦を防衛白書を始めとする文書で明らかにしている。
●先島ー南西諸島に事前配備されつつある約1万人+緊急増派部隊、約4万人の自衛隊。現在、与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島へ自衛隊の基地建設ー事前配備が始まり、そして沖縄本島でも大増強が開始されつつある。――この軍事力の目的は、中国封じ込め政策の下での、琉球列島弧=第1列島線の封鎖であり(琉球列島線へ「万里の長城」を築くとして!)、日米軍隊による「東シナ海」戦争態勢づくりである。                         
――メディアが全く報道しない、その全貌と実態が今、初めて明らかにされる。
――そして今、与那国島・宮古島・石垣島を始めとする先島諸島の人々、奄美大島の人々は、この現実と必死にたたかいながら、全国の心ある支援を求めている。

● 防衛省・自衛隊文書「南西地域の防衛態勢の強化」の全文を初めて公開!
社会批評社サイト http://www.maroon.dti.ne.jp/shakai/21-3.htm
アマゾンでの予約ttps://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%82%AD%E…/…/ref=sr_1_1…

目 次
プロローグ 8
    先島諸島への調査と交流の旅 8
    巨大な弾薬庫が造られた与那国駐屯地 10
    住宅地に隣接した宮古島の巨大レーダーサイト 13
    山に囲まれた石垣島 19
    約1万人規模の南西諸島の大配備 22
    想定は「尖閣戦争」ではなく「海洋限定戦争」 24
    自衛隊配備を拒む先島諸島住民 26
 第1章 先島諸島――琉球弧への大配備 30
     弾薬庫を「貯蔵庫」と騙して造った与那国駐屯地 30
    司令部・事前集積拠点が設置される宮古島 38
     下地島空港の軍事使用による要塞化 47
    地下壕戦の戦場となる石垣島 51
     住民無視の奄美大島へのミサイル部隊等配備 57
     島嶼防衛戦のための沖縄本島の増強 64
     佐世保・海兵隊の編成とオスプレイ・水陸両用車 69
 第2章 「南西重視」戦略の始動 74
    陸自教範『野外令』大改定による島嶼防衛 74
     日米安保再定義と97年日米ガイドラインの改定 80
     初めて島嶼防衛を記述した防衛白書 83
     島嶼防衛戦争を想定した防衛計画の策定⁉ 87
    島嶼防衛の日米共同演習・上陸演習の開始 90   
    沖縄周辺諸島での離島奪還演習 93
 第3章 日米の東中国海での「海洋限定戦争」 98
    QDR2010年のエアシーバトル構想 98
    中国本土攻撃を想定するエアシーバトル 101
     オフショア・コントロールによる東中国海の封鎖 105
    「海洋限定戦争」論 108
 第4章「島嶼防衛」作戦の様相 113
    制服組の島嶼防衛研究 113
     島嶼防衛のための3段階作戦 116
     島嶼防衛戦での陸海空の統合運用 124
     島嶼でのミサイル戦争の様相 128
     島嶼防衛での制海・制空権の確保 132
     対ソ抑止戦略下の「3海峡防衛論」と「第1列島線防衛論」 134
     海峡防衛論=島嶼防衛論の虚構 138
 第5章 新防衛大綱による島嶼への増強配備 142
    14年大綱で全面化した島嶼防衛論 142
     新防衛大綱による部隊の増強と編成 148
     新中期防による島嶼部隊の増強 149
     中国脅威論を全面化した新防衛大綱 154
     2016年度防衛白書の対中政策 162
     アメリカの対中政策 165
    東アジアの軍拡競争の激化 168
    自衛隊主体の「東中国海戦争」 170
    米軍の辺野古新基地建設と自衛隊の共同使用 174
 第6章 「東中国海戦争」を煽る領域警備法案 178
     「領域警備」とは何か 178
     民主党・維新の会の領域警備法案 181
     政府の領域警備への対応 187
 第7章 国民保護法と住民避難 190
    「島嶼防衛研究」の住民避難 190
     石垣島・宮古島での住民避難 194
     先島諸島の「無防備都市(島)」宣言 202
[参考資料]
●資料1 我が国の領海及び内水で国際法上の無害通航に該当しな
     い航行を行う
     外国軍艦への対処について208
●資料2 離島等に対する武装集団による不法上陸等事案に対する
     政府の対処について 210
●資料3 領域等の警備に関する法律案(民主党・維新の会) 222
●資料4 防衛省文書「南西地域の防衛態勢の強化」について 223

[註]
・本文では「東シナ海」を国際水路機関発行の『大洋と海の境界(第3版)』の
 記述に基づき、「Eastern China Sea」=「東中国海」と表記した。
・奄美海峡、与那国水道という正式名はないが、便宜上、そのように表現した。
・表紙カバー写真は、富士総合火力演習(2016年)での「島嶼防衛戦」演習。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする